2025/02/03 電力・ガス 

発電所内の重要な橋渡し役として~保全システム導入事例~
- 徳島津田バイオマス発電所合同会社 -

概要

徳島県は面積の4分の3が森林で、豊富な木材資源を背景に古くから林業が発達してきました。戦後の高度経済成長期には、国内の木材需要が急増し、輸入木材の受け入れに対応するため全国の臨海地帯に多くの木材団地の建設が進められました。徳島県津田海岸町においても木材団地の建設が決定し、1970年(昭和45年)に完工しました。一方で、昨今の世界共通の課題である「脱炭素社会の実現」に向けて再生可能エネルギーへの期待が高まる中、化石燃料以外の生物由来の再生可能資源を使用するバイオマス発電は、環境に配慮しながら安定的かつ継続的な供給ができる電力源として注目されています。

こうした地域の特性とバイオマス発電の特徴によって、徳島津田バイオマス発電所は2023年12月に運転を開始しました。想定年間発電量は約50,000万kWhで、これは一般家庭の約150,000世帯の年間使用電力量に相当します。
発電には木質ペレット(注1)とパーム椰子殻(PKS)(注2)を燃料として有効活用することで、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に取り組んでいます。

 注1)木質ペレット:森林の育成過程で生じる間伐材や低質材、製材工場等から出る端材等を細かく砕き、圧縮成形した木質燃料
 注2)パーム椰子殻(PKS):アブラヤシの果実からパーム油を精算する過程で発生する残渣物

株式会社レノバの増井様は、発電所の運転開始当初から保全業務の管理システムとして、当社の保全システムの導入を推進頂きました。保全システムを納入後、積極的に活用いただいている皆様にもお集まりいただき、お話を伺いました。

インタビュー風景

左から
 株式会社レノバ 増井様
 徳島津田バイオマス発電所合同会社 藤田様
 徳島津田バイオマス発電所合同会社 仙谷様
 カナデビア環境サービス株式会社 鎌田様
 徳島津田バイオマス発電所合同会社 梅澤様
欄外に
 カナデビア株式会社 森川様

製品導入の背景・経緯
 ~イメージを覆すシステムの存在~

当発電所の関係者の間では、部門間のコミュニケーションを口頭に頼ることのリスクを認識されており、他の現場での経験からも保全管理に関するシステムの有用性を理解されていました。

増井様
「従来、保全管理用のシステムは非常に高価なものが多く、クラウド版でも年間で数百万円~1千万円以上のコストが市場の相場と認識していました。そのため、当発電所のような小規模な工場の場合、運用人数や業務量に対して、コスト的に全く見合わないと考えていました。新川電機さんとは主にタービン監視計器に関する取引がありましたが、あるとき、保全管理用のシステムに対する従来のイメージを覆す形で、圧倒的に安価なシステムを紹介いただいたことをきっかけに、導入への検討が始まった訳です。」

製品選定の決め手
 ~圧倒的に安価な製品と信頼のおけるスタッフ~

新川電機の『保全システム』を選定いただいた決め手を伺ってみました。

増井様 
「大きく3点あります。先ほど申し上げたように、市場の中で圧倒的に安価で、でも最低限押さえる機能は押さえている、という製品だったこと。これがまず1つ目です。そして、新川電機さんには『製品だけでなく、信頼できるメンバーに主導いただけないと採用しない』というポリシーを従来からお伝えしています。これに対して、2つ目の理由として、製品の詳細説明をしていただいた技術担当者の方の説明と態度が極めて素晴らしかったことです。3つ目の理由が、営業担当者のコーディネーション能力で、この方なら製品の導入まできちんと進めてくれる、と感じました。」

保全システムの特徴

『保全システム』は、Microsoft Excel®とMicrosoft Access®の各ファイルで構成され、共有領域に配置して使用します。機能の構成は基本システムに加えて以下の通りです。

    【オプション機能】

  • 部品周期表     :有寿命部品のリストを管理します。
  • 部品在庫管理機能  :部品のマスターと併せて入出庫を管理します。
  • 権限付与機能    :担当者ごとにアクセスできる機能に制限をかけます。承認フローにも使用します。
  • 保全作業依頼機能  :運転部と保全部の間でワークフローを実現します。
  • 作業指示書作成機能 :発行された保全作業依頼を帳票出力します。
  • 【カスタマイズ機能】

