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ホーム > WEBマガジン SHINKAWA Times > メカトロニクス技術講座 > メカトロニクス技術講座 巧妙性実現の手段群(5)
掲載日:2015年08月04日

2 巧妙性実現の手段群(5)

2-2 円と直線の組合せが面白い第1世代・ヒンジとスライドのシステム

自動化システムの 80% はヒンジとスライドによる工夫

第1章で図 1-8 に示したドリリングユニットの早戻り、前節で加速度特性改善に使ったクランク機構など、いずれも比較的単純なメカニズムの工夫によるものです。

これらのシステムを図 1-17(a)に当てはめてみますと、図 2-6(a)のようにシステム特性は不均等変換のメカニズムによって得られていることがわかります。

実は、図 1-18(a)にある要素群のなかで、それぞれの群の上段にあるのはいずれも単純な特性を持つもので、下段にあるのがいわば「一癖ある」要素なのです。

 

ここで上段にあるのは、リバーシブルモータ、PLC、リミットスイッチです。

リバーシブルモータは単に回転するだけで、速度も変更できません。

PLC はプログラマブルロジックコントローラの略で、基本的には入力信号のオン・オフの条件によってアクチュエータのオン・オフを行うだけの制御装置です(最近はいろいろほかのこともできる高級機がありますが)。

リミットスイッチは、ドグがその操作ボタンを蹴ったことを検出して出力信号を作る極めて単純なセンサです。

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図 1-8 ドリルによる穴あけ自動化の改善例

(図 2-6(a)の曲者メカニズム(レバースライダ)
が特性を作っている)

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図 2-6(a)不均等変換メカニズムの特性が有効

こう考えるとわかるとおり、図 1-7 のドリリングユニットはメカニズムも上段の均等変換型のラックアンドピニオンとなっているので、いわばどこにも「曲者(くせもの)」がいない、きわめて「素直なシステム」になっているのです。

「曲者(くせもの)」がいないということは、つまり誰も「巧妙なことのできる者」がいないわけで、単純に「前進・後退」をするだけなのです。

 

これに対して図 1-8 のドリリング改善システムでは下段のメカニズム「レバースライダ」が早戻り特性を実現しています。

同様に図 2-6(a)のシステムでも、下段のメカニズム「クランク」が末端減速特性を実現しています。

 

いずれもラックアンドピニオンのような上段に記載される単純なものではなく、システムの動作に「巧妙性」を与えるべく、メカニズム自身が固有の動作特性を持った「下段にいる曲者」なのです。

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図 1-7 ドリルによる手作業穴あけの自動化例
(図 2-6(b)のように全部上段の要素で構成され
「曲者」がいない)

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図 2-6(b)「曲者」がいない素直なシステムでの単純往復動作

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【ヒンジとスライドの工夫】

 

ここでこれらの「巧妙性を持たせるメカニズム」の構造内容を考えてみます。

 

例えばドリリングの「早戻り」に使ったレバースライダは、クランクアームと同様のアームにスライダピンが取り付けてあり、これが出力レバーの中心線に沿って作られた溝の中をスライドするようになっています。

またクランクはクランクアームにコネクティングロッドが回転可能なヒンジで接続され、コネクティングロッドの先端に直進スライド機構がついています。

 

このようにここで巧妙性を実現するために使われているメカニズムは回転可能な接続「ヒンジ」と、直進ガイドの「スライド」で構成されていて、別に「難しい機構」に頼ったものではないことがわかります。

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図 2-6(c)「曲者」は簡単なヒンジとスライドの組み合わせでできる

昔から、できるだけ容易に作れるようなメカニズムを用いて、うまく巧妙な仕事をさせよう、と多くの機械設計者が工夫を凝らしてきました。まだコンピュータもサーボモータも無く、複雑な形状の機械加工もできなかった時代です。

当時の技術で最も作りやすい機構構造が複雑な曲線のいらないヒンジとスライドだったのです。 つまり、このようなヒンジとスライドを使った巧妙性実現の工夫は、自動化の歴史の中では「第一世代」であったわけです。

そんな古いシステムはいまさら持ち出さないほうがいいのではないか、と思われる向きもあるかもしれませんが、実際はこの「ヒンジとスライドによる工夫」は、今でも非常に有効で、メカニカルな巧妙性実現の 80% は、ヒンジとスライドによる工夫なのです。

 

以下、実例をあげて見ます。

 

実例① ロータリテーブル上のワークの取り出し工程

 

図 2-7 にロータリテーブル上のワークの取り出し工程の例を示します。

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図 2-7 ロータリテーブル上のワークの取り出し工程

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図でわかるとおり、一般的な動作は次のようになります。

まず動作①で真空チャックを下降、下降端で真空チャックの吸引を開始し、動作②で上昇。

上昇端で動作③のように水平後退移動を行い、チャックがワークボックス上に来て動作④の下降、下降端で真空チャックを開放。

動作⑤で上昇したのち、水平移動⑥で前進端まで進んで1サイクル終了、次のワークを待ちます。

 

このようなワークの取り出しユニットの典型的な例が、「自動化機構300選」の 292 ページ 「直線動作を組合せたピックアンドプレース機構」に掲載されています。

 

当然、チャックの上下駆動用の空気圧シリンダと水平移動用の空気圧シリンダとを用いて動作①から⑥を行うようになっていますが、この例では、戻り時間を少しでも節約するために、制御回路を工夫して斜めに戻るようにしてあります。

 

多くの場合、このような機構が採用されて問題は無いと思われています。しかし本当に、このような機構が最適解でしょうか?

