• 事業所一覧
  • お問い合わせ
  • ENGLISH
  • ホーム
  • 取扱商品
  • 事業内容
  • ソリューション事例
  • 会社情報
  • 採用情報
ホーム > WEBマガジン SHINKAWA Times > コラム > 森本 吉春 > 構造物の形状や変形を調べる格子法・モアレ法/No.1 サンプリングモアレ法による変位分布・ひずみ分布計測
掲載日:2015年05月13日

構造物の形状や変形を調べる格子法・モアレ法
No.1 サンプリングモアレ法による変位分布・ひずみ分布計測

about_member_morimoto.jpg 

 

和歌山大学名誉教授

4Dセンサー株式会社(フォーディセンサー)

代表取締役会長 森本 吉春

プロフィールはこちら

 高度経済成長時に作られた多くの構造物が寿命を迎えようとしています。とくに橋梁や建物などのインフラ構造物の安全性を確保するためにはその健全性を評価する必要があります。それらの健全性の確認法の一つとして、構造物の形状や変形を調べることが重要となってきます。また、新しく開発した構造物の強度を実物で確認する必要があります。ここでは、構造物の形状や変形を調べる代表的な方法として画像相関法、格子法、モアレ法、とくに新しい方法であるサンプリングモアレ法について紹介します。

1.変形計測の必要性

 多くのモノ(構造物や部品)は力を加えていくと変形が大きくなっていき最後に壊れます。この変形を調べると、壊れることを予知することができ、それに対応して修理をしたり、その危険から避難することにより、安全となります。

 また、モノを作る場合には、壊れないで安全となるように、設計をします。作ったモノが設計通りにできているかを調べるために、作った後でそのモノに実際に力を加えて変形させ、力と変形の関係が設計通りであるかを調べます。その関係が設計通りなら安全といえます。設計よりも大きな変形(変位)が生じていたら、危険ということになります。また、設計計算ができないような複雑な部分については、実際のモノの変形を実測して、その変形量(ひずみ**や応力***)がその材料の安全値以下であることを確認します。

 このようにモノの変形を計測することは安全・安心のために非常に重要となります。

変位  :  物体上のある点が動いた距離、あるいは、動いた距離とその方向
**ひずみ  :  物体上の2点間の伸びを元の2点間の距離で割った値(単位長さあたりの伸び量)。ひずみが材質により決まる限界値を超えると壊れることになります。 
***応力  :  物体上のある面に働く力(単位面積当たりの力)。応力が材質により決まる限界値を超えると壊れることになります。弾性体の応力とひずみの間には比例関係があります。

 

2.一点計測法

 変形の計測には、力を加えたときにそのモノの各点が動いた量(変位)を調べる方法と、元の長さに対してそのモノが伸びた割合(ひずみ)を調べる方法が主流です。 1 点の変形を調べる一点計測法と、見ている範囲内の分布を調べる分布計測法があります。一点計測法としては、変位を調べるセンサーとして、ダイヤルゲージやレーザー変位計があります。ひずみを調べたい場合は抵抗線ひずみゲージなどがあります。最大の変位や最大のひずみが起こる場所や、とくに変位やひずみを調べたい場所がわかっている場合には、その場所の一点だけを一点計測センサーを用いて高速に計測ができます。しかし、最大になる場所がわからない場合は一点だけでは不十分で、分布計測が必要となります。一点計測センサーを多数用意して分布を求めたり、1台の一点計測センサーを調べたい領域内でスキャンして分布を調べることもできますが、次に述べる画像を用いる方法では、簡単に高速に分布を計測することができます。

物体までの距離により1次元フォトセンサーに写る投影したレーザーの位置が異なることより、距離がわかります。
図1 レーザー変位計の計測原理説明図
vol007_no05_col05_02.jpg
ページの先頭へ

