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ホーム > WEBマガジン SHINKAWA Times > コラム > 杉田 美保子 > スペインの知られざる文化 No.7
掲載日:2017年05月10日

スペインの知られざる文化 No.7

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スペイン語通訳・翻訳

インターネットラジオ「El Extrarradio」で
日本文化紹介の番組担当
杉田 美保子
プロフィールはこちら

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町のいたるところに並ぶスタンドでは、バラと本が主役のサン・ジョルディの日

 

 

バラと本。情熱と英知のお祭り

 「サン・ジョルディの日 (Diada de Sant Jordi)」というのが、今日ご紹介するお祭りです。2017 年のサン・ジョルディの日(4 月 23 日)は日曜日と重なったので、例年よりも「祝日感」満載となりました。スペイン語では「サン・ホルヘ」、英語では「サン・ジョージ」または「サン・ゲオルギオス」と言うそうで、この聖人が竜を退治したと言う伝説に基づき、ドラゴンが悪者として登場します。ユネスコが 1995 年に 4 月 23 日を「世界図書・著作権デー」に制定したため、この日は町中で本の販売と、さまざな書籍の著者たちによるサイン会が数々行われるようになりました。

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サイン会が行われるテント

 「サン・ジョルディ」のお祝いが最も盛んなのは、スペインではカタルーニャ地方ですが、それ以外にアラゴン州やカセレス市、またスペイン以外では英国、カナダなどでも行われます。今回は、4 月 23 日に現地で取材ができたので、最新の画像をお届けできます。スペインはカタルーニャ州の祝日の様子が無事届くでしょうか?

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ドラゴンがマスコットとして登場する

 このお祭りには、色々と起源があるのですが、現在は男性が女性にバラの花を、女性が男性に書籍をプレゼントする、という習慣が続いています。バラは情熱を、書籍は文化を表現しているということで、この日は町のいたるところに本とバラを売るスタンドが立ち並び、老いも若きも本を売ったり買ったり、バラを売ったり買ったり、という状態になります。この祝日、実は祝日であるにもかかわらず、休日にならない祝日なのです。ですので、もし火曜日、木曜日などの平日にかかれば、わざわざお休みをとって町を散歩する人や、昼休みや出勤前、出勤後の空き時間を使って町を歩き回る人でごった返します。今年は久々に日曜日に当たり、気持ちに余裕が出るのか、のんびりとした一日が始まりました。

 

 バラの花を女性に贈るという習慣は、なんと15世紀からあったそうです。ある説によると、バルセロナにはバラ市場があったそうで、その日の公式ミサに出ると、バラの花がもらえた、という話もあります。

17 世紀にも同様の記述があり、かなり昔からの習慣だということです。現在のバラの花には飾りとして、カタルーニャの州旗と、肥沃を表す麦の穂が添えられ、夫婦や恋人同士だけでなく、友人、同僚、家族間で贈り合いをするのが慣習となっています。

 サン・ジョルディの日の数日前から、ドラゴン、バラ、サン・ジョルディ、本、という言葉があちこちで聞かれ、この日に因んで詩やポエムのコンクールが行われたり、文学賞の受賞式が行われたり、詩の朗読のリサイタルが行われたり、と、文化活動が盛んになります。筆者も 4 月 20 日に、古巣である「Teatrí de Butxaca (ポケット劇場)」という地元 FM ラジオ(107.7FM、ラジオ・グラシア)番組に参加し、色々なお話を聞かせてもらいました。ショートショートで話を作り、朗読するスサナさんの本職は、お花屋さんで、この日も「サンジョルディの日のバラの花」について教えてくれました。スペイン国内のバラの生産だけでは足りないので、コロンビア、エクアドールといった国からの輸入を余儀なくされているほど、4 月 23 日にはバラが飛び交います。スサナさんの花屋にも、21 日金曜日には卸売業者からバラが運ばれてきました。「サン・ジョルディの日が毎月あれば助かるのに」というのが、花屋さんと本屋さんの本音でしょうね。「どうだった、売り上げ?」と聞けば、「今年はお天気も良くて、たくさんの人がお店の前を通って行ったわ。例年以上の売り上げで、大助かりよ」とのこと。筆者が取材したのはバルセロナの中心部で、牛歩という表現が最適な混雑でしたが、スサナのお店は中心部から離れた山手なので、お客さんが来てくれるかどうか、というのが心配の種だったのです。その後連絡が入り、町中の混雑を避けた人々がのんびり自宅近くの花屋さんや本屋さんでショッピングを楽しんだため、大変たくさんの方がバラを買いに来てくれた、というのが今年の彼女のサン・ジョルディだったようです。

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お母さんにはバラをゲット。そしてお父さんの本を選ぶのかな?

