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ホーム > WEBマガジン SHINKAWA Times > コラム > 杉田 美保子 > スペインの知られざる文化 No.3
掲載日:2017年01月11日

スペインの知られざる文化 No.3

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スペイン語通訳・翻訳

インターネットラジオ「El Extrarradio」で
日本文化紹介の番組担当
杉田 美保子
プロフィールはこちら

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箱の底に顔が描かれた、Cajacaras と呼ばれるシリーズ

 

 

おうちのサロンにいるようなバル

スペイン各地の町には、必ず市場があり、その市場を中心に様々な商店が軒を連ねていきます。特にバルセロナは、ヨーロッパでもユニークな「市場ネットワーク」が存在し、なんと 39 の生鮮市場が各地区に存在します。そんな市場の周りには、市場の中に無いようなお店、ワイン専門店であったり、おもちゃ屋さん、家電屋さん、雑貨屋さん、薬屋さんなどなどが集まり、アーケードこそないものの、一つの商店街となります。

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バル内部からは修復された市場が見える

実際に市場の建物の外側をぐるりと出店が作り付けられている形状もあり、火曜日から土曜日は特に、市場の周りは賑わいます。39 の市場、それぞれがそれぞれの特徴を持つので、全部の市場を回るだけでも、かなりの時間が必要となりますね。実際にバルセロナに住んでいても、利用したことのない市場の方が多いのが現実です。とはいえ、町の中心のボケリア市場(サン・ジュゼップ市場)は、観光名所だけではなく、バルセロナ市民も買い出しに行く、町で一番重要な市場なので、テレビなどでご覧になったこともあると思います。

 

多くの市民は、居住地近くの市場にカートを引いて(押す形もあり)買い物に行き、市場では買えないようなものはその周辺の商店に行ったり、という感じのショッピングをします。

もちろん、平日のお仕事のシフトの関係で、土曜日に郊外のショッピングセンターへ行き大型スーパーで買い物をする人もいます。さて、そんな買い物客がほぼ全員利用するサービスとは、一体なんでしょう? 「カフェテリアやバル」です。

筆者の住んでいたサンツ地区の中にある「Mercat Nou(新しい市場)地区」は、地下鉄にもかかわらず、地上に地下鉄が通っている数少ない地区で、その騒音を軽減するために地下鉄駅を新しくし、周辺の騒音軽減のための工事が続いていたのです。そのため、2007 年からほぼ 10 年という歳月の間、地下鉄周辺に工事が続 いていました。そして、この地下鉄の駅のそばにある市場も、数年の工事のため、仮の市場が近所に出来上がり、その市場に慣れた頃に工事終了、めでたく新しい市場がリニューアルの運びとなったのです。

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資材置き場だった地下鉄線路脇が遊歩道になった。

50 年来の計画がついに実現

地下を掘り下げ、駐車場と冷蔵庫室を設置、天井や壁の修復、また周辺道路の整備などが終わると、市場周辺には次々と新しいお店ができてきます。

その整備の大工事の真っ只中、2012 年の終わりに出来たのが Pickwick という名前のバルで、朝食、昼食、おつまみ、夕食、コーヒー、ドリンクなどなど、お好みのものを、お好みの時間にいただくことのできる、まあ、スペインでは普通のバルのサービスです。

ただ、特に Vermut(日本語ではベルモットと言うそうです)をする、つまり、「食前酒」を楽しもう、という Vermutería という呼び方の方がいいかもしれませんね。近所にはパン屋さんがカフェテリアのサービスを行っていたり、古くからの定食屋さんがあったりと、競合には事欠かないのですが、このお店はちょっと目を引きます。

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歩道には、市に税金を払えばテラス席を設置することができる。

気軽に休憩ができるのが嬉しい

まずは、入り口のデコレーション。ショーウィンドウには季節ごとに飾りが変わり、お店が閉まっている間も通行人の目を楽しませてくれます。次が、店内の壁。壁には本棚があったり、植物が飾ってあったり、まるで自分の家のサロンにいるかのような感覚に陥ってしまいます。テーブルも椅子も、ベンチ式であったり、ソファのようであったり。そして最後が、このバルのほとんどを占める絵画やオブジェです。

 

買い物に疲れた後や、近所に住む友達とのおしゃべり、そしてちょっと軽く飲みたいけれど、遠くには行きたくない時、などなど、Pickwick は気軽に入れるバルですが、オーナーはシャイな人で、あまり多くを語ってくれませんでした。「このお店の奥に飾ってあるのは、どんなアーティストの作品? シリーズ物みたいけれど」と聞くと、「実は~、描いたのは僕なんだ」とのこと。それ以外は教えてもらえなかった、ミステリアスなダニエルさん。筆者が注目したのは、数々の段ボール箱の中に描かれた顔。Caja(カハ)が箱で、Cara(カラ)が顔。くっつけて複数形にしたので、Cajacaras(カハカラス)というネーミングになったとのこと。冒頭の写真がこれです。

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店の奥の壁も、無駄なくギャラリーに。

Caracajas が並ぶ

ダリ、ピカソ、ミロ、タピエス、などなど、スペインの輩出したアーティストは枚挙にいとまがありませんが、何しろ街全体が「アート」をしているのが、バルに一軒入っただけでもよくわかります。今日は筆者の住んでいた、バルセロナでも外れにある地区のバルを一軒ご紹介しましたが、こんなアートバルが町の至るところに見つかるのです。「飲みに行くぞ」と気合を入れなくても飲めるバル。自分の家のサロンにいるような、そんなくつろげる空間。

このコラムを読んでいただいているみなさんのおうちの近所には、こんな空間ってありますか? 実は、筆者の現在の家は住宅街にあり、昔のようにふらりと飲みにいけるような場所がなくなったのが残念です。仕事の後に、アート作品に囲まれて引っ掛けた、あの一杯(二杯になったときももちろんあり!)のグラスワインが、次の日のエネルギーになっていた頃がちょっぴり懐かしい今日この頃です。

 

 

Pickwick Barの住所

c/ Sant Jordi, 3

08028 Barcelona

地下鉄 L1 Mercat Nou または L5 Plaça de Sants

https://www.facebook.com/PickwickBar/

 

 

¡Nos vemos!

(ノス・ベモス、「また会いましょう!」の意)

【プロフィール】

杉田 美保子

スペイン・バルセロナでの滞在27年を経て、2015 年に実家のある金沢市に移住。日本三名園の一つ、兼六園で観光ガイドをするかたわら、地域の方々にスペインの魅力を語り、「故郷」バルセロナとのつながりも大切に、翻訳通訳だけでなく、ステレオタイプに縛られない、多方面での活動を模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

コラムに関するご意見、お問い合わせ:sectimes@shinkawa.co.jp