◇複合運動機構◇ 出典:自動化機構300選 P292

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同じく自動化機構300選の 244 ページ「突き棒付シリンダによる直線運動と搖動運動機構」を見てください。

ワークを掴む真空チャックが上下シリンダの先端に取り付けてありますが水平シリンダはありません。

その代わり上下シリンダのピストンロッドと平行して先端を丸くした「突き棒」と称するロッドが取り付けてあります。

その下にワークを滑らせるシュートがありますが、これが途中で二つに分かれています。

下半分は固定シュートですが、上半分の「可動シュート」は一番上の部分にあるヒンジで仮想線のように動かすことが出来ます。ヒンジのところにスプリングが取り付けてあり常時は実線のように下の固定シュートと接続しています。

 

この動作は次のようになります。

 

まずスタート信号でシリンダのピストンが下降します。そのときこれと平行の「突き棒」ロッドが先に可動シュートを押し開いてバキュームチャックが直接ワークに届くようにします。

◇揺動運動機構◇ 出典:自動化機構300選 P244

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そこで真空吸引を開始し、ピストンがそのまま戻ります。

すると可動シュートが元に戻って固定シュートと接続するので、そこで真空吸引を停止すればワークは落下し、シュートによってワークボックスまで転がっていきます。

この機構の工夫はシュート上端の簡単なヒンジと、シュート上面を滑る突き棒のスライド動作です。

 

もちろん、もっと耐久性を必要とする場合は、ヒンジをベアリングで支持したり、シュートの外側にスライド専用の機構を設けたりすればいいわけですが、そのような改良をしたとしても、上述の 292 ページと比較すればこのシステムの有利さがわかります。

水平動作シリンダがないことで、配線配管の単純化、水平動作終了検出センサの設定不要など、製作コスト・メンテナンスコストは大きく改善されます。

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実例② 外周に触れないワークのスライド送り工程

 

もう一つ例を挙げましょう。

 

図 2-10 に示すのはサイコロ状のワークですが外周には特殊な処理が施してあってツールを触れることができない状態と考えてください。

これを矢印のように平面上をスライドさせて所定の距離を移動させるものとします。

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図 2-10 外周に触ることの出来ないワークの移動工程

当然ツールの①下降、②前進、③上昇、④後退 の4動作が必要なのでこれらを空気圧シリンダで行うとすれば、上下動作シリンダと水平動作シリンダとを用意し、上下シリンダを水平動作シリンダで前後に駆動することになるでしょう。

したがって構造的にはやはり「自動化機構300選」の 292 ページ 「直線動作を組合せたピックアンドプレース機構」と基本的に同様のシステムとなります。もちろんバキュームチャックの代わりに 2 本ピンのツールを取り付け、動作順序も変更することは当然です。

確かにこれで目的動作をするシステムはできますが、メカ設計者としてはもう一工夫したいところです。

 

そこで参考文献を調べてみますと、同じく「自動化機構300選」の 288 ページに「空気圧シリンダによる爪の矩形運動機構」というのがあることに気づきます。

そこでこれをごく単純に真似すると図 2-12 のようなシステムができます。

288 ページの原図の構造と比較すると、「支点軸」を全く同じに「ニードルベアリングで軽く動くヒンジ」としてあります。

「スライド」は原図では往年よく使われた「アリ溝型のスライド機構」が使われていますが、現在では摩擦の少ないボールスライド機構が通常用いられますので、これに摩擦抵抗を与えることにします。

そこで「スライドに摩擦抵抗を与える機構」が必要となります。構造的には摩擦材をバネで押付けるだけの単純なもので充分です。

◇複合運動機構◇ 出典:自動化機構300選 P288

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図 2-12 外周に触ることの出来ないワークの移動機構の工夫

動作は説明するまでもありませんが、次のようになります。「1」でピストンが前進を始めるとヒンジの方が軽く動くので、ツールが下がり、「2」でさらにピストンが進むとスライドが「しぶしぶ前進」します。

前進端で「3」ピストンが後退を始めると、ヒンジが動いてツールが上がり、更に「4」ピストンが後退するとスライドが「しぶしぶ後退」して原位置に戻ります。

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図 2-13 動作順序

このシステムもヒンジとスライドが特徴的な動作特性を作っていることがわかります。

上下シリンダと水平シリンダを組み合わせたスタンダードなシステムと比較すれば、明らかに低コストになっていることがわかるでしょう。

 

以上のいくつかの例から、うまくヒンジとスライドの組合せを応用する第一世代のシステムで、かなりの「巧妙性」を実現できることが理解されるでしょう。

 

自動化技術の第一世代は「古い」のではなく、今でも有効に活用されなければなりません。

最近、各方面で叫ばれている「からくりの活用」も、その基本的な考え方には「ヒンジとスライドの活用」が極めて有効なのです。

ヒンジとスライドの組合せとは、運動特性で見れば「円と直線」の組合せです。この組合せの工夫が今でも「メカニズム設計者の腕の見せどころ」と言って良いでしょう。

 

 

メカニズムの力特性について

 

今まではメカニズムの持つ動作特性・速度特性について解説してきましたが、一方で、メカニズムの運動特性は、その出力の強さにも大きな関係があります。

特にこの第一世代のシステムの活用には、メカニズムの力特性を見逃すわけにいきません。

 

次回ではこの力特性について解説します。

【出典書籍】

  1. 熊谷 卓・西田麻美「改定新版 自動化機構 300 選」(日刊工業新聞社 2011年3月28日)
本コラムに関するご意見、お問い合わせ:t-kikaku@shinkawa.co.jp

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株式会社新興技術研究所 熊谷 卓 による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」は、クリエイティブ・コモンズ

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