3.画像を用いた分布計測法

 写真画像などを用いると1点でなく、カメラの各画素における 2 次元の分布情報が得られます。さらに、人間が2眼で距離を認識するように、これを2台のカメラで異なる方向から見たり、1台のプロジェクタで投影した物体上の格子を別の方向から1台のカメラで撮影することにより、三角測量の原理を用いて、3次元情報(その点の \(x,y,z\) 座標)を得ることができます。さらにこの時間変化を調べると4次元情報(その点の \(x,y,z\) 座標と時間 \(t\) の変化)を計測しているということになります。ここでは、変形が平面内で起こる面内変位や面内ひずみの場合の計測法を紹介します。

カメラの各画素における物体を見ている方向、その物体に投影されている格子のプロジェクタからの方向およびカメラとプロジェクタの距離がわかればその物体の座標がわかります。
図2 三角測量の原理説明図
vol007_no05_col05_03.jpg

3.1 画像相関法

 物体の表面の模様がランダムなパターンである場合、変形前後で、パターンのどの部分がどこへ動いたかを調べることができます。具体的には、変形前のある点の近傍のパターン(パターン A とする)を覚え、変形後の画像において、そのパターンの特徴と同じ特徴をもつパターン(パターン A‘ とする)を見つけることにより、その点が変形によりどの点に動いたかを調べることができます。パターン A の特徴として画像の明るさの場所による変化の仕方が同じパターン A’ の場所を見つけることにより、すなわち、変形後のパターン A の画像の輝度分布(明るさ分布)と、変形後の画像の一部を取り出し、パターン A と同じ輝度分布、あるいは最もよく似た輝度分布)をもつ部分(すなわちパターン A とパターン A’ の画像の輝度分布の相関値が極値をとる場所)を見つけることにより、その点が変形後の点となります。この方法は、物体がはじめからランダムな模様をもっている場合は準備の手間がほとんどいらず写真をとるだけで、後は計算処理だけで計測できることになるメリットがあります。しかし、多くの場合、ランダムなパターンを描いて計測をします。相関を調べるパターンの画素数が小さいと対応しない点を対応する点と間違う可能性が大きくなります。逆に、パターン A の画素数が大きいほど、対応する場所が正確に求められますが、その分、誤差が大きくなる(空間分解能が低くなる)ことと、計算に時間がかかることが欠点となります。

試料に描かれたランダムパターンが動いた場所を相関計算により見つける方法

vol007_no05_col05_04.jpg

(a) 変形前          (b) 変形後  

変形前にあった赤い領域(パターン A)が変形によりオレンジ色の領域(パターン A’)に移動したとき、赤い枠を変形後の画像にあてはめ、緑色の枠のように動かしながら、その領域のパターン B と元のパターン A との相関値を計算し、その極値をとる最もよく似た画像の位置を見つけることにより、移動した場所を特定し、変位を算出することができます。

 

図3 画像相関法の原理説明図

ページの先頭へ

3.2 格子法

3.2.1 格子法と位相

 ランダムなパターンの代わりに規則正しい等間隔な格子模様を計測対象のモノに描くか貼り付けます。格子が平面内にあり、その格子が変形によりその平面内で動いた場合、カメラで撮影すると同じ画素において変形前の格子の位相と変形後の格子の位相※が異なります。この位相差が変形量に比例しており、位相が \(2π\) 異なると変形量が格子の1ピッチということになります。格子の位相の変化を調べることにより、格子ピッチの 1/1000 程度の精度で変位を計測することができます。

 ※格子の位相:等間隔の余弦波状の輝度分布をもつ格子の輝度分布 \(I\) は \(I=a\,cos\phi+b\)  と表されます。グラフで書くと図4のようになります。ここで、\(a\) は輝度振幅、\(b\) は背景の輝度、\(\phi\) が位相となります。\(a\) や \(b\) は変形によりほとんど変わりませんが、\(\phi\) は変形により大きく変わり、この位相 \(\phi\) を解析することにより、精度よく変位を求めることができます。

vol007_no05_col05_05.jpg

 

