2014/11/11 業界コラム 足立 正二 プラント活用が急速に広まる光ファイバ温度分布センサ No.2新しい温度監視・生産制御ソリューションを提供 横河電機株式会社 技術部長 足立 正二 IA プラットフォーム事業本部 新分野開発セン...もっと見る IA プラットフォーム事業本部 新分野開発センター 光ファイバセンシング部 前号では、①光ファイバを用いた温度分布センサはブランクエリアのない絶対確実な温度監視ができるためプラントでの活用が拡大していること、②業界最高クラスの測定距離 50km、高性能・高信頼性かつ低価格を実現した光ファイバ温度分布センサ DTSX3000 のリリースを紹介した。 1.はじめにDTSX3000 は極めて性能が高いため、長距離・広範囲の火災検知や漏れ検知のような用途だけでなく、以下のような対応が可能である。 長距離や多段接続されるような敷設でもブランクエリアのない高精度な温度監視が可能 リアルタイムで高精度測定が必要なプロセスで微細な温度分布測定が可能 制御システムとの連携で高品質、高効率な生産制御ソリューションを提供可能 本号では、この DTSX3000 を長距離・広範囲の火災検知や漏れ検知のような用途だけでなく、高精度な温度分布測定ができることによるプラントでの新しい活用や生産制御への応用を提案する。 2.光ファイバ温度分布センサの新提案2.1 長距離や多段接続されるような敷設でもブランクエリアのない高精度な温度監視が可能光ファイバ温度分布センサは、微小な光信号を測定するため、距離が長い場合や接続による光損失増により性能が劣化し、従来製品の DTSX200 では 6km が測定できる最長であった。DTSX3000 は高出力光増幅器、高感度光モジュールの採用により高ダイナミックレンジを確保し、業界最高クラスの 50km までの温度測定を実現した。DTSX3000 は距離が長い場合や、また、接続損失が大きい場合でも高精度に測定できるため、様々な活用が考えられる(図1)。以下にプラントでの活用例を示す。 図1.光ファイバ温度分布センサのプラント活用例(ⅰ)ベルトコンベアのメンテナンス性向上石炭搬送用コンベアや製紙工場の紙チップ搬送用コンベア等では、火災発生の事例も多く、光ファイバセンサケーブルを敷設することで全範囲にわたって異常発熱や自然発火を早期に発見できるため、光ファイバ温度分布センサが多く使われている。光ファイバセンサケーブルの敷設はベルトコンベアごとに光コネクタで接続される場合があり、それが多数ある場合は接続損失が大きいため高性能な光ファイバ温度分布センサが必要である。多数の光コネクタ接続が可能になることにより、石炭の飛出し等によるケーブル断線が起きた場合でも部分的に交換が可能でありメンテナンス性を向上することができる。 (ⅱ)電力ケーブルの効率的運用電力の需要は年々増加しており、送電系統の効率的運用や信頼度向上が求められている。光ファイバセンサケーブルは電磁誘導の影響を受けないため、電力ケーブルの温度分布測定に最適であり、温度を測定することで熱による絶縁劣化での地絡事故など異常を検知することができる。また、導体温度測定によって許容電流がわかるので、時間帯や季節による負荷変動に対して効率的に送電することができる。電力ケーブルのような長距離を、高精度に測れる DTSX3000 を活用し、さらに生産制御システムと組み合わせることでより高効率な運用が可能である。 (ⅲ)パイプライン事故の未然防止パイプラインからの漏れは物質によって環境や人的被害、爆発や火災など重大事故になるため、漏れを瞬時に検知し場所をピンポイントで特定できる光ファイバ温度分布センサの活用が広まっている。DTSX3000 は温度を高精度に測定できることにより、漏れだけではなく、パイプライン事故を未然に防止することが可能である。例えば、配管の周り全体の温度分布を測定することで、通常に流れているときの温度分布との違いから偏流や異常がわかり、配管の減肉などを未然に防止することができる。また、配管の詰まりも重大事故につながるため、光ファイバセンサケーブルを配管内下部に敷設し堆積物がたまるなどした場合、配管を通るガスや液体と比べ温度の違いを監視することで、詰まりの兆候を検知できる。 2.2 リアルタイムで高精度測定が必要なプロセスで微細な温度分布測定が可能DTSX3000 は、光ファイバ温度分布センサ専用に開発した高度デジタル信号処理の採用により、高精度で高速な温度測定を実現した。DTSX3000 は、10km 未満では温度分解能が非常に高いため(図2)、プラント生産設備の運転監視など高性能アプリケーションとして活用できる。