2010/07/06 業界コラム 田畑 和文 光ファイバセンシング最新動向について No.2 日鐵住金溶接工業株式会社 オプト部長 田畑 和文 NPO法人 光防災センシング振興協会 理事...もっと見る NPO法人 光防災センシング振興協会 理事 前号では、光ファイバセンシングのシステム概要、従来のセンシングと比較した場合の優位性、歴史的経緯、工業的適用例を紹介した。今号では、適用時の留意点をシステム構成要素の視点から解説すると共に、要素別技術達成レベルを具体的に紹介する。 光ファイバセンシングシステムを適用する際の検討すべき課題光ファイバセンシングシステムの構成 4 要素を図 1 に示す。電気的センシングと比較すると新しい技術なので、4 要素をうまく纏める必要があり、顧客殿とシステム提供者との詳細な協議が重要である。 図 1. 光ファイバセンシングシステムの構成4要素以下、主な協議すべき内容を示す。 1.光センサについて センサ原理の理解 センサ能力の把握(特に検出可能範囲、許容温度適用範囲) 耐環境性と保護構造の選択(耐水性、耐ガス性) 被測定物へのセンサの取り付け方法の確認 標準センサのインライン設置が必要か(セルフチェック用) 寸法 測定器や通信用光ファイバへの接続方法の選択(コネクタ、融着) 導入時価格 修理時に必要な日数及び新品発注の際の納期 2.光測定器について 測定原理の理解(温度と歪みへのリニア性) 測定能力の把握(特に応答性と測定精度、距離分解能の関係) 測定条件変更の難易度 校正頻度と内容 設置環境の確認 導入時価格とランニング費用 修理時に必要な日数 3.施工について 布設ル-トの確認(作業内容及び布設環境の確認) 布設条件の確認(被測定物への固定方法、許容曲げ径、許容張力、必要張力) 修理時の作業内容の確認 布設費用 4.ソフトについて 顧客殿が必要とする情報の確認(任意測定点の測定値経時デ-タ、任意測定点の測定値変化率の経時デ-タ、異常時のデ-タの保存、警報システムの内蔵、警報信号、構造物の変状による構造力学的解析等) 上位システムとの双方向情報通信(警報信号、異常時のデ-タ) 測定条件及びスケジュ-ルの変更を、付随しているPCで可能かの確認 ル-プ方式の場合に、1箇所の損傷に対してル-プ両端からの測定が可能か 温度と歪み間の相互補正が必要か 汎用ソフトの有無、その内容を確認(カスタマイズドソフトは別途費用となるので、十分に検討する必要がある) 導入時価格とソフト変更費用 光ファイバセンシングシステムの技術達成レベルについて1.光センサについて 工業的適用に際しては、光センサの寿命、施工性、被測定物への固定作業性、繰り返し特性等が重要な課題になる。0.25mmϕ の光ファイバ素線や 0.9mmϕ の光ファイバ心線のままではこの課題を克服することは極めて困難である。その理由を以下に示す。 光ファイバ自体は 125μmϕ の石英系ガラスの裸ファイバに、保護用のUV樹脂やナイロン樹脂によりコートしてあるのみで、機械的強度が不足している。 光ファイバは水分やガス(特に水素)の影響を受け、伝送損失が急激に増加する欠点がある。 裸ファイバと保護用の樹脂に滑りが生じ易く、歪みの繰り返し変化に対応することができない。 これらの欠点を克服するためには、施工時に光ファイバを保護する何らかの構造が必要であるが、実用上は極めて困難な課題が残ったままになる。弊社では、この対策として「予め、細径・長尺のセミシ-ムレス金属管に光ファイバを挿入している」製品を提供している。(弊社製品:ピコセンサ)その技術的特徴を以下に示す。 高強度材料である金属を使用し、充分な機械的強度を有している。 セミシ-ムレス金属管を使用し、外気へのシ-ル性を確保している。 歪みセンサにカシメ技術を適用し、裸ファイバと金属管の滑りを防止している。 腐食性ガス等に対する耐環境性を考慮し数種類の金属材質を選択できる。 構造例を図 2 に示す。 図 2. ピコセンサ構造例2.光測定器について 光測定器の測定条件によって、分解能、応答性、測定範囲及び適用距離は相互性があり変化するが、光ファイバセンシングの適用例における各項目の最良値の例を表1に示す。 表 1. 適用例における各項目の最良値例 測定項目 測定器 測定方式 分解能 応答性 測定範囲 適用距離 耐熱性 温度 ROTDR 線分布 ±0.5℃ 数秒~数十秒 -196~500℃ 最大10km程度 500℃ FBG 線多点 ±0.1℃ 瞬時 -196~500℃ 数kmで100点/ch 500℃ 歪み BOTDR 線分布 ±100μϵ μϵ 数分~数十分 -0.2~1.5% 最大数十km程度 150℃ FBG 線多点 ±1μϵ μϵ 瞬時 -0.2~1.5% 数kmで100点/ch 500℃ 3.施工について 様々な工業分野で適用が進捗している。その内、プラントエンジニアリング部門で本格的な適用が開始されている数例を以下に示す。 図 3. 高温岩体発電 図 3 は高温岩体に意図的に水を注入し、蒸気として回収してタ-ビンを回転させる。いわゆる人工地熱発電である。ボイラ-としての機能を果たす回収井内の温度分布を測定する。 図 4. プラスチック廃棄物燃焼炉図 4 はプラスチックを熱分解させて有用な熱分解ガスを取り出す炉で、耐火レンガの損耗度を監視するために、炉外壁の温度を分布的に測定する。 図 5. コンベアライン図 5 は鉱石や木材チップ等の大型コンベアラインのコンベア近傍の温度や橋脚の歪みを分布的に測定し、操業の安全を確保する。 図 6. LNG タンク図 6 は LNG タンク内及び関連配管の温度を分布的に測定し、操業の安全度を向上させる。 4.ソフトウェアについて 弊社が提供している「ODS2005」は、測定器制御、自動測定、データ解析、警報判定などの基本機能がある光ファイバセンシング用の汎用ソフトウェアで詳細は別の機会とする。 以上 4 要素をシステムインテグレイトすることが重要であり、今後も参入企業に求められる。 まとめ光ファイバセンシングは新しい技術であり、従来のモニタリングシステムに対して画期的な改革を提供する可能性を秘めています。コスト的にも導入可能な低価格化が進行中であり、顧客殿にとっても一慮すべき技術となっています。メ-カにとっても、この分野に挑戦することは魅力的な新規分野に進出することになります。弊社も光ファイバセンシングにおけるシステムインテグレイタとして活動中であり、微力ながら、皆様の要望に応え得る経験と知識が有るやもしれません。ご遠慮なく、連絡頂ければ幸甚です。なお、光ファイバセンシングの将来性に興味を持った人、会社が集まり、NPO 法人として光防災センシング振興協会を設立しております。是非とも、協会に参加頂きたくお願い申し上げます。協会では「光ファイバセンシング入門」のガイドブックを企画中です。発行の際は是非ともご購入頂きたく重ねてお願い致します。 最後に、このような拙文の発表の機会を与えて下さった新川電機株式会社殿に、光ファイバセンシングに対する連帯の意味を込めて感謝申し上げます。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 日鐵住金溶接工業株式会社 オプト部長 田畑 和文さんのその他の記事 2010/07/06 業界コラム 光ファイバセンシング最新動向について No.2 2010/06/08 業界コラム 光ファイバセンシング最新動向について No.1 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月