 この日筆者は朝から活動。この日のためにトレッキングシューズで旅行に挑んだのですが、大正解でした。宿泊先から友人宅へ、「バラはいかが? クッキーはいかが?」という声をかけられながら、約 20 分の徒歩移動。友人宅での朝食の後、13 時に別の友人たちと待ち合わせた地点まで、普通なら 30 分もかからない距離なので、「じゃ、12時に出て、のんびり散歩しましょう」と出かけたものの、町の中心の道「パセオ・デ・グラシア通り」と「ランブラ・カタルーニャ通り」に近づくと、どこから湧いて来たのか、たくさんの人が歩いているのが見えて来ました。歩道、車道、遊歩道、車道、歩道となっているメインストリートは、人々の頭、頭、頭で地面が見えない状況です。

遊歩道の両端に並んでいる本屋さんの出店を覗きながらそぞろ歩きをしようと街に出て来た人々でごった返し、歩くのがやっと。「こんなとこに首をつっこむのは、自殺行為だ」「窒息しちゃう」などなど、いろんな声が聞こえて来ました。でも、列を作ってそぞろ歩きをするのはスペイン人の得意技。右足を進め、右足が着地していても左足はまだ地面についていて、そろそろと左足を上げて前に進める、という究極の技を持っているのがスペイン人なのです。これは、30 年前にマドリードの旧市街に出かけた時に感じたことと、全く変わっていません。

 13 時の待ち合わせに数分遅れ、汗をかきかき、人の波をかき分けて到着したのですが、そこから再び来た道を戻り、カタルーニャ広場に向かうことになりました。このパセオ・デ・グラシア通りには、ガウディの作った家があるのですが、ご覧のように造花のバラの花で見事な演出が施され、建物の前は自撮りをしようという人々が立ち止まり、特に渋滞のひどい場所です。ただ、みんなが立ち止まりたくなるような豪華なデコレーションに、筆者も足を止めてしまうことになりました。

 

 そのまま町の中心カタルーニャ広場に向かって歩いたのですが、本のスタンドには近づける状況てはなく、有名な作家がサイン会をしていても、その列はとても長く、何しろ人、人、人の波です。なんでも、この日は花屋さんが 600 万本のバラが売れるだろう、と予測し、町中では 300 人以上の作家がサイン会を開いた、というのです。映像がモノを言う時代、今月は、ぜひその町の様子を画像にてお楽しみください。

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ガウディの建築物、

Casa Batlló(カサ・バッリョ)がバラで装飾された

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ショーウィンドウを覗くのが楽しみ。

チョッビリ甘めだが美味しいケーキがたくさん

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街には舞台が作られ、

いろんな人が自分の好きな詩などを朗読する

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 バラと本の他には、町中にあるパン屋さん、ケーキ屋さんがサンジョルディに因んだパンやお菓子をウィンドウに並べます。ドラゴンを退治した聖人ジョルディの剣であったり、ドラゴンであったり、バラの花、本、モチーフには事欠きません。スペインの人々の名前はほとんどがキリスト教の聖人の名前です。ですので、聖人ジョルディ(サン・ジョルディ=Sant Jordi)の日には、ジョルディという名前の人々がお祝いされます。そのためのケーキであり、また日曜日ということもあり家族での昼食のためのデザートでもあります。

 

 その他には、ジョルディに退治されたドラゴンをモチーフとしたオブジェの販売も行われます。街角には、それはそれは様々な出店が出るのですが、こちらは市役所に届出をすれば誰でも出せます。そこで、通りに面した商店以外に、修学旅行の費用を募る高校生たちのグループや社会貢献のための寄付を募るグループも軒を連ねます。今回、コラムを読んでくださっている方々へのプレゼントとして、バラの花は持って来れないのはわかっていたのですが、その代わり、知的障害支援グループの販売していた栞を持って来ました。少しでも社会貢献になれば良いと思います。

 かなり駆け足のリポートですが、町の様子が伝わったでしょうか? 旅行に行き、その土地のお祭りに遭遇するのは、本当に嬉しいものですよね。スペインには日本同様、様々なお祭りがあります。みなさんにもぜひ一度、こういう賑わった街を楽しんでいただきたいと思います。

 

¡Os deseo mucha suerte!

(あなたがたに大きな幸運がありますように! の意味)

【プロフィール】

杉田 美保子

スペイン・バルセロナでの滞在27年を経て、2015 年に実家のある金沢市に移住。日本三名園の一つ、兼六園で観光ガイドをするかたわら、地域の方々にスペインの魅力を語り、「故郷」バルセロナとのつながりも大切に、翻訳通訳だけでなく、ステレオタイプに縛られない、多方面での活動を模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

コラムに関するご意見、お問い合わせ:sectimes@shinkawa.co.jp