2014/10/07 業界コラム 足立 正二 プラント活用が急速に広まる光ファイバ温度分布センサ No.1『絶対に見逃さない!』 プラントでの “HSE+保全” を支える温度監視 横河電機株式会社 技術部長 足立 正二 IA プラットフォーム事業本部 新分野開発セン...もっと見る IA プラットフォーム事業本部 新分野開発センター 光ファイバセンシング部 ビル、橋、高速道路等の社会インフラ、各種プラント、鉄道網、航空機、船舶などに光ファイバを張り巡らせた「光ファイバ神経網」は、これらの健全性診断を可能にし、社会の「安全・安心」と「持続可能」社会の実現に大きく寄与し得る技術として注目されている。 1.はじめに光ファイバセンサは、防爆性(発火する恐れがない)、耐誘導性に優れ、また、従来のポイントセンサにはできない「ブランクエリアのない絶対確実な監視」が実現できる。日本ではプラントの老朽化が進んでおり、火災検知、漏れ検知、設備診断等の “HSE(Health, Safety and Environment )+ 保全” 系の広域温度分布監視に関するニーズが急拡大している。また、監視エリアの広範囲化・長距離化、さらなる高性能化、経済化のニーズも増えてきており、これらに対応できる製品が求められている。 本号では、光ファイバ温度分布センサの特長と製品概要を紹介し、次号で、プラント分野を中心に適用例について紹介する。 2.光ファイバを用いた温度分布センサプラントを最適な状態に保つためには設備の保全が極めて重要である。そのため、各設備には状態を監視するためのセンサが設置され、様々な物理量を測定することによって監視が行われている。 一般に温度の測定には熱電対などの接触式の温度計が用いられるが、これらは特定個所の点測定を行うものであり、広域の温度測定に適用する場合、監視すべき範囲に多数点の温度計を設置する必要がある。そのため監視能力を高めようとした場合、膨大な数のセンサが必要となり非常にコストが高くなってしまい、また、保守・点検上の課題も多い。逆にセンサの点数を減らすと十分な監視能力を得ることが出来なくなる。このような問題点を解決するために、広域温度監視用の低コストでかつ監視機能の高いセンサと監視システムが望まれていた。 光ファイバを利用した温度分布センサは DTS(Distributed Temperature Sensor)と呼ばれ、上記の要求に応え得る技術として導入が進んでいる。センサとなる光ファイバに装置からレーザーパルスを発すると、光ファイバ中のさまざまなところで光が散乱する。この散乱光の中の一つ(後方ラマン散乱光)の散乱強度が光ファイバの温度と相関関係があるため、後方ラマン散乱光の強度を測定することで対象物の場所(位置)ごとの温度が得られる(図1)。これにより、1 本の光ファイバで、「絶対に見逃してはならない」クリティカルな状態監視において「ブランクエリアのない絶対確実な温度監視」が可能になる。 図1.温度分布センサ(DTS)の原理図3.製品概要および強化機能当社製品 DTSX200 は短・中距離測定に対応したもので、最長 6km までの温度分布測定が可能であり、以下のような特長を有する。 生産制御システムとの高い親和性(DCS、PLC や SCADA などによる集中監視システムの構築が容易) 広い動作温度範囲 : -40 ~ +65℃ 小型・軽量 :従来機比 約 1/4 の体積 低消費電力 :10W (DTSX200 単体) 高信頼性(工業計器設計基準に基づく設計・製造)、セキュリティ対応 一方、長距離対応の新製品 DTSX3000 を新たに販売開始した。今回開発した製品は、永年培ってきた光測定技術・光モジュール化技術を駆使し、温度分解能を 20~100 倍(従来比)、測定速度 100 倍以上(従来比)、最長測定距離 50km の世界トップレベルの高性能・高信頼性かつ低価格を実現した。これにより、従来困難であった広範囲、長距離、高精度な温度分布監視システムを経済的に構築できる。DTSX200 と同様な特長以外に DTSX3000 では以下の性能が強化されている。 世界 No.1* の温度分解能(0.03℃/10km/10 分測定)と監視距離(最長 50km) (*当社調べ) 光モジュール化技術等によりシステム価格の低減を実現 長距離用光ファイバ温度分布センサとしては、世界 No.1* の小型・軽量・低消費電力を実現 (*当社調べ) 微少な温度変化を検知(制御)するアプリケーションにも有用 監視距離(10km、16km、30km、50km)に応じた製品ラインナップ 第2図 (a) DTSX200/3000 外観DTSX200 および DTSX3000 のラインナップにより温度分布センサアプリケーションの全領域に対応できる。当社は制御機器メーカーでは唯一光ファイバ温度分布センサを製品化しており、石油・ガスの上流~中流工程における生産性の向上、プラントにおける “HSE+ 保全” のための温度監視により顧客価値の高いソリューションを提供する。図2に DTSX200/3000 の外観および仕様を、図3に測定例を示す。 第2図 (b) DTSX200/3000 仕様第3図 (a) DTSX200 測定例 第3図 (b) DTSX3000 測定例 次回は、プラント分野を中心に適用例について紹介する。 注)DTSX は、横河電機株式会社の登録商標である。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 横河電機株式会社 技術部長 足立 正二さんのその他の記事 2014/11/11 業界コラム プラント活用が急速に広まる光ファイバ温度分布センサ No.2新しい温度監視・生産制御ソリューションを提供 2014/10/07 業界コラム プラント活用が急速に広まる光ファイバ温度分布センサ No.1『絶対に見逃さない!』 プラントでの “HSE+保全” を支える温度監視 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月