球体の滑り摩擦を応用したフリクション・ボール・テクノロジー(摩擦球技術)に基づく免震装置です。「短周期地震動」に有益な「免震」機能と「長周期地震動」に有益な「ブレーキ」機能を自動的に切り替え、理想的な対応をします。

短周期型の巨大地震には「免震」して揺れを伝えない方法が有効です。長周期型の地震動では軽く動くものは「暴走」することが知られており、「免震」よりは「ブレーキ」が有効な対策となります。

今、私たちにできること。それは巨大地震に備えることです。


革新の免震技術 antisismo の紹介動画(約3分)

特長

  • 強震動(短周期地震動)にも、ゆっくり長い揺れ(長周期地震動)にも対応
    アンティシスモは強震動(短周期地震動)だけでなく、長周期地震動に対しても有効で、重量のある機器が暴走を起こすことはありません。
  • 装着が簡単・移動が可能
    アンティシスモは他の多くの方式と比べ低コストで免震が実現でき、装着も容易です。機器の重量の約 1/5 の力で動かせます。
  • 設置のための床工事不要
    アンティシスモはオフィスや病院、学校、公共施設などほとんどの床環境で使用できます。免震したい機器や什器、器具に取り付けたり、汎用の免震台に取り付けたら、後は床に置くだけです。
  • 重量に無関係・メンテ不要
    アンティシスモは荷重に関係なく、免震する機構になっています。1 脚あたり 3.0t の荷重をかけても免震の機能を維持する頑丈なつくりで、メンテナンスは不要です。
  • 床に固定する必要がないため、設置場所を選ばない
    多くの免震装置は専用の受け具・床でないと機能しませんが、アンティシスモは P タイル、タイルカーペット、木質床であればどこでも免震します。

アンティシスモとは

全周期対応免震装置

antisismo(アンティシスモ)とはスペイン語で耐震を意味します。その構造と原理はシンプルです。床に置かれる球(例えばパチンコ玉)は、床がどのように揺れても、床の上で球であり続けます。回転する球の上に乗ることができれば、床の動きとは関係なく玉乗り状態を維持する事ができます。

しかし、それだけではちょっとした力でも動いてしまいますし、長周期地震動では暴走してしまいます。

そこで特許技術に基づく独創的な構造を採用し、免震したい揺れには転がって免震し、転がって欲しくない揺れには「滑り摩擦」を用いて転がらないという理想的な装置を開発しました。これが免震装置アンティシスモです。

国土交通省 建築研究所で行われた実験のご紹介

建築研究所において実施された、重量物のロッキング(振動により左右に交互にカタカタ傾く現象)についての実証実験の様子です。ガスマイクロタービンをモデルとした重約 1t (自重+錘 0.6t)の試験体を用いました。阪神淡路大震災と同じ波形の振動でこれを揺らし、底部にアンティシスモを実装した場合と、実装されていない場合との比較実験を行いました。

その結果、実装されていない場合はかろうじて転倒しない程度の大きなロッキングを起こしました。カタカタという音も大きく、震動台との衝突エネルギーも脅威的なレベルと推測されました(写真右)。一方、アンティシスモを実装した場合は左右に軽く移動(約20cm)するだけで、ロッキングをほとんど起こさない事が実証されました。(写真左)

開発過程で得られた実験データのご紹介

入力応答加速度の比較

国土交通省建築研究所で行った震動実験で得られた加速度と変位(物体のずれ)を示すグラフです。赤い線は震動台自身の揺れ(入力加速度)を表しています。阪神淡路大震災で記録された地震加速度と同じ加速度で震動台を揺らしています。青い線は震動台の上に載せた器物の揺れ(応答加速度)を表しています。いずれも左側の縦軸が加速度の数値を表しています。単位はガル(gal)を用いています。ちなみに横軸は時間(秒)を示します。器物に免震や制震の対処をした場合、「揺らす側」の入力加速度と「揺らされる側」の応答加速度は異なったものになります。免震や制震の性能を評価する指標の一つに、いかに入力加速度を低減できるかがあります。赤い線と青い線を比較するとそれが分かります。緑色の線は入力加速度による器物の位置的なずれの動きを表しています。右側の縦軸がその距離(mm)を示しています。このグラフから見て取れるのは最大 600gal 近い地震加速度に対してantisismo(アンティシスモ)を実装している器物には 200gal を下回る加速度しか伝わっていないということです。つまり地面と器物の間にこの装置を実装することで、巨大な地震の揺れを大きく遮断し器物を守る(免震)ことが実証されました。

変位応答波形

このグラフはガスマイクロタービンのモデルにアンティシスモを実装した場合の、ロッキングによる上下方向及び、横滑りによる水平方向の動きを示しています。赤い線と青い線は底面の両側の辺の浮き上がり距離を示しています。縦軸は左側で単位は mm です。横軸は時間(秒)です。1mm 未満の浮き上がりしか起こしていません。免震装置を装着せずに揺らした場合、ロッキングにより底面の片側が浮く高さは最大で約 120mm で、角度でいえば 10° 以上でした。緑の線はモデルが地面に対して相対的に動いた水平距離を表しています。縦軸は右側で単位は mm です。

重心が比較的高い重量物は転倒すると大変危険ですし、転倒に至らないまでもロッキングによる衝撃で床及び器物の破壊に繋がります。地面に強固に固定した状態では、地震が動く方向と反対側に生じる慣性力のため、巨大な地震では固定部分付近に巨大な剪断力が発生します。その結果、ひどい場合は剪断破壊が生じ倒壊する危険性があります。アンティシスモは水平方向へわずかに滑ってエネルギーを遮断するため、このような力が生じません。

NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業総合開発機構)の「研究開発型ベンチャー技術開発助成事業」に採択され平成21年度・22年度の助成を受けました。

東京都中小企業振興公社 ニューマーケット開拓支援事業支援対象製品(技術)に選ばれました。