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ホーム > WEBマガジン SHINKAWA Times > コラム > 杉田 美保子 > スペインの知られざる文化 No.4
掲載日:2017年02月07日

スペインの知られざる文化 No.4

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スペイン語通訳・翻訳

インターネットラジオ「El Extrarradio」で
日本文化紹介の番組担当
杉田 美保子
プロフィールはこちら

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Valls の町は、煙に包まれる。あちこちで焼かれるのはネギ

 

 

冬のグルメ、冬の風物詩

 ネギが美味しい季節です。日本ではすき焼きや鍋には欠かせない食材ですね。スペインも、日本に負けず、ネギが消費される季節になりました。「ネギ焼き」と訳したら、友人が「スペインでネギ焼き? 全然イメージわかないんだけど~」と言われてしまいました。「2 月のコラムをお楽しみに」と言うことで、今回は、まだ日本ではあまり知られていないスペインの食文化の一つをご紹介していきます。

 バルセロナが州都であるカタルーニャ州では、カタラン語とスペイン語が使われます。

Calçots(カルソッツ)はカタラン語で、このネギ焼き用の長ネギの名前を表し、Calçotades(カルソターダス)が「ネギ焼きパーティー」の意味です。

毎年必ず一回は楽しむ冬の風物詩で、公式には 1 月最後の日曜日に始まり、3 月末になりネギがあまり出回らなくなるまで続く、季節感たっぷりな行事です。カタルーニャ州は 4 つの県によって成り立っていて、日本同様それぞれの県にお国自慢の料理が存在します。みなさんがご存知の Paella(パエリア)は、現在はスペイン各地で食べることができる一品ですが、その発祥はバレンシア県と言うことです。そしてこのネギ焼きの起源は、タラゴナ県だと言われています。

 

 筆者がここ数年、この Valls のお祭りに行くことになったのは、タラゴナ県レウス市出身のライアさんと、その家族との親睦が深かったことがきっかけです。毎年クリスマスにはライアさんの実家にお邪魔し、たくさんの美味しいクリスマス料理に舌鼓を打つのですが、その際に話に出たのが、この「Valls でのネギ焼きパーティーに行こう」、だったので、それから毎年行くことになっ たのです。

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カルソッツネギの品評会。自慢のネギが出品される

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ネギが焼き終わると、腸詰、肉、パンなどが焼かれる。

ネギは前菜扱い

 Valls(ヴァイス)という町が賑わうのは、1 月最後の日曜日。当日、特設駐車場となっている郊外の畑や道路脇には車が続々到着し、たくさんの人が、煙の立ち込める町の中心へと歩みを早めます。この日がカルソターダス解禁の日だと主張されており、また町はカルソッツネギの品評会、カルソッツネギに付けて食べるロメスコソースのコンクール、大食い競争などが行われます。そして町の公民館や施設、レストラン、街角では、煙がモウモウと立ち上り、ネギや肉、ブティファラという腸詰ソーセージが次々と焼かれていきます。

 

 実際に食べる、ネギの白い部分が長くなるように、盛られた土の中で栽培されるのだそうで、甘みがあるのが特徴です。土が払われたネギの、根っこの部分は切り取られ、網の上に並べられ、枯れた木々に火を点け、火の勢いが強いうちに、ネギが真っ黒になるくらいに焼きます。1 人分が大体 12 本で計算されて、焼いた後に蒸した状態を保つため、そして熱を逃さないように、古新聞に包まれます。

 ライアさんの家族は毎年ネギ焼き解禁日に Valls に来るということで、すでに料金は前払いでチケット購入済み。Valls の町では、様々な形式でネギ焼きを楽しむのですが、必ずセットとなるのが、「ネギ焼き 1 束(12 本ほど)」「肉と腸詰の網焼き」「アーモンドベースのロメスコソース 1 つ」「パン」「ワイン」「オレンジ」そして「前掛け」です。ネギ、肉、ワイン以外が入ったピクニックパックのビニール袋をチケットと交換で受け取り、会場である体育館に入り、テーブルを決め、パーティーの準備となります。座ると係りの人が人数を聞きに来て、飲み物は何がいいか、ワインなら赤がいいのか、白がいいのかを聞き、新聞紙に包まれたネギ焼きを人数分運んで来ます。

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町のメイン広場でネギ大食い競争

 飲み物が注がれ、乾杯をし、やわら取り出すのが前掛け。これを付けないと、とんでも無いことに。新聞紙の包みを開けると、丸焦げになり、しんなりした、湯気の上がったカルソッツネギが登場。まず、緑の部分を右手で掴み、左手で白い部分の一番下の端を指でつまみます。それを、指に少し力を入れ、ネギの一番外側の皮だけを下にひっぱり、つるりと剥きます。

