11月22日22時8分頃に長野県北部を震源とする地震が発生しました。
震源の深さが約 5km と浅く、被害を拡大しました。
先のコラムなどで紹介している自宅でできる地震予知「逆ラジオ」の予測週報11月19日版では、「前日の 18日に発生した地震は前震で今後本震が発生する可能性に注意してください」としていましたが、結果は「11月22日長野県北部 M6.8(速報値)」の発生で予測より大きい地震でした。長野周辺の観測点が少なく、観測点が多ければ的確な予兆を捉えることにつながると思われます。
「逆ラジオ」の会員などからの問い合わせも多く、また M6.7 とエネルギーも大きいことから得られているデータを公開し考察してみます。

出典:気象庁ホームページ(http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.php) 長野県神城断層地震 震度分布図(2014年11月22日 22時08分)

前震から本震へ

「くるかも」※1 の2014年11月19日付け予測情報では、前回長野県北部の小地震を、9/11 十日町の一本立ちデータ※2 (新潟中央区 243 にも同期データ)による予測に対応する地震として的中とした上で「これが前震で今後本震が発生する可能性に注意してください」としました。

結果は「11/22 長野県北部 M6.8(速報値)」などの発生で予測より大きい地震でした。

図1. 十日町観測点で 9/11 に出た年間最大近い「一本立ちデータ」
図2. 新潟中央区 243 観測点で 9/11 に出た十日町との「同期データ」

予兆データの再検討

震源の直上に近い長野 KB274 観測点のデータを再検討した結果、図3 のように、昨年暮れから半年間に亘る長期山型データの収束後、対応と思われる地震が発生していないので、これが対応地震だったと思われます。

ただ全体のデータ量が小さいこと、収束後の期間が長すぎることなどから再検討してみました。グラフ中の(29km 長野 M7.5/100km)とあるのは、「M6.8 の震源が長野観測点から 29km の場所であった。これは M7.5 の地震が観測点から 100km の場所で発生したのと同様のデータになる」という意味です。

図3. 長野 KB274 観測点の一年間の「時間毎データ」

テレビでの地震学者の解説のように、震災後、「次第に地下構造の変動が伝搬してきている」のであれば、今回の地震の原因となる地中ストレスはプレート間のストレス増加よりかなり小さい加圧ストレス増加と考えられます。

したがって、半年かけてゆっくり進んだ歪は、急速なストレス増加でないので 6 月末にデータ収束の後も、静圧のまま長期間保っていたものが遂に 11 月半ばに動いた、と考えてよさそうです。

他のデータ処理手法による再検討

一方、検証のために幾つかの観測点のデータの比率処理グラフをチェックしました。
これは日常の平均的なデータ量に対して大きいデータが出た時の日常値に対する比率を % 表示するものです。
各観測点のうち、やはり長野 KB274 観測点が特徴的でした(図 4 参照)。
上記のとおり長野 KB274 観測点データの実データ量は小さかったのですが比率処理では最大 2000% という、かなり大きい値になりました。
これだけの大きい値になっていたデータが 6 月末に収束してから対応地震と思われる大きな地震が発生していなかったわけで、今回の長野県北部 M6.8 がその対応地震であったと考えてよさそうです。
今後の予測情報作成に大きな経験を与えられたものと考えられます。

図4. 長野 KB274 観測点の一年間の「比率データ」

周辺の観測点のデータについて

また直上の観測点より周辺の観測点が大きいデータを検出する「ドーナッツ現象」※3 と言われる現象があります。
タイミングとしては、図5-図7に示す 名古屋錦 251、大宮 201、文京などのデータが、長野 KB274 とやや同期に近く、これらもドーナッツ現象の一部かも知れません。

図5. 名古屋錦 251 観測点の一年間の「日毎データ」
図6. 大宮 201 観測点の一年間の「日毎データ」
図7. 文京観測点の一年間の「日毎データ」

直前データについて

多くの地震予兆で、大きいデータの収束後しばらくして小さいデータが出て発震に至ります。これを直前データと呼びます(東日本大震災でも直前データが出ました)。
図 8 のグラフは長野 KB274 の日毎データで、一日分のデータを 24 時間で割った値を示します。このグラフには 11 月 1-9 日に直前データと見られる小さいデータが出ています。
この小さなストレス増加で発震のきっかけが出来たと考えてよさそうです。

図8. 長野 KB274 観測点の一年間の「日毎データ」

観測点増強の必要性

関東地区の地震においても東京周辺に20ヵ所近くある観測点のうち、震源周辺の地下構造・震源の方向・深さ・逆ラジオの設置状態などによって、同一地震につき全観測点の 20% 程度しか的確な予兆を示しません。
長野周辺では、今回の震源から 100km 圏内の観測点は長野 KB274 のほかは2ヶ所だけです。もっと観測点が多ければ、今回の地震のような場合に直接予兆を捉える観測点もできると思われます。
今後の観測点の増強に各方面のご支援を期待します。

※1 「くるかも」は、日本全国から電磁波ノイズを収集し、分析した地震予知情報をメール配信するサービスです。
詳しくは「くるかも」サイトを参照ください。
※2 「一本立ちデータ」とは、電磁波ノイズの検出量が突然増大して一本の線となり、すぐに収束する現象をいいます。
2 週間ぐらいの内に地震発生の可能性があります。
《最近の傾向》 東日本震災前は「一本立ちデータ」出現後平均的に 2 週間 ±1 週間程度で対応と思われる地震が発生し、また「山型データ」の収束後も 2 週間 ±1 週間程度で地震が発生していました。しかし地震学者の解説通り震災以降、地下構造の大きな変動があったと思われます。その結果、データ出現から発震までの期間が長引いているようです。これは今回の長野県神城断層地震の予兆と思われる長野 KB274 観測点のデータでも収束後数ヶ月に亘り発震しなかったこととも関連がありそうです。
※3「ドーナッツ現象」とは、巨大地震が発生する場所を中心とした周辺地域で、巨大地震に先行して地震活動が活発になる現象で、予兆データとしては、周辺の小地震の予兆データが数多く見られることになります。

株式会社 新興技術研究所 地震予知研究サイト