図4 格子やモアレ縞の輝度と位相

 この格子の輝度分布が余弦波状であるとしますと、場所 \(x\) に対して輝度 \(I\) は次式のように表されます。

\begin{align} \tag{1} I=a\,cos\phi+b\end{align}

$$\phi=2πx/p$$

 この格子が図4(b) のように変形したとします。この格子の輝度をグラフにすると、図4(a) のようになります。 \(x_1\) 点が \(x_1’\) 点に動き、 \(x_2\) 点が \(x_2’\) 点に動いたとします。途中の点もそれぞれ \(x\) の値に応じて連続的に動いたとします。すなわち変形前と変形後で、輝度が同じ点(すなわち位相が同じ点)が変形前後の対応点(物体上の同じ点)と考えることができます。そこで、変形前後の格子の各点の位相を調べれば、どの点がどこへ動いたかがわかります。逆にカメラの同じ 1 画素で観測していた場合、\(x_1\) 点の位相が変形前に \(\phi_1\) だったものが変形後に \(\phi_2\) になったとすると

$$∆\phi=-(\phi_2-\phi_1)$$

だけ位相が変化したことになります。これを変位に直しますと

$$u=p \frac{∆\phi}{2π}=-p\frac{(\phi_2-\phi_1)}{2π}$$

となります。この式を用いて各点の格子の変形前後の位相を調べることにより変位分布を求めることができます。このように格子を用いて変位分布を調べる方法を格子法といいます。

ページの先頭へ

3.2.2 位相解析

 カメラの1画素で撮影された格子の輝度は式(1)で表されます。ここで、\(a,b,\phi\) の3つが未知数であるため、条件を変えて3回以上の輝度値を撮影し、これらを用いて未知数 \(a,b,\phi\) を決定することができます。変形に関係するのは \(\phi\) だけです。\(\phi\) を求めるのに一番良く使われている方法は 4 回の位相シフト法です。

 すなわち、

 

\(I=a\,cos(\phi+α)+b\)

 

となるように、\(α\) だけ格子の位相をシフトして、格子を撮影します。

 具体的には、図5に示しますように、プロジェクタで格子を投影している場合は、プロジェクタの格子の位置を
1/4ピッチ(\(α=π/2\))ずつずらして投影しますと、1つの画素で下記 4 つの輝度値が得られます。

$I_o=a\,cos\phi+b$

$I_1=a\,cos\left(\phi+\frac{π}{2}\right)+b$

$I_2=a\,cos\left(\phi+π\right)+b$

$I_3=a\,cos\left(\phi+\frac{3π}{2}\right)+b$

これらの輝度値より、未知数 \(\phi\) を求める式は

$$tan\,\phi=-\frac{I_3-I_1}{I_2-I_0}$$

となります。すなわち、位相が \(π/2\) ずつ異なる格子を撮影し、その 4 つの輝度値から位相が得られます。変形前後の位相がわかれば、変位を計算することができるようになります。

vol007_no05_col05_06.jpg

 

図5 格子の位相解析

 ここでは格子を 90 度ずつずらして投影する位相シフト法について述べましたが、変位やひずみを求める場合は試料に格子を貼り付けているため、位相シフトができません。その場合でも位相シフトが可能な方法がサンプリングモアレ法です。つぎに、この方法について説明します。

3.3 モアレ法とサンプリングモアレ法

 図6(c) に示すように (a) の格子(基準格子)と (b) の格子(変形格子)を重ねると新たな縞模様が発生します。これがモアレ縞です。この格子やモアレ縞を用いて変位やひずみを計測することができます。