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お友達と筆者

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ライアさんとご家族。

老いも若きも前掛けをつけ、手は真っ黒。あーん、と食べる

食べるのは、緑の部分から下の、今まさに剥かれた白い部分です。辛くはないか、苦くはないか、最初に食べた時にはドキドキしたものですが、長年の経験というのはすごいもの。金沢にいながら、カニは上手に剥けませんが、カルソッツネギを食べるのは上手くなりました。ただ、どんなにレシピを見て作っても、ロメスコソースだけは上達せず、これはもっぱら地元の友達にお任せとなります。何を隠そう、このコラムのスペイン語版の校正をしてくれているカルロタさんも、ソースの達人です。いつかレシピを聞きたいものです。

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テキスト校正担当のカルロタさんの手製のソース。

筆者には真似できない

 剥いた皮は捨てる部分。空いた左手でロメスコソースを近付け、だらりと垂れたネギの白い部分にソースを付け、そのまま右腕を上に上げ、顔は後ろに反らし、口を「あーん」と開け、噛み付くわけです。白い部分を食べきるまでに、二、三度ソースの後付けをするので、ソースの器は一人一つ、ということなのです。

 一本が終わると、次のネギに。ワインを飲み、パンも食べ、そこにおしゃべりも入れば、小噺を話す人も出て来たり、と盛り上がります。手は、どんなに紙ナプキンで拭っても、真っ黒なまま。ワイルドです。そこに、人数分のお肉類が運ばれて来ます。ピクニックのようで、お皿は紙だったりするのですが、お肉は切らなければならないサイズなため、プラスティックのナイフとフォークでは太刀打ちできない、ということも起こります。そうすると噛み付く。大人も子どもも、おじいちゃんもおばあちゃんも、みんながガヤガヤと、頭を後ろに反らし、顔を天井に向け、「あーん」とネギを食べる光景は圧巻です。ネギの太さ、調理時間によって、噛み切り易いもの、筋が硬いもの、様々で、胃腸の弱い方は夕飯も食べられないほどお腹が一杯になります。

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人数分のお肉が届く。ピクニック用の食器では切れない

 ライアさんのお母さんとおばあちゃんは「もう食べられないわ」とギブアップ。「分かったわ。こっちにちょうだいー」とネギ焼きがテーブル移動。「あら、美保子、顔に炭が付いてるよ」「えー?」と触るとますます炭が広がり、みんなが爆笑、という和やかな時間が過ぎていくのです。

 さて、問題は、食べ終わった後。どんなにゴシゴシやっても、爪や指、手の平、顔に着いた炭は、なかなか落ちないのです。これで、なぜ前掛けが必要か、お分かりですね? トイレには列ができ、みんなが石鹸でゴシゴシ。最近ではウェットティッシュなる便利なものがあるとはいえ、この炭はなかなか落ちないのです。

 

新聞紙の包みを開けると、ネギが出現する

 お腹が一杯になり、この昼食が終わると、もう夕方近く。スペインの食事時間は他国と比べ時差があり、日曜日なんかは 15 時から昼食、というのは至って普通。ただ、Valls は内陸の町、夕食後の 17 時には気温が下がり始めます。コートの襟を立て、食べたものを消化しなきゃ、とばかりにそぞろ歩き。一回り散歩が終わると、「じゃ、温かいものでも飲みましょう」となる。あんなに食べた後なのに…。チョコラテ・カリエンテ(Chocolate caliente、トロリとしたホットチョコレート飲料)を頼みます。これも冬の風物詩。万国共通、冬は厚着に、そして温かい飲み物で暖を取るのですね。

 

 こうやって、1 月最後の日曜日がゆったりと過ぎ、夕方 20 時ごろにはお開きです。そろそろお昼に頂いたワインのアルコールも抜け、帰路に着く準備は整いました。「じゃあ、また来年ね」との約束をして別れるのです。

 

 今日はこの辺で。いつの日かこの季節にスペインに遊びに行くことを夢見て。コラムを読んでいらっしゃる方も、ぜひこの時期にカタルーニャ旅行をすることをお勧めします。Valls まで行かなくても、いろんな町のレストランでも食べることができますから。

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友達とのパーティー。手間がかかるが、用意するのも友好関係を円滑にする

 

 

¡Hasta la próxima!

(アスタ・ラ・プロキシマ、「ではまた次回に」という意)

【プロフィール】

杉田 美保子

スペイン・バルセロナでの滞在27年を経て、2015 年に実家のある金沢市に移住。日本三名園の一つ、兼六園で観光ガイドをするかたわら、地域の方々にスペインの魅力を語り、「故郷」バルセロナとのつながりも大切に、翻訳通訳だけでなく、ステレオタイプに縛られない、多方面での活動を模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

コラムに関するご意見、お問い合わせ:sectimes@shinkawa.co.jp