一方、従来製品の DTSX200 は、高精度が不要な火災検知や漏れ検知などのアプリケーションに廉価版として活用できる。 図2.DTSX3000 の性能例プロセス産業では触媒槽や乾燥炉など温度を均一化することが品質、生産性で重要であり、高精度で高速な温度測定が必要である。これまでは、温度ムラがないよう熱電対などのポイントセンサを多数使い温度分布の監視が行われている。より高品質、高効率なプロセスのためには、微細な温度分布監視を行うための数多くのポイントセンサが必要であり、コストも膨大で非常に複雑なシステムとなるが、光ファイバ温度分布センサを採用すればシンプルかつ経済的に実現することができる。以下にリアルタイムで高精度測定が可能な DTSX3000 のプラントでの活用例を示す。 (ⅰ)乾燥炉の温度監視図3は、フィルム乾燥炉の温度監視例である。フィルムや紙の乾燥工程では温度を細かく均一化することが品質、生産性で重要であり、光ファイバ温度分布センサは、炉内温度ムラを監視し、熱風の調整に活用することができる。 図3.フィルム乾燥炉の温度監視例(ⅱ)LNGプラントの運転効率向上天然ガスを -160℃ 以下まで冷却し液化する工程では、熱交換器の圧縮機やそれを駆動するためのガスタービンを動かすため膨大なエネルギーが必要である。効率よく安全に運転を行うためには、高精度で微細な温度分布測定が必要である。光ファイバ温度分布センサは、極低温測定では原理的に光のレベルが小さくなるため精度が下がるが、DTSX3000 を適用することで、十分な精度を確保することができる。 (ⅲ)冷蔵倉庫の温度管理庫内の温度を一定にする必要がある大規模冷凍・冷蔵倉庫の場合、荷物や棚の移動により庫内の温度が均一にならない場合があり、精密かつ詳細な温度分布が監視できる光ファイバ温度分布センサは有力なツールになる。同時に部分的な温度異常も容易に検知できる。 (ⅳ)空調システムの省エネルギー近年のデータセンタの需要拡大によるサーバの増設やサーバに対する高負荷に伴い、電源設備や空調設備も大型化し消費電力が増大している。一本の光ファイバをサーバラックやサーバ室に敷設し、熱だまりやラック内の温度分布情報を空調設備にフィードバックさせ緻密に温度制御を行うことで、過剰冷却を防止し空調用電力を削減することができる。 2.3 制御システムとの連携で高品質、高効率な生産制御ソリューションを提供可能当社の光ファイバ温度分布センサは、DCS (Distributed Control System) や SCADA (Supervisory Control And Data Acquisition) などの生産制御システムとの通信機能を備えているので、統合管理・監視が容易に構築できる。図4に当社の DCS と連携したシステム構成例を示す。 SCADA との連携においては、当社が提供する FAST/TOOLS に光ファイバ温度分布センサ専用の機能を開発し、ファイル転送による温度データ転送を実現している。これにより FAST/TOOLS の多様なアプリケーションでの活用ができる。また、ネットワーク生産システム STARDOM や PLC FA-M3 V を用いた中小規模監視システムを構築することもできる。 DTSX3000 はリアルタイムで高精度な温度監視ができるため、オンライン制御により、高品質、高効率な生産制御システムを提供できる。 図4.システム構成例3.まとめ光ファイバ温度分布センサはプラントへの適応性、従来方式ポイントセンサと比較したユーザメリットが非常に高く、広範囲、長距離、フレキシブル、高速で測定抜けのない絶対確実な温度監視システムをシンプルかつ経済的に構築できる。 高精度な温度分布測定を実現したことで、さらにプラントでの新しい活用が広がり、広く HSE (Health, Safety and Environment)+保全ソリューション、生産制御ソリューションを提供していきたい。 注)DTSX、CENTUM VP、FAST/TOOLS、STARDOM、FA-M3 V は横河電機株式会社の商標または登録商標である。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 横河電機株式会社 技術部長 足立 正二さんのその他の記事 2014/11/11 業界コラム プラント活用が急速に広まる光ファイバ温度分布センサ No.2新しい温度監視・生産制御ソリューションを提供 2014/10/07 業界コラム プラント活用が急速に広まる光ファイバ温度分布センサ No.1『絶対に見逃さない!』 プラントでの “HSE+保全” を支える温度監視 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月