 格子法では格子の変形を調べましたが、モアレ法では変形した格子に変形前の格子を重ねて発生するモアレ縞を調べることにより変位を得ることができます。

vol007_no05_col05_07.jpg

(a) 変形前の格子

vol007_no05_col05_08.jpg

(b) 変形後の格子

vol007_no05_col05_09.jpg

(c) (a)と(b)の重ね合わせ
によるモアレ縞

vol007_no05_col05_10.jpg

(d) カメラでサンプリング
して得られたモアレ縞

図6 サンプリングモアレ法によるモアレ縞

 2 枚の格子を重ねる代わりに、デジタルカメラで変形格子を撮影すると、同様なモアレ縞が現れることがあります。また、テレビの視聴中にストライプ模様の服などを撮影すると、画面上にモアレ縞が現れることがよくあります。2 枚の格子を重ねるということは基準格子の隙間から変形格子を見ていることになります。この基準格子の隙間から見るというのをテレビカメラの走査線やデジタルカメラの画素に置き換えますと、図6に示しますように、走査線や画素の間隔が粗いと(b)に示す格子を撮影するだけでモアレ縞が観測されます。多くの場合、テレビカメラの走査線やデジタルカメラの画素の間隔は格子のピッチよりも細かく一般にはモアレ縞は観測されず、図 (b) の画像が得られますが、この走査線や画像の画素を間引くことにより、画像の画素間ピッチを格子のピッチに近づけてサンプリングするとモアレ縞が現れます。このように、格子画像のサンプリングにより発生するモアレ縞の位相を解析して変位を求める方法をサンプリングモアレ法といいます。

 位相解析を行うには位相シフトした 3 枚以上の画像が必要でしたが、サンプリングモアレ法では、1 枚の画像から位相シフトしたモアレ縞画像を作ることができます。この手順を、図7を用いて説明します。

 図7の (a) はカメラの画素位置を示しています。(b)は撮影される試料に貼り付けた格子です。(c)はこのカメラで撮影された格子の画像です。この画像を間引いて4画素に1画素ずつサンプリングしますと、(d)に示す画像が得られます。間引かれた画像を輝度が滑らかに変化するように補間により埋めますと(h)の画像が得られます。同様に (e)~(g) は間引く位置を変えて得られた画像です。(i)~(k) の画像はそれぞれ補間により得られた画像です。このようにすることにより、(h)~(k) において、90度ずつ位相シフトした画像が得られ、位相解析ができることになり、精度良い変位を求めることができるようになります。

vol007_no05_col05_11.jpg

 

図7 サンプリングモアレ法の手順

ページの先頭へ

4.ひずみの計測法

 ひずみはすでに述べたようにモノが伸びたときその伸びを元の長さで割ることにより単位長さあたりの伸びとして得られます。一点計測法としては、抵抗線ひずみ計があります。これは、金属の電気抵抗は伸びると増加し、縮むと減少することを利用して、モノに貼り付けた抵抗線ひずみゲージの抵抗値の変化からひずみを求める方法です。精度良く求めることができますが、分布を求めるためには多数のひずみゲージを貼る必要があり、実用的ではありません。

 変位分布がわかっている場合は、変位を微分すればひずみが得られます。そこで、変位分布を格子法やモアレ法により求めておいて、その変位を微分することにより、ひずみを求めることができます。

5.サンプリングモアレカメラ

 4Dセンサー株式会社では、サンプリングモアレ法により変位やひずみを解析するシステム(サンプリングモアレカメラ)を販売しています。また、このための各種格子を用意しており、簡単に計測対象物に格子を接着することができるようにしています。テレビカメラでこの格子を撮影することにより、簡単にリアルタイムであるいはバッチ処理により、対象物の変位分布、ひずみ分布、振動分布を計測することができます。

このデモ動画はホームページ(http://4d-sensor.com)で見ることができます。

次回は格子法・モアレ法を用いた三次元形状計測法を紹介します。

【プロフィール】

小松製作所にて油圧機器の開発研究を6年、大阪大学/和歌山大学で画像計測の研究を30年、工学博士。

和歌山大学教授・理事/副学長、名誉教授。

国際学会での基調講演・招待講演・受賞なども多数。

趣味・特技:発明、写真、登山、スキー、ドライブ

【関連ピックアップ・プロダクツ】

コラムに関するご意見、お問い合わせ:sectimes@shinkawa.co.jp
$\rm\LaTeX$