  • 工具治具一覧表   :工具と治具の一覧表を管理します。
保全履歴の一覧画面

おもな利用状況や具体的な活用事例

部品在庫管理機能

藤田様
「部品在庫の管理はSPC側で担当しています。予備品や補修部品などが納品されると、マスターから品名、部品番号などを参照して入荷数量などを在庫に反映させていきます。保管場所の入力項目もあるので、何が、どこに、いくつあるのか、がわかるようになっています。品目数として1,000点以上はありますので、紙の台帳などで管理するのは大変です。このシステムが無ければ在庫の問合せを受けた際に、倉庫などを走り回って部品があるかないかを探すところから始まることになります。」
「またこのシステムは、Excelが触れれば操作をしながら使い方を習得することがきますし、分からないところはマニュアルを検索して調べることができました。ヘルプデスクについても、いつも迅速に対応いただけて助かっています。使用中にトラブルが起こった時なども丁寧に対応いただけて感謝しています。」

森川様
「修理などが発生した際、このシステムで検索すれば部品や予備品が、まずは有るか無いか、が分かることは大きなメリットです。」

保全作業依頼機能

不具合をいつ発見して、誰が、いつ、誰に、どういう内容で作業を依頼したか、が記録として残ります。また、依頼した内容の現在の状態が、受付待ちなのか、対応中なのか、完了なのか、が一覧で分かるようになっています。

鎌田様
「小さい所帯では口頭でのやり取りが多く、システムが無ければ運転部と保全部で齟齬が起こるもとになりますので、保全システムに記録を残すことでお互いの円滑な業務遂行に役立っています。入力にはお互いの認識に差異が生じないように、『素人が読んでも内容が理解できるような文章で』と指導しています。入力した履歴は一覧になりますので、『壊れていて今修理中』、『修理が完了したけどまだ壊れている』、などが分かりやすく非常に助かっていますし、1件ごとの内容は3交代の申し送りにも活用しています。」

森川様
「過去に何があったかを履歴で検索できるところがすごく役立っています。初めての機械を担当するにしても、『こういうことが起こって、こういう処置をした』という記録があれば、現場へ行く前にあたりを付けられます。」

保全システム操作中

増井様
「総じて、システムの導入目的と利用者の使用状況を比較しても、大きな乖離は無さそうです。使ってみると細かい所の不満や要望は出てきますが、この辺りの改修要望を相談できるところも本システムの利点の1つです。」

今後の展望

1年くらい使用してきて、保全履歴が126件ほど蓄積されました。

鎌田様
「履歴がたまってくると、機器ごとのクセや壊れやすさのような傾向が出てくるのでは、と想定しています。故障頻度の高い機器や箇所、部品などのデータが収集できてくると、補修手順のマニュアル化に繋がるとともに、故障原因を探るきっかけにもなります。補修方法の見直しや部品の転換などにつながり、更なる保全の効率化に繋がっていくことを期待しています。」

新川電機の製品・サービスに対するご要望

鎌田様
「計装関係の教育をしてくれるサービスを探しています。運転部としては一番弱い部分で、機械や電気はわかるが計装はちょっと・・・、という人は多い。計器の測定原理やPID制御とは何か、など基礎教育のサービスがあれば助かります。」

もちろんご用意があります。
新川電機では計測と制御にかかわる方向けの初級研修を実施しています。
計装機器の原理や役割について、机上学習と仮想プラントを用いた実機による実習をおこなっておりますので、机上学習やシミュレータのみでは理解が難しい計装機器の特徴やPID制御の動作を体感できます。

【新川電機主催のセミナー情報はこちら】

インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。

お客様情報
会社名 徳島津田バイオマス発電所合同会社
所在地 徳島県徳島市津田海岸町9
運転開始 2023年12月
設備容量 74.8MW
想定年間発電量 約50,000万kWh(一般家庭 約150,000世帯の年間使用電力量に相当)
燃料 木質ペレット、パーム椰子殻(PKS)

製品情報

保全システム