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ホーム > WEBマガジン SHINKAWA Times > コラム > 杉田 美保子 > スペインのゆとり、日本のゆとり 「スペインの世界遺産『巡礼の道』」 No.3
掲載日:2016年07月05日

スペインのゆとり、日本のゆとり
スペインの世界遺産「巡礼の道」No.3

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歩き始めてしばらくすると、朝日が昇る。悪い足元を照らす懐中電灯も必要になる

 

 

 

 

スペイン語通訳・翻訳

インターネットラジオ「El Extrarradio」で
日本文化紹介の番組担当
杉田 美保子
プロフィールはこちら

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Zubiri - Trinidad de Arre

前回は、巡礼の旅の中で一番お粗末なんじゃないか、というスビリ村(Zubiri)の公立宿泊施設に着き、昼食、シャワー、洗濯で一息つき、そこで大きな洗濯石鹸を持った親子と友達になりました。

今回は、パンプローナ(Pamplona)に向けて出発です。

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疲れて歩く道中で、こんなメッセージと出会う。

こちらもにっこりとなり、疲れも吹き飛ぶ

「朝 6 時から 8 時の間に出発してください」という決まりがあるアルベルゲ(宿泊施設)が多いのですが、そうなると、必ず早起きの人が出てきます。私たちが 1 日で歩く距離を 17〜23km と決めたのは、夏の暑さと体力的なもの、そしてスポーツではない、あくまでもスピリチュアルな巡礼にしたい、そして可能な限り途中の村々の観光をしたい、という理由なのですが、外国からはるばる巡礼のために渡西してくる人の中には、短期間で 800km を歩きたい、ということで、1 日 30〜40km を目標にする人たちもいます。朝の涼しい頃にピッチを上げたいとなると、おのずと起床時間も繰り上がるので、早朝 5 時半、まだ暗い中でパッキングをして出て行く人がいます。

「かさかさごそごそ」というビニール袋の音、リュックを移動する音などで目がさめるのです。私たち一行も、前日の経験から得た教訓で、この日は朝 6 時半には出発することになりました。

バルセロナ(Barcelona)からパンプローナまで 長距離バスで移動したので、その時すでに街の様子は「チラ見」したのですが、この頃はちょうどスペインの 3 大祭りの一つである「サン・フェルミン祭」別名「牛追い祭り」の真っ最中だったのです。7 月 6 日の「チュピナッソ(祭り開催のロケット花火)」に始まり、最終日 14 日まで、シンボルカラーの赤と白で町中が埋め尽くされ、お祭り騒ぎが一週間以上も続くのです。実際に牛を追うのは、朝 8 時から約 3 分間なのですが、牛の移動やジャイアント人形のパレード、伝統スポーツ競技会の開催など、町の行事は盛りだくさん。これが巡礼でなければ、じっくりお祭りを楽しむところなのに…、とは、私たちみんなの気持ち。

 

この期間パンプローナの巡礼者用宿泊施設はすべて閉鎖となります。今回の行程では、パンプローナの町を通り抜け次の村に一日で行くには、距離が長すぎるということで、パンプローナの一つ手前の村に宿を取ることにしました。Vilaba 村に到着し、尋ねると、この村の施設はすでに満室。「予約はありますか?」と聞かれ、「巡礼者は予約なんてしないんだ〜」と憤慨しながらも元来た道を 500m 戻り、隣接の村 Trinidad de Arre の巡礼者施設に宿を取ることになりました。この中庭が涼しく、20km の行程を終わった疲れた足に優しい芝生でストレッチ、そしてお待ちかねの昼食です。

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「パチャラン」という食後酒を飲む。25-30 度のアルコール度数。

スピノサスモモのリキュール

さて、だいたい徒歩の人たちは同じペースで歩くので、この Trinidad de Arre の村でも、前日の巨大固形洗濯石鹸親子と同じレストランにて昼食をとることになりました。あまり他人の様子に興味のない筆者ですが、よくよく観察すると、息子は日焼けし、お母さんは元気で、お父さんは杖をついて歩いている様子。巡礼の旅を車椅子で行く人、視覚障害の人、犬を連れている巡礼者、なんでもありなのですが、お父さんは妙に小綺麗だし、お母さんはあまり疲れた様子がない。不思議に思い、食後酒の酔いの勢いで、失礼を承知に聞いてみると、「主人は長距離を歩けないので、車で移動しているのよ。私の荷物は主人の車で次の村まで届けてもらうので、持つのは水筒だけよ。息子は若いので、

