公益社団法人 日本伝熱学会 会員

園井 健二

当社 技術顧問...もっと見る 当社 技術顧問

あけましておめでとうございます。

新年の初詣に神社などを訪れた方も多いと思います。
当社の東京本社の初詣先は、千代田区にある「日枝神社」です。
初詣では、商売繁盛、家内安全、健康長寿、交通安全・・など参拝者それぞれが、今年一年の普遍的な希望を願います。
現実的には、願うだけではなく「自助努力」も必要です。

東京都千代田区「日枝神社」 2013年1月 筆者撮影

「うっかり」によるミスを防止

年末に糸魚川市で大火災があり、火災予防の重要さを認識させられました。

筆者は、そのニュースを見て他人事とは思えませんでした。

 

実は最近、台所のガスコンロで煮物を温め直していることを忘れ隣室にいる時、安全機器のセンサーによる警報に、「しまった!」と反省した経験があるからです。

 

サイレンの音と共に「ガスの元栓を止めて下さい」とのアナウンスもあり、設置以来、初めての警報に「どうした? ガス漏れか?」と戸惑いました。煙もうもうでしたが、煮物が焦げた程度でガスを止めることができ、しっかり働いてくれた安全機器に大感謝でした。

人間には、忘れるという長所と短所が有ります。嫌なことはさっさと忘れて、 ストレスを減らすべきですが、「うっかり」忘れていけないことも有ります。

確実な予防策は、「終わるまで、持ち場を離れないで見守る」方法です。 それでも二つ以上の掛け持ちでは、細かく見るとタイミングを外しています。 他の考え事をしていても同様です。

これらは、コンピュータでは並列処理に相当し、クロックを基に処理しています。

人間の脳の中にもクロック機能がありますが、一つに集中すると他は忘れ易くなります。また個人差の大きい能力で、年齢とともに衰えますから要注意です。 家庭で手軽にできる対策は、キッチンタイマーです。脳内のクロックに頼らず、できればタイマーを持ち歩くのがシンプルで確実です。

 

ところで、電気製品と同じような、タイマー付きガスコンロはないのでしょうか?

「うとうと」によるミスを防止

筆者は、作業員の方が行っていた「目視による選別作業」を 「画像処理による自動選別」に更新する仕事に携わってきました。

 

処理方法をプログラム化し、連続して自動選別するシステムです。 追加の学習能力はありませんから、最初に教えた通りに動作します。 但し、必要に応じ、判定基準は調整できます。 「実用化された人工知能」といっても良いレベルだと思います。

 

現在の人工知能と呼んでいるものは、「基本的な処理方法を様々な 場面に対応させ、そのデータを蓄積して、統計的に最適な処理方法を選ぶ」という学習機能を持ったものです。

 

旅行や日常の通勤・買い物などで、私たちは歩く以外の移動手段を利用しています。

自動車の運転は、視覚に頼って行っていますから、まず画像処理が重要な技術です。更に自動運転に必要な道路状況を理解する「人工知能」が注目され、開発競争が行われています。

さて、私たちが自動車で初めての道を運転するとき、大変気を遣いますが、同じ道でも、回を重ねる毎に楽々と運転できるようになります。実は「初めての道」を運転するように注意深いなら、疲れますが安全運転になります。

(後続車からクラクションを鳴らされるかもしれません。)逆に、「毎日の同じ道」をよそ見や考えごとをしながら運転すれば「万が一」のリスクは高まります。しかし、私たちは退屈を嫌いますし、気持ちを新たにすることもできます。 それでも、高速道路で運転する場合、単調さから瞬間的な居眠り運転をし易くなります。 道路設計では、カーブなど変化をつけていますが、夜間は、外の景色も単調となります。 人間の場合、個人差や時間帯、疲労状態で異なりますが、集中力が途切れず持続できる時間は 15 分程度のようです。

居眠り運転対策として「自動運転」が、交通事故の減少に果たす役割は大きいと思います。 特に、夜間に長距離運転されている運送トラック向けには、必須機能かも知れません。目的は、運転疲れや「うとうと」による交通事故の防止です。

 

しかし、「自動運転」は雪国に住む方には、あまり「ピン」と来ないのではないでしょうか? 冬場、頼りとする道路が雪で覆われ、道の両側のポールが頼りの場合も有りますし、 吹雪の時は視界も不良です。そんな中でも、時速 30km~40km で走行する車を見ると、大丈夫かな? と思ってしまいます。もちろん通い慣れた道ならではの芸当ですが。 しかし、突然の飛び出しや前方車の急停止などに対応できません、また追突されるのを防止するため、ブレーキを小まめに踏んで後方車に合図を送る気配りも必要です。

これらのことまで人工知能に判断させることは不可能ですし、サーバーから無線で情報伝達するにも、降雪で電波が届かないこともあり得ます。

「除雪された新潟市内の雪道を走る自動車」 2016年1月 筆者撮影

自動化されるものは無償化

太陽の周りを公転する地球の自転を知識として分かっても、新年は、目出度いことです。但し、私たちに温かい陽射しを注いでくれる太陽に対し、誰も支払っていないのです。気温を保ち、植物が育ち、太陽光発電なども、元の太陽のエネルギーに対して無償です。

 

人工知能が浸透してくる社会では、必要でも自動化される仕事の費用は下がり(無償化)、例外や異常事態を想定して対応する非定型の仕事の価値が上がるのは必然なのです。

 

過去に囚われず、毎日の生活を見直して、自動化できる部分とできない部分を見分け、その各々に磨きをかけ進化させていくことが、人間の作った機械や人工知能を超えた人間らしい習慣だと思います。

参考文献

  1. 「人類なら知っておきたい「人工知能」の今と未来の話」(PHP研究所 2016年7月)

監修

大阪工業大学教授

本田幸夫

 

著者

開発社