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日鐵住金溶接工業株式会社
オプト部長 田畑 和文
(NPO法人 光防災センシング振興協会 理事)
光ファイバ自体をセンサとして利用する光ファイバセンシングは、30年程前から工業的適用を目指して開発されてきている。本稿より二回にわたり光ファイバセンシングの最新動向について現場の視点から適用例も加え解説する。図1は、センサの破壊や故障を想定しシステム全体の機能性・安全性を高めたループ方式と呼ばれる光ファイバセンシングシステム概略図である。
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図1. 光ファイバセンシングシステムの概略図 |
従来の電気的センシングと比較すると、光ファイバの基本技術として以下の優位性があることを利用するセンシングである。
(1) | 線分布もしくは線多点の検出技術で、1台の測定器で多数の検出が可能であり、各検出端ごとの通信線が不要で、1本の光ファイバがセンサ及び通信線を兼ねている。 | |
(2) | 電磁ノイズ対策が不要である。 | |
(3) | 電気的センシングが適用できない箇所への適用が可能である。 | |
(4) | 検出端ごとの電源が不要で、測定器用の電源のみで良い。 | |
(5) | 光ファイバの伝送損失が小さく、長距離測定が可能である。 | |
(6) | ガラスである光ファイバは大気中の酸素については耐久性があり、センサの長寿命が期待できる。 | |
(7) | ル−プ化することにより、1箇所の損傷については、逆から測定することが可能で測定を継続することができる。 |
大枠として、当初の10年は測定器が研究・開発機器として製造され、多機能で1000万円を超え高価である事が主因で実験的なプロジェクト案件に適用された時期で工業的適用は困難であった。中の10年は工業的適用を目指して測定器の低価格への努力がなされ、インフラ監視用として一定程度の工業的適用がなされてきた。直近の10年は一層の測定器の低価格への努力がなされるとともに、防災監視やより高度なセキュリテイ管理の必要性が社会的に認識され始め、光ファイバセンシングの工業的適用が開始されている。その適用対象は土木、建築物、設備などあらゆる構造物・産業分野であり、今後その適用対象は拡大するものと推察される。最近は以下に示す社会的認識が深まりつつあり、様々な産業分野で光ファイバセンシングが一つの画期的な技術選択肢として検討され始めている。
(1) | 新規構造物の導入に当たり、ライフサイクルコストが課題になりつつある。 | |
(2) | 既存の構造物に対してはセキュリテイ管理上の適切な監視システムが要望されている。 | |
(3) | 構造物自体が変状を発信するスマ−トストラクチヤ化する挑戦が始まりつつある。 | |
(4) | 脱CO2、省エネやメンテナンスの観点から、高効率で安全なプラント稼働が強く求められている。 | |
(5) | 防災上、従来の電気的センシングでは困難であった対象に対して、新たな線分布/線多点センシングの優位性が認識され始めている。 |
これまで工業的適用が実現している代表例を表1に紹介する。
表1. 光ファイバセンシングの工業的適用例 |
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今後、光ファイバセンシングは、防災分野、プラントエンジニアリング分野、メンテナンス分野やセキュリテイ管理分野で工業的適用が拡大するものと予想される。10年後は、ごく一般的な技術として汎用化するものと推察される。NPO法人 光防災センシング振興協会ではこの認識の下、以下の課題を中心に据え活動中である。光ファイバセンセンシング技術に興味のある方、会社は是非とも参加頂きたくお願い申し上げる。
(1) | 光測定器や光センサの測定目的に合わせた特殊化よる一層の汎用化 | |
(2) | 光ファイバセンセンシング技術の啓蒙 | |
(3) | 光ファイバセンセンシング技術の標準化 |
次回は光ファイバセンシングを適用する場合の留意点を、以下の光ファイバセンシング構成要素を説明しながら解説すると共に、適用例における達成レベルと弊社(日鐵住金溶接工業株式会社)製品を紹介させて頂く予定である。
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Vol.2 No.6
2010年06月08日号
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