ちゃんと自分の荷物はリュックに背負っているわ」と。これで巨大固形洗濯石鹸の謎が解けました! お母さんの荷物は、お父さんが車で移動させていたのですね。だから、お母さんはハイキングのごとく、財布と水筒のみでルンルン歩けるんですね。6-7kg の荷物を肩に歩くのとは、体力の消耗が違いますね。で、これでも「巡礼だ」と言っちゃう人のゆとり。そして、それを見ても「あ、ずるい」と感じない人のゆとり。「あと数日歩くと、私たちの街に着くの。その時にはうちに泊まっていってね」とのお誘いを受けました。「巡礼スタンプだけ宿泊所にもらいに行けば良いんだから」と。「いえいえ、私たちは巡礼宿泊所に泊まるので、大丈夫ですよ」と答えましたが、どうなることでしょうか…。

このように、巡礼には数々のスタイルがありますが、基本的に「徒歩」、「自転車」、「馬」で行うことになります。自転車で巡礼をしている人は、徒歩での最後の巡礼者が宿に着くであろう夕方まで、宿泊施設に宿を取ることができず、夕方になって空きベッドがあれば泊まることができ、満室になった場合は自転車で次の村まで宿探しに行かなければならないというルールがあります。また、体力に自信がない、体調不良の場合などは、地域のタクシー会社などが行っている「リュック配送サービス」を利用すれば、到着予定の村の宿泊施設まで荷物を運んでもらえるので、助かります。みんながみんな体力自慢ではなく、暑さで参っちゃう人、靴が合わなくて泣いちゃう人、巡礼にはハプニングがつきものなのです。

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町の中心部にある牛追いの像の周りでは、写真撮影が続く

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走れるように、足元はスニーカー

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首に巻くスカーフ。 各町内会、グループによって、

デザインもロゴも違うが、一律「赤」となっている

洗濯、シャワー、休憩のあと、バスでパンプローナの街へ。街に降り立つと、町中白と赤の服装の人たちばかり! 偶然にも赤と白のギンガムチェックのボトムを持参していたので、白い T シャツと組み合わせれば、すっかりパンプローナの街に溶け込んでしまいました。ビーチサンダルの私たちに比べ、現地のお祭り参加者たちはスニーカーで、バケツに近い大きなコップに入ったビールを手に、大騒ぎ。ノリにノリまくった参加者たちの酔っ払った様子が、楽しくもあり、ちょっと怖くもあり。そのお祭りの参加者が首に巻くのが赤い三角のスカーフ。それぞれのグループごとに刺繍やロゴが入っていて、見ていて楽しいもの。

諸説によると、キリスト教で殉死した聖職者を聖人として名誉を讃える場合には、司祭は赤を着る、ということで、この聖人フェルミンも殉死したからとのこと。また、お祭りが始まるまでは、手首やポケットにしまわれている赤い三角のスカーフですが、「聖フェルミン、万歳」という合図で、首や頭につけられるのが習わしとのこと。

なにしろ、スペインの人たちは、お酒に強い! 一般的な日本人より体格が良いからなのか、それともアルコールを消化する酵素がたくさんあるのか、なにしろ、お酒に強い! 昼食にワイン、夕方にビール、夕食にもワイン、それに食後酒。これで体を悪くしないのかな、と思えば、日本に次ぐ平均寿命の高い国なのです。

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さまざまなピンチョスがカウンターに並び、

一つずつ注文しても、全部を食べきれない

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まだ夕方の町。朝は牛が走る道を、

午後は酔っ払った人々が千鳥足

ということで、昼食の食後酒からサンフェルミン祭りでのつまみ食い、スペイン北部で特に有名な「ピンチョス(Pinchos)」とワインの飲み歩きで夕食を済まし、「あと一杯」というところで後ろ髪を引かれながら、門限 21 時半の宿舎に戻ったのでした。

では、次回は、まだまだ祭りで賑わう泥酔状態のパンプローナの町をどのように通り抜け、巡礼の旅を続けていったか、を続けますね。だんだん疲れが溜まり始めるわけで、またまたハプニングが起こります。では、来月もまたお付き合いいただければ、と思います。

 

¡Hasta luego! (アスタ・ルエゴ、「またね。さよなら」の意)

【プロフィール】

杉田 美保子

スペイン・バルセロナでの滞在27年を経て、2015年に実家のある金沢市に移住。日本三名園の一つ、兼六園で観光ガイドをするかたわら、地域の方々にスペインの魅力を語り、「故郷」バルセロナとのつながりも大切に、翻訳通訳だけでなく、ステレオタイプに縛られない、多方面での活動を模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験DELEのC1(上級)所持。

コラムに関するご意見、お問い合わせ:sectimes@shinkawa.co.jp