株式会社 渡辺製作所 センサ事業部 営業部 部長

坂井 孝博

(NPO法人 光ファイバセンシング振興協会 会員企業)...もっと見る (NPO法人 光ファイバセンシング振興協会 会員企業)

最近、日本ではトンネルの天井構造物、米国では橋梁構造物の崩落が起こり人命が失われています。それぞれの構造物は建設後50年以上の時間が経過しており、モニタリングを行いそれに対応した保守改修が適切に行われていればこれらの事故は防げたと言われています。

老朽化するインフラ

経年変化に伴い老朽化が進むわけですが、老朽化の程度はそれぞれの個体の環境により大きく違い、建物、道路、橋梁、トンネルなどの個体のモニタリングが重要な課題として浮かび上がっています。これらのモニタリングを行うことによりこの様な惨事を引き起こす前兆を検知して、保守改修作業を行うことによりライフサイクルを延長する事やその見極めが可能であり注目されています。また、危険検知と言う領域では、水素・メタンをはじめとする防爆性が求められるガス検知の必要性も構造物の周辺環境にて存在しており、これも同様に議論されています。

光ファイバセンサが期待できる領域

現在、光ファイバセンサとして製品開発が完了している、あるいは開発が行われている領域としては、温度、湿度、傾斜、加速度、変位、圧力、振動、雨量、水検知、ガス検知などがあり、電気系センシングシステムでは諸条件により適用が難しい環境に主に設置運用がなされています。優位性としては、長距離:センサと測定器との距離を長く出来る、無給電:レーザ光を利用するため電気は不要防爆性:電気不要のため本質完全防爆、多点計測:一つのファイバに複数の異なるセンサ接続可能、対ノイズ性:電磁波や落雷の影響を受けない、安定性:光ファイバは石英から出来ており経年変化に強いなどが挙げられます。

コンクリート構造物のひび割れ監視

金属構造物のひずみ・振動計測

費用対効果を考えてみるとモニタリングを行い、それに対応する保守改修を行って延ばせるライフサイクルとそれに必要な費用を比較する事も重要であり、安全安心も費用対効果での経済合理性が成立しないと確保するのが難しい現実があります。最近、ファイバセンシングシステムも技術革新と量産効果により価格が低下傾向にあり、それに伴い普及が期待されています。

センサネットワーク

金属管表面の温度モニタリング

Trillion Sensors 、Internet of Things などと言われ始め、センサ数が膨大に拡大し、それを運用する事により社会インフラの状況/状態がリアルタイムで把握出来ると言う事です。前述した様にファイバセンシングは電気センサでは運用環境の制約から使用不能な環境において優位性があり、想定されている環境としては、高磁場環境における温度測定、水中における長距離測定、地中における長距離測定、本質防爆が求められるガス検知、高放射線下における測定、高電気ノイズ下の測定等です。例えば、エネルギー源の多様化が叫ばれている昨今、水素エネルギーの製造、貯蔵、運搬時のモニタリングは危険検知の観点から重要です。また、燃料電池の温度測定も同様と考えて良いでしょう。

センサネットワーク自体はデータネットワーク全体のサブセットであり、エッジネットワークの一つです。従って、センサネットワークの冗長性、またアップリンクでのデータネットワークとの結合などもセンサシステムの計画時に考慮する必要が有ります。特に冗長性はコストと脆弱性低減とのトレードオフであり、設計方針の議論によるところです。実際の構造物ヘルスモニタリングにおけるセンサネットワークは、異なる方式のセンサネットワークを組み合わせ、冗長性などの向上に配慮して設計運用がなされています。

防災減災に向けて

今後は、防災減災と言う社会的要求とそれに答えるセンサーネットワークの技術革新が進み、より高度な防災減災システムの構築運用が行われると思います。その中でファイバーセンシングの優位性が生かせる領域ではこの製品技術が多用される可能性が高いと思われます。

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