掲載日:2014年12月09日

「生産性向上とメカトロニクス技術」講座

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株式会社 新興技術研究所

取締役会長 熊谷 卓

はじめに

現在 FA 工場で活躍している生産システムをだれが準備したかを考えてみましょう。

当然、工場の生産技術を専門とする【技師】たちです。技師たちは、生産用の設備機械の仕様書を書きます。

 

たとえば:

部品 A に部品 B を挿入して、部品 A の突出部を叩いてカシメること。
カシメ後、部品 A と B とを所定の引張り力で引張っても抜けないこと。
カシメ後、部品 B にひび割れ等の欠陥を生じないこと。
サイクルタイムは 3.0 秒以下とし、稼働率 80% 以上で連続稼働できること。

のように書かれています。これで多くの場合社内の稟議は通るでしょう。

 

しかし、この仕様書では、機械の目的機能は分かりますが、機械の構造は不明です。

では誰が機械の構造を決めるのでしょうか? それは、この機械を受注する設備機械メーカの技師たちです。

 

上記の簡単な例で示すと:

条件 2 の「引張っても抜けない」ためには、十分強い力のハンマーで叩いて突出部を潰せばいいはずです。しかし強すぎると条件 3 にある B 部品のひび割れが発生するかもしれません。

実験でこの二つの条件は単純には満足できないことが分かったとすると、ここでは単純なハンマーではなく、強く潰しても B 部品に高圧がかからないカシメツールの形状の工夫が必要です。また、カシメ動作も力の伝達を考慮して複雑な駆動特性が必要かもしれません。二つの条件を満たす「巧妙性」を実現するツールと動作特性の工夫が重要です。

 

本来この工夫は、A 部品 B 部品について最もよく理解している生産技術担当の技師たちがするのが、一番効率がいいはずです。生産技術担当の技師たちは、このような工夫を基にして設備機械の「構造指定を入れた本物の仕様書」を書くべきで、それではじめて【技師】と呼ばれるのです。

「目的機能だけの仕様書」を書く人は、いわば【技師】ではなく【手配師】にすぎません。

今我が国の多くの生産技術担当者が【手配師】に成り下がっている現実に大きな危機感を抱いています。

 

自動化システムが良好な巧妙性を発揮するためには、基本手段群 T・MACS(ツール・メカニズム・アクチュエータ・コントローラ・センサ)の組合せ方が勝負を決めます。

その組合わせ方の発展の歴史で、今、我々は「第 4 世代」の入り口に差し掛かっています。

 

目的を達成するための最適のツールを設計し、その駆動システムとして最適の動作特性を的確に構築する【本物の技師】を一人でも多く増やすためにメカトロニクス技術認定試験(自動化推進協会)もあります。

 

巧妙性実現の手法について、その構築・組合せから装置の最適稼働率に至るまで、わかりやすく解説しメカトロニクス技術認定試験でも高得点を得ることを目指してこの講座を開設したいと思います。

※  メカトロニクス技術認定試験とは、メカニズムと制御の組合せシステム構築技術レベルを判定するものです。旧、雇用・能力開発機構が、企業研修や職業訓練の成果確認の必要性を提唱し、それをうけて NPO 自動化推進協会が実行しているものです。
 

 

著者紹介

- 熊谷 卓(くまがい たかし)略歴 -

(世界人名事典 Who’s Who in the World 2013 他参照)

1955年03月  東京大学工学部精密工学科卒業
1955年04月  マミヤ光機株式会社入社
1962年11月  技術士国家試験合格・機械部門技術士登録
1963年03月  株式会社 新興技術研究所設立 代表取締役就任、現在 同社取締役会長
(業務内容:自動組立機をはじめ各種自動化設備機器等の開発・製作・技術指導)
【歴任】

米国・欧州自動化技術視察団コーディネータ 8 回

自動化推進協会 理事・副会長

精密工学会 自動組立専門委員会 常任幹事

日本技術士会 理事・機械部会長

中小企業大学校講師

日本産業用ロボット工業会 各種委員

神奈川大学講師

自動化推進協会理事

高度職業能力開発促進センター講師

等を歴任

 

【業績】
著書  自動化機構300選(日刊工業新聞社)、メカトロニクス技術認定試験教本(工業調査会)ほか多数
講演  アジア生産性機構講演で自動化システムを W・T・MACS で表示・解析を提示(世界初)ほか多数
論文 

自動化システムのデバッギング理論「チェック機構と最適稼働率」が欧州年間論文大賞にノミネイト

ほか多数

発明  メカトロニクス技術実習モジュールの発明、地震予知システム「逆ラジオ」の発明ほか多数