2012/09/04 業界コラム 水野 勉 物理現象の図解のすすめ No.2 信州大学工学部 電気電子工学科 教授 水野 勉 工学博士(リニアサーボモータ) 中国・太原理工...もっと見る 工学博士(リニアサーボモータ) 中国・太原理工大学 客員教授 日本AEM学会 論文賞(平成15年(2003年)) 電気学会産業応用部門 部門活動功労賞(平成21年(2009年)) 日本AEM学会 論文賞(平成22年(2010年)) 経歴 昭和33年(1958年)6月 長野県に生まれる 昭和56年(1981年)3月 信州大学電気工学科 卒業 昭和58年(1983年)3月 信州大学大学院 工学系研究科 電気工学専攻修士課程 修了 工学修士 昭和58年(1983年)4月 株式会社アマダ 入社 平成 6年(1994年)3月 工学博士(信州大学) 平成 8年(1996年)4月 信州大学工学部 助手 平成11年(1999年)4月 信州大学工学部 助教授 平成23年(2011年)4月 信州大学工学部 教授 2012年7月号のコラム“大学院生の学会発表”において、当研究室の大学院1年生を例に挙げながらプレゼンテーションの難しさについて指摘した。また、その中で図解の重要性、誰にでも一目瞭然な図を作成することはかなり難しい、ことを述べた。今月号では、「物理現象の図解のすすめ」と題して、私が講義で注力している事柄に触れたいと思う。 回路図電気電子工学科1年生を対象とした“電気電子ゼミナール”は、“ゆとり教育”世代に対応したカリキュラムであり、専門科目への導入的な講義である。 各週を異なる教員が担当しており、私の担当する「レポートにおける図表の作成方法」の中で、「直流電源(電圧 E )に抵抗 R を接続して、E を可変させながら、R に印加される電圧 V と R に流れる電流 I を測定した。回路図を描いてみよう。さらに、表1に示した電圧と電流の実測値に基づいて電流-電圧特性をグラフに描こう。」という課題を“図解の入門編”として出題している。 図1.抵抗に印加される電圧と電流の測定回路図1は測定回路の回答例であり、抵抗などの各部品(装置)を描ける学生は40%程度である。しかし、可変直流電源や電流 I および電圧 V を描ける学生は皆無である。「測定回路の中に電流 I と電圧 V およびこれらの方向を矢印で示す事が重要である。なぜならば、電流-電圧特性の縦軸と横軸の I および V と回路図とを対応させて、見る人が分かりやすいようにする必要がある」と強調している。 Maxwellの方程式電気電子工学科の基幹科目に電気磁気学があり、その中でもMaxwellの方程式は難解で、理解を深めるためには図解が一助となる。4つの方程式からなるMaxwellの方程式のうち、その2つを図解すると図2のようになる。図2(a)は、電流密度Jと磁界の強さHとの関係を示しており、Jの右ねじの方向にHが発生する。また図(b)は、磁束密度Bが時間的に変化すると左ねじの方向に電界の強さEが生ずることを意味している。なお、時間的変化を実線と破線とで表してある。 図2.Maxwellの方程式の図解 表皮効果表皮効果とは、高周波電流が導体を流れると電流密度が導体の表面に近いほど大きく、表面から離れるに従って小さくなる現象のことである。周波数が高くなるほど電流が表面に集中するので、導体の交流抵抗は大きくなる。この表皮効果は、Maxwellの方程式に基づいて導出される微分方程式によって解が得られる。しかし、「2.Maxwellの方程式」を用いて図3に示したように物理現象を図解できて、より深く、かつ、直観的な理解ができる。その概要は以下のとおりである。 図3.導線に生ずる表皮効果の図解 半径 a m の無限に長い導線(領域1:導電率σ、透磁率μ)が空気中(領域2:σ = 0 S/m、μ = μ0 H/m)に置かれている。まず、導線に直流の電界の強さ E’ を印加すると J = σ E の関係から J が一様に生ずる。次に、周波数 f の正弦波の E’ を印加するとMaxwellの方程式に基づいて、J→H の発生→E の発生、となる。E の r(径)方向成分は打ち消しあうので、E と J の両者ともに z(軸)方向成分だけとなる。導線の表面に近い程、H が大きくなるので E も表面に近いほど大きくなる。導体内部の電界の強さは E’ + E であり、中心では小さく、表面に近いほど大きくなる。したがって、導線の中心では J が小さく表面に近いほど大きくなる、表皮効果が生ずる。 図4は、表皮効果によって生ずる電流密度分布の偏りである。直流(DC)電流を流した場合には、平坦な Ez と Jz 分布となる。しかし、交流電流(AC)を流した場合には導線の表面に近いほど Ez と Jz の両者ともに大きくなり、周波数が高くなるほど表皮効果は顕著となる。 図4.表皮効果によって生ずる電流密度の偏り 本コラムでは、電気電子工学を例にとって図解の一例を説明した。図解は、直観的な解釈によって理解が一層深まるばかりでなく、問題・課題が生じた際の解決策の探索にも役立つと考えている。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 信州大学工学部 電気電子工学科 教授 水野 勉さんのその他の記事 2012/11/06 業界コラム ワイヤレス電力伝送 No.3 2012/09/04 業界コラム 物理現象の図解のすすめ No.2 2012/07/10 業界コラム 大学院生の学会発表 No.1 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月