御嶽山(標高 3,067m)が 9 月 27 日 11 時 52 分頃に噴火しました。気象庁は、噴火を確認した後、12 時 36 分に噴火警報(火口周辺警報)を発表し、噴火警戒レベル 1(平常)から 3(入山規制)に引き上げました。
気象庁火山活動解説資料によると、9 月 10 日から 11 日にかけて、剣ヶ峰山頂付近で火山性地震が増加もしたが、その後次第に減少していたとあります。
先のコラムで紹介した自宅でできる地震予知「逆ラジオ」は、何らかの予兆を捉えていたのでしょうか。御嶽山の南西に位置する観測点は、一様に同期し反応していました。「逆ラジオ」では、広範囲に渡る一本立ち同期データは大きな地震の前兆になりますが、特徴でもある数週間に渡る山なりのデータが見当たらない不思議な同期した一本立ちでした。
今回の噴火との関連性はわかりませんが、「逆ラジオ」の会員などからの問い合わせも多いことから、9月11日前後に得られているデータを公開し考察してみます。

御嶽山

出典:国土地理院ホームページ(http://gsi-cyberjapan.github.io/ontake/#11/35.8637/137.4822) WEBマガジン事務局にて4枚合成(平成26年09月28日、29日撮影)

長野県木曽郡木曽町・王滝村と岐阜県下呂市・高山市にまたがる東日本火山帯の西端に位置する標高 3,067 m の剣ヶ峰を主峰(火山としては富士山に次いで 2 番目の標高)とした独立峰。

はじめに

戦後最大の犠牲者を出した御嶽山の噴火について、多くの方々から「逆ラジオ」ではなんらかの前兆現象がとらえられていなかったか?というご質問がありました。ここでは、「逆ラジオ」で得られたデータを考察してみます。

噴火 16 日前の不思議な現象

噴火の 16 日前、9 月 11 日に新潟十日町、岐阜大垣、浜北、御前崎、豊橋 2 か所、四日市、京都伏見、神戸、という中部から関西にかけた広範囲の 9 か所の観測点でほぼ完全に重なった一本立ちの同期データが出ていました。

この 9 か所のデータはかつてないような広い範囲の同期であり、もし地震性のデータとすると震源は地理的な中央の岐阜から琵琶湖あたりとなります。

従来のデータでは、このような広範囲の同期データは大きい規模の地震の前兆であり、これらの同期した一本立ち以外の観測点に少なくとも数週間程度は続く大きな山なりのデータが出ますが今回の場合、そうした山なりのデータが見当 たらない、不思議な同期一本立ちでした。

御嶽山 火山性地震の回数(8月1日~9月25日) 出典:気象庁ホームページ(http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/ tokyo/STOCK/weekly_report/2014/2014w39/2014w39.htm)

後でわかったことですが、この広範囲の同期した一本立ちデータの出た 9 月 11 日は、御嶽山の前兆地震が 1 日 85 回とここ数年で最高の回数を記録した日と同じ日でした。

もしこの事例から、電磁波ノイズ測定装置「逆ラジオ」が活火山の小噴火などの前兆データが取れるのであれば、鹿児島の桜島や伊豆大島、軽井沢の浅間山などの周囲に装置を置き、ときどきある小噴火の前兆との相関関係をとってみたいと思います。

以下、9 月 11 日前後のデータを紹介します。

「逆ラジオ」により得られた詳細なデータ

9 月 11 日に広範囲に同期した一本立ちデータの出現

9 月 11 日に新潟十日町、岐阜大垣、浜松、御前崎、豊橋の 2 点、四日市、京都伏見、神戸灘、の中部~関西の広範囲にまったく同期して重なるデータが出ています。

通常ではこのような広範囲の同期データは大きい地震の前兆になり、どこか数か所に大きな山なりのデータが出ますがこの場合、山なりのデータが見当たらない、不思議な同期一本立ちでした。 また地図をみると複数データの中央は岐阜~琵琶湖あたりになりますがこの近辺に大きいデータがみられず中部の地震とは考えられませんでした。

9 月 11 日に一本立ちデータの出た観測点

※グラフデータは、逆ラジオ方式を採用した計測装置によって観測されたパルス性電磁波ノイズ(強さと回数)と、これまでに発生した地震との関係をしめします。 グラフの縦軸は 1 時間当たりのノイズ発生回数を示し、最大では 1 時間当たり 360 万回です。横軸は、経過時間を示し、最大で 4 週間分が表示されます。
私たちの生活(身の周り)において観測されるノイズは、1 日に数十回から数百回程度ですが、地震が発生する前は 1 日当たり数万回から数百万回という膨大な回数が、数週間にわたって観測されます。

比率処理データでの同期の検証

上記の新潟十日町、岐阜大垣、浜松、御前崎、豊橋の 2 点、四日市、京都伏見、神戸灘の中部~関西の広範囲の同期データを比率処理すると以下のグラフのようにきれいな重なりがみられます。

中部から関西の各観測点データの比率処理(平均)
中部から関西の各観測点データの比率処理(時間毎)

※ 比例処理は、観測点のデータが、現在どのような状況にあるのかを判断するために、平均値を割出して比率処理を行って表示しています。ノイズデータの量と組み合わせて利用することで判断の助けとなります。

同期データ観測点

これまでのデータから、9 月 11 日の近辺に東海~関西の広範囲に同期データが出ています。新潟十日町、岐阜大垣、浜松浜北、豊橋、四日市、京都―伏見、神戸―灘であり、新潟から、浜松、さらに神戸までの広範囲の同期データは極めて珍しいものでした。
左の図は、同期データの出た観測点の位置です。
中央の赤丸は御嶽山のおおよその位置になります。

おわりに

日本は四つのプレートがひしめきあう世界有数の地殻変動地域にあり地震火山国です。東日本大震災以降、首都圏の地下で起きる地震活動は活発化しています。地震頻度は 3 倍に跳ね上がり、文部科学省が発表しているように「いつ発生しても不思議ではない」状況が続いています。

地球上で起きている自然現象を科学的に明らかにする地球科学では、「過去は未来を解く鍵」という言葉があるとのことです。そのような地球科学の視点から注視されている南海トラフで起きる巨大地震の連動は、東日本大震災が誘発するのではく、独立して起きると考えられています。南海トラフ沿いに起きた巨大地震の過去 5 回程度の記録を見ると、独自の時間的規則性があるからです。その年は 2030 年から 2040 年とも言われています。

広報誌「ぼうさい」 出典:内閣府ホームページ(http://www.bousai.go.jp/ kohou/kouhoubousai/h21/05/index.html)

最近の予測実績は向上していますが、政府や自治体などの公共機関が扱うには予測情報を人々にどのように伝えるか、というコミュニケーション上のノウハウが必要になります。そこでは、多くの方が事前の正しい知識と震災発生前後のシュミレーションが必要となります。

内閣府のポスターで「地震より怖いのは、まさか来ないという自信」というのがありました。心理学の用語で「正常化の偏見」と呼ばれていることをよく表しています。不意打ちにあわないように、地震が必ず来るという前提で出来る事から始めては如何でしょうか。

「逆ラジオ」によって得られたデータの活用が減災につながることを願っています。

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各観測点(9 ヶ所)のデータ詳細

比率処理の各データ詳細

その他の地域(名古屋、和歌山、神戸市)の 1 年間のデータ