2012/11/06 業界コラム 水野 勉 ワイヤレス電力伝送 No.3 信州大学工学部 電気電子工学科 教授 水野 勉 工学博士(リニアサーボモータ) 中国・太原理工...もっと見る 工学博士(リニアサーボモータ) 中国・太原理工大学 客員教授 日本AEM学会 論文賞(平成15年(2003年)) 電気学会産業応用部門 部門活動功労賞(平成21年(2009年)) 日本AEM学会 論文賞(平成22年(2010年)) 経歴 昭和33年(1958年)6月 長野県に生まれる 昭和56年(1981年)3月 信州大学電気工学科 卒業 昭和58年(1983年)3月 信州大学大学院 工学系研究科 電気工学専攻修士課程 修了 工学修士 昭和58年(1983年)4月 株式会社アマダ 入社 平成 6年(1994年)3月 工学博士(信州大学) 平成 8年(1996年)4月 信州大学工学部 助手 平成11年(1999年)4月 信州大学工学部 助教授 平成23年(2011年)4月 信州大学工学部 教授 今月号で最終回となるので、水野・卜研究室を紹介する。当研究室は、水野と卜助教、および大学院博士課程1名、修士課程13名、卒業研究学生6名、計22名のメンバーで研究開発に取り組んでいる。研究内容は大別して、ワイヤレス電力伝送、リニアモータ・電磁アクチュエータ、電磁センサの3テーマからなり、 4つのグループに分かれて研究を進めている。また、技術者・研究者として必要となる科学技術の修得だけではなく、将来研究リーダとして必要とされる「素養」と「躾」の教育も重視しています。このコラムでは、ワイヤレス電力伝送に的を絞って説明します。 ワイヤレス電力伝送とは?“離れた場所にある機器に電力を送りたい。”これを可能にする技術がワイヤレス電力伝送である。図1にワイヤレス電力伝送装置を示してあり、離れた位置にある2つのコイル間で電力を伝送できる。ワイヤレス電力伝送は、リニアモータ、電動シェーバ、携帯電話などにすでに用いられており、電気自動車や携帯機器への実用化が期待されている。 ワイヤレス電力伝送とは機械的な接点を持たずに非接触で電力を送電するシステムであり、電磁誘導方式、マイクロ波方式および電磁界共振結合方式に大別される。電磁界共振結合方式は伝送距離1mにおいて、効率90%、また伝送距離2mでは効率50%と高効率かつ長距離の伝送できる特徴がある。高効率で伝送を行うためにはコイルのQ値の向上、すