2014/10/07 業界コラム 櫻井 栄男 CdTe検出器がもたらす革新的な歯科エックス線撮影装置 株式会社 アクシオン・ジャパン 代表取締役 櫻井 栄男 ...もっと見る 小柴先生のノーベル賞獲得で話題になったように、JAXA など多くの研究機関で、微細な宇宙線をキャッチするための研究が進められています。その中でも注目されているのは、先のコラムでご紹介のあった静岡大学電子工学研究所の青木先生や株式会社 ANSeeN の小池社長様が研究されている CdTe(カドミウムテルライド)半導体で、この素材を用いた検出器はエックス線の吸収率が非常に高く、多くの画像情報をもたらすことができることから医療分野や産業分野で幅広い応用展開が期待されています。 1.はじめに【図1】デジタルパノラマ装置 PanoACT ART Plus シリーズ弊社は自社特許である画像処理技術を最大限活用するために CdTe 半導体検出器に着目し長年デジタル技術の研究を進め、歯科用のデジタルパノラマエックス線撮影装置 PanoACT (パノアクト)を開発しました。【図1】本製品は、他社からリリースされている一般製品の特性と全く異なり、CdTe 半導体がもたらす豊富な画像情報をもとに画像の再構成の後に焦点面を自由に変更することが可能であり、日本で初めてパノラマ撮影とデンタル撮影が 1 台で行え、最先端の画像の鮮明さや低被ばく線量を兼ね備えた革新的な装置として歯科業界で話題となっています。 パノラマ画像2.歯科病院で進むデジタル化全国に歯科医院は約 7 万箇所あります。コンビニエンスストアが約 4 万箇所くらいですので、どれだけ歯科医院が多いかびっくりされる方も多いのではないかと思います。歯科医院に行きますと、代表的なエックス線撮影装置として、全顎を撮影するパノラマ装置(初診時や半年毎くらいに撮影して、虫歯が何か所くらいあるか、治療がうまく進んでいるか大まかに見るもの)や部分的に歯牙を撮影するデンタル装置(部分的に撮影して、詳細な診断に利用するもの)の 2 台がレントゲン室にあるのですが、みなさんが通われている歯科医院さんではまだフィルムをご使用ではないでしょうか? 実は日本の歯科医院で使用されている装置のデジタル化はまだ 3 割くらいと言われていますが、フィルムは現像が必要ですし、現像温度やロールの管理が悪いと出力される画像はとても診断に耐えられない場合が多く、更にフィルムの管理でスペースが必要だったり、現像廃液処理が必要であったりして、歯科医にとっては悩みの種でした。国の施策である電子カルテ化も相まって近年エックス線装置のデジタル化が急速に進んでいます。 3.頸椎の影響がないパノラマ画像デジタルで用いるエックス線の検出器には半導体が搭載されていますが、できるだけ吸収効率が高くかつノイズが少ないものが望まれます。その中でも CdTe 検出器はエックス線の吸収効率が非常に高く、パノラマ撮影で用いられる被ばく線量を 1/2 ~ 2/3 に低減してもほぼ同じ画質で映像化できる特性を持っています。また、一般の CCD 検出器のようにエックス線→蛍光→フォトダイオードという仕組みでなく、各画素単位で線量に比例した電気信号に直接変換するためノイズが少なく、各画素のダイナミックレンジは 12 ビットの深さを有しているため、低吸収から高吸収領域まで広いレンジで画像のつぶれが少ないのが特徴です。【図2】の左の画像は今歯科医で撮影、診断されている一般的なパノラマ画像です。全体的に画像にザラツキがありますが、特に真ん中の部分が白くなっています。 これは、どうしても歯を全体的に撮影しようとすると頸椎が映りこんでします影響です。 見て頂けると分かるように、これでは特に前歯の部分の画像がボケて詳細な診断までは難しく、多くの歯科医が画像に対する不満をお持ちです。PanoACT では、従来製品の概念を打ち破り、CdTe 検出器で撮影した膨大なボリュームデータから画像ノイズを除いて見たい部分だけ出力することができるので、【図2】右の画像のように頸椎の影響がなく、骨梁構造が明瞭に描出された鮮明な画像出力ができます。弊社のショールームで画像を先生にお見せするとびっくりされます。 図2左:一般的な装置で撮影したパノラマ画像 図2右:PanoACT で撮影した画像 4.新たな歯科エックス線撮影とその応用高感度、低ノイズで高速応答の CdTe 検出器と独自の画像処理を備えた PanoACT は低被ばく線量でありながら、ノイズの少ないシャープな画像が得られるだけでなく、断層位置や方向を撮影後に調整(画像再構成)できます。前述の通り、従来のパノラマ撮影は標準歯列面における上下の歯列とそれを支える歯槽骨と顎骨を展開表示することで、大まかに歯科疾患の病態を表示するものですが、一方、歯と周囲組織の詳細を観察するときには、デンタル撮影が必要であり、歯科医院のレントゲン室にはパノラマ装置とデンタル装置 2 台あることが一般的です。PanoACT は、検査対象に適した断層域内の焦点面を選択して画像再構成することができるので、パノラマ撮影装置でありながらデンタル撮影も可能で、日本で初めて 1 台でありながら双方の診療報酬の認可を受けた 1 台 2 役の装置ですので、導入医院さんには、技術面だけでなく、省スペース化や低コスト、増収効果についても喜んで頂いております。デンタル撮影に関しては、歯が最も明瞭に描出されている断面位置を自動的に作成するオートフォーカス機能を備えており、短時間で全顎のデンタル撮影( 10 枚法や 14 枚法)のテンプレートを自動的に作成することができます。【図3】 図3:歯牙の軌道や傾きに合せた全顎のデンタル画像をオートフォーカス機能で自動的に 出力できる機能(図は 14 枚法の例)5.低被ばく化の実現(患者様への配慮)図4:PanoACT でパノラマ撮影した場合の被ばく線量PanoACT で膨大なボリュームデータが画像処理できると言うと、その分被ばく線量も多いのではないかと想像される方も多いと思いますが、CdTe 検出器の高感度と低ノイズの効果でとても低い被ばく線量で撮影できます。実際には PanoACT 1 回の撮影と一般の口内デンタル撮影 1 枚分(3cm × 4cm 程度)の被ばく線量がほぼイコールですので、どれだけ PanoACT の被ばく線量が低いかお判り頂けると思います。【図4】患者さんへの被ばく低減の効果や、口の中にフィルムなどを入れなくてもデンタル撮影ができるので、安全面、衛生面でも優れた装置だと言えます。 以上説明させて頂きました通り、CdTe 検出器を応用したデジタルパノラマ撮影装置 PanoACT は従来製品の常識を打ち破り、技術面(鮮明な画像、オートフォーカス機能)、患者さんへの配慮(低被ばく、衛生面)、運用面(パノラマ、デンタル双方の診療報酬)、省スペース化などを実現した世界初の装置になります。本技術は歯科分野だけでなく、産業用の非破壊検査へも応用でき、今後更なる発展が期待できます。弊社では、今後も画像処理を応用した製品開発に取り組み、社会貢献して参りたいと考えております。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社 アクシオン・ジャパン 代表取締役 櫻井 栄男さんのその他の記事 2014/10/07 業界コラム CdTe検出器がもたらす革新的な歯科エックス線撮影装置 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月