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ホーム > WEBマガジン SHINKAWA Times > メカトロニクス技術講座 > メカトロニクス技術講座 巧妙性実現の手段群(6)
掲載日:2015年09月08日

2 巧妙性実現の手段群(6)

2-2 円と直線の組合せが面白い第1世代・ヒンジとスライドのシステム

メカニズムの力特性の活用・理論上は無限大の力を得る(その1)

昔から人間の力を補助するものとして使われてきたメカニズムは梃子(てこ)です。

昔の有名な科学者が「われに支点を与えよ、さらば地球をも動かさん」と言ったという話がありますが、何か大きな重いものを動かそうと思ったとき、最も単純でわかり易いメカニズムとして、誰でも最初に考えるのが梃子(てこ)でしょう。

いまさらそんな物を勉強する必要は無い、とお考えの方もあるでしょうが、とりあえず話の順序として梃子について考えてみることにしたいと思います。

図 2-14 梃子の原理図(A)を見てください。

 

当然、入力 \(F1\) に対して出力 \(F2\) は大きな力となります。その式は

 

\(F2=\displaystyle\frac{L1}{L2} \times F1\) ・・・(2-11)

 

と言われていて、これが梃子の基本式のようになっています。

しかし、よく考えてみるとこれは真の意味の「基本式」ではないのです。

vol007_no09_info01_03.jpg

 

図 2-14 梃子の原理図(A)

ではなぜこのような式ができて「基本式」と呼ばれたのか、大もとの理由から考えて見ましょう。

 

まず、メカニズムというものの本質をみると、図 2-6 に表示されているとおり、回転・直進・揺動などの「機械的運動」を入力として、同じく回転・直進・揺動などの「機械的運動」を出力するもので、この間に質的な変換は入りません。

 

例えばアクチュエータは一般に、熱、空気圧、電気などの「エネルギ」を入力として、回転・直進・揺動などの「機械的運動」を出力するもので、入力と出力との間に{質的な変換}が入ります。

通常、質的な変換が入る場合は変換効率が 100% になることはまずありません。

しかし、メカニズムのように入出力が同質の場合は、もちろん摩擦や空気抵抗などで減少しますが、理想的には 100% と考えていい場合が多いのです。

従って、梃子の場合、入力エネルギ \((E1)\) と出力エネルギ\((E2)\) を同じと考えて見ます。

エネルギを「力 × 距離」 と置いて、入力の力 \(F1\) で距離 \(S1\) だけ動いたとすれば、

 

\(E1=F1 \times S1\) ・・・・・(2-12)

\(E2=F2 \times S2\) ・・・・・(2-13)

となります。

 

入出力のエネルギ量を同じと置けば

\(E2=F2 \times S2 =F1 \times S1=E1\) ・・・・・(2-14)

となり、

\(F2=\displaystyle\frac{S1}{S2} \times F1\) ・・・・・(2-15)

 

となって、移動距離(ストローク)の比に逆比例することになります。

本来、これが「梃子の基本式」なのですが、現実には移動距離(ストローク)というのは測りにくいので、その簡易化のためにひと工夫します。

図 2-14 で、支点の右側の斜線を引いた扇形と左側の扇形とは相似形です。そこで、移動量 S1 と移動量 S2 の比は支点から力点までの長さ L1 と L2 の比と同じであることは明らかです。

従って、

 

\(\displaystyle\frac{S1}{S2}=\displaystyle\frac{L1}{L2} \) ・・・・・(2-16)

 

となり、これを 式(2-15)に適用すればいわゆる「梃子の基本式」 式(2-11)となるのです。

但し、数学的には図 2-15 のように、微少移動量\(⊿S1、⊿S2\)を想定して斜線を引いた三角形で理論式を立てますが、結果として「梃子の基本式」 式(2-11)は同じになります。

 

\(F2=\displaystyle\frac{⊿S1}{⊿S2} \times F1\) ・・・・(2-15A)

 

\(\displaystyle\frac{⊿S1}{⊿S2}=\displaystyle\frac{L1}{L2} \)  ・・・・・(2-16A)

 

\(F2=\displaystyle\frac{L1}{L2} \times F1\) ・・・・(2-11)

vol007_no09_info01_04.jpg

 

図 2-15 てこの原理図(B)

式(2-11)は、梃子の力特性を考えるには大変便利な式なので、基本式であってもなくても気にする必要はありません。

それならこんな話をする必要は無いだろう、と言われる向きもあるかもしれませんが、実はこの先があるのです。

 

次に、この梃子の考え方に速度の要素を加えて見ましょう。

 

今、式(2-15)で、移動量 \(S1\) を \(T\) 秒で動かしたとします。

移動量 \(S2\) も当然同じ時間で動きますので、それぞれの動きを速度 \(V1、V2\) で表して見ます。

\(S1\) の方の速度 \(V1\) は、

\(V1 = S1 \div T\) ・・・・(2-17)

 

\(S2\) の方の速度 \(V2\) は、

\(V2 = S2 \div T\) ・・・・(2-18)

 

となります。すると

 

\(S1 = V1 \times T\) ・・・・(2-19)

\(S2 = V2 \times T\) ・・・・(2-20)

 

となるのでこれを 式(2-15)に代入してみます。

 

\(F2=\displaystyle\frac{S1}{S2}\times F1=\displaystyle\frac{V1\times T}{V2 \times T} \times F1\) となり、\(T\) が上下にあるので消えて

 

\(F2=\displaystyle\frac{V1}{V2} \times F1\) ・・・・(2-21)

 

となります。

さてここでクイズです。

今、\(F1=10 N\)、\(V1=1.0M/\)秒、として、\(V2=0\) とした場合、出力 \(F2\) はいくらでしょうか?

 

\(F2\) は : ① 答えは存在しない  ② ゼロになる  ③ 無限大になる  ④ 入力と同じになる

 

前々回の講座でも似たようなことが出たのでお判りでしょう。式 2-21 に代入すると、

 

\(F2=∞\) です。

これは梃子だけではありません、すべてのメカニズムに共通なのです。つまり

「メカニズムを使って出力速度をゼロにしたら、その出力の『力』は 無限大になる」

のです。

 

以前紹介したクランクなどの「末端減速特性」を持つメカニズムは、出力動作が往復運動なので前進から後退に移るとき、必ず出力速度が瞬間的にゼロになります。

したがって、そこでは出力無限大になっていることになります。

 

「無限大!? こんな程度のメカニズムで、そんなに大きな力を出せるわけ無いだろう!」と思われるのも当然です。

 

次回は実際のメカニズムの力特性を測定して、本当に「出力無限大」になっているかどうかを考えてみることにします。

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株式会社新興技術研究所 熊谷 卓 による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」は、クリエイティブ・コモンズ

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