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ホーム > WEBマガジン SHINKAWA Times > コラム > 杉田 美保子 > スペインの知られざる文化 No.15
掲載日:2018年07月03日

スペインの知られざる文化 No.15

 

 

 

スペイン語通訳・翻訳

インターネットラジオ「El Extrarradio」で
日本文化紹介の番組担当
杉田 美保子
プロフィールはこちら

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ちょっと違う、冠婚葬祭事情

金沢は 7 月にお盆となり、お墓の前には「キリコ」というものがぶら下げられます。箱キリコと言われるものは、木でお家の形を作り、屋根があり、白い紙を貼った 4 面の正面には「南無妙法蓮華経」もしくは「南無阿弥陀仏」と宗派により違った題目、念仏が書かれています。内部には釘が一本取り付けてあり、ろうそくが一本取り付けられるようになっていて、屋根の部分には細い針金がついているので、つり下げることができるのです。スーパーやホームセンターにも並ぶので、それを持参でお墓参りという方もいらっしゃれば、前もってお寺さんにお願いし名前を入れてもらい、お墓参りの当日受け取る方もいらっしゃいます。

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全国的には珍しいらしいが金沢では昔からあるキリコ、側面に名前が書かれる

さて、石川県の人口は 110 万を超えます。そして金沢市の人口が 46 万 5 千人ほど。ほぼ県内人口の半分近くが金沢に集中していることになります。そして、お盆ですが、金沢市内中心部以外は 8 月がお盆となり、そこでまたお墓参りとなるのです。金沢市に住んでいるから、金沢市内にお墓がある、とは限らず、市内に住んでいてもお墓が市外にある場合は、日本の一般的なお盆休み、8 月中旬にお墓参りです。

そして、7 月同様、8 月も 16 日には送り火としてお墓に吊られたキリコに火が灯され、お寺の上人さまがお経をあげてくださるわけです。

 

7 月になると、お墓の前には棒が立てられ、その棒にロープが張られていきます。お参りの人が集中するのは 13~15 日なのですが、県外の人、お休みが取れない人はその前の週末にみえるので、みなさんキリコを吊るして帰られます。最近は板状の「板キリコ」も見かけます。何れにしてもキリコには献灯された人のお名前が入るので、誰がお墓参りに来たかは一目瞭然。懐かしい名前を見かけ、元気なんだな、と安心する。そんな役目も果たしているのでしょうか?

 

そんな夏の日本のお盆も近くなり、では、キリスト教のスペインはどうなんだろう、いつお墓参りするんだろう、と気になりませんか?  今日はスペインの葬祭についてお話ししましょう。

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送り火の日、キリコの中にはろうそくが立てられ、

一本一本に火がつけられる

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キリコは数が多いので、火を入れるのはまだ明るい

うちから。ろうそくの燃焼時間との競争

日本とは季節が変わり、スペインのお盆は秋です。宗教が関連しているとはいえ、日本同様地域性があり、10 月 31 日、11 月 1 日、11 月 2 日の間に行われます。11 月 1 日が「(諸聖人の日)すべての聖人の日」に当たり、その前後に家族での行事があります。

 

お墓まいりに行くのもこの時期です。スペインのお墓事情はほとんどが土葬ですが、都市部のお墓は土地の不足などがあり、アパート形式になっているものが多く、最近では火葬が増えています。長年スペインにいて、墓地にも何度か行っているのですが、あいにく画像が乏しく、うまくお伝えできませんが、ヨーロッパ映画に出てくる、門があり、中に入ると糸杉がある、あの霊園を想像していただければと思います。家族のお墓を訪れ、掃除をし、お花を手向けるのは、万国共通です。

日本と全然違うのは、都市部においてのお通夜、お葬式へ行く時の服装です。新聞におくやみ欄があり、案内が掲載されるのも日本と同じです。ただ、お葬式のミサが行われるのはお葬式の日で、お通夜の日は近しい友達や親族が駆けつけ、故人に手を合わせ、残された家族と共に故人を偲ぶものになっています。日本では、お通夜に駆けつける場合、喪服でなくても良い、とされていましたが、最近は次の日の昼間のお葬式に出られない方が多く、実際にはお通夜がメインとなっている、と聞きました。日本を離れた 27 年の間に、いろいろなことが変わっていたのにはびっくりしました。

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モンジュイクの丘には霊園がある。アパートのように墓地が続く

スペインで行われる一般人のお通夜では、取るものもとりあえず駆けつける、ということで、普段着で構わないのですが、次の日に行われるお葬式のミサも、特に色の指定もアクセサリーの指定も、服の指定もありません。それぞれが故人とそのご家族に失礼に当たらない服装で参列するため、日本のお葬式のような「しめやかな黒」での儀式にはならないのが一般庶民の葬儀です。27 年の間に、仕事関係、友人関係含めてたくさんのお葬式に参列しましたが、服装だけを見ると、一種、パーティーのようでもあり、また人々の表情は、同窓会のようでもあり、時には故人の思い出話で涙を流しながら笑ったり、という会合になるのが常のようです。「次に再開する時には、ぜひおめでたい時が良いわね」と挨拶するほど、離れたところに住んでいる親族や、昔からの友人たちが集まる機会が減っているのが都会での忙しい生活なのかもしれません。

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墓地上層部分にはハシゴで登る。奥行きが見えにくいが、それぞれのお墓にひつぎがおさめられている

また、スペインで行われているのを見たことのないもの、それが、お香典とそのお返しです。バルセロナ市には、東西南北にそれぞれ葬儀場があり、ほとんどが住んでいる地域によって振り分けられます。また、火葬かどうかも葬儀場を選ぶ場合の目安となります。全ての葬儀場に火葬場があるわけではないのです。ただ、花輪は友人たち、同僚たち合同で送ることが多く、故人を送りだす時には、素敵なお花と共に、というのも万国共通です。

 

最近の日本のお葬式同様、宗教的なミサ、故人の好きだった音楽を聴きながらの会、友人たちのお別れの言葉がメインの式、または近しい人だけでの密葬、などなど、ひとつひとつのお葬式には個性が出ます。別れの言葉も同じ。

いかに言葉が違うと言っても、故人への言葉はただひとつ。

 

「安らかにお休みください = Descanse en paz = デスカンセ・エン・パス」

 

夏が近づき、日本ではお盆のお墓参り、鎮魂の花火大会の季節になってきました。明るい太陽の国、と言われるスペインですが、やはり日々の営みの中、人々は亡くなっていくのです。ちょっとしんみりしてしまいましたが、こうやって今は会えなくなってしまった人たちのことをちょっとだけでも思い出してみませんか?

それが、日本にいても、スペインにいても、何よりのご供養となりましょう。

¡Nos veremos el próximo mes! (ノス ベレモス エル プロキシモ メス)

来月、お会いしましょう!   という意味。

【プロフィール】

杉田 美保子

スペイン・バルセロナでの滞在 27 年を経て、2015 年に実家のある金沢市に移住。日本三名園の一つ、兼六園で観光ガイドをするかたわら、地域の方々にスペインの魅力を語り、「故郷」バルセロナとのつながりも大切に、翻訳通訳だけでなく、ステレオタイプに縛られない、多方面での活動を模索中。現在、北國英会話カレッジでスペイン語初級のクラスを受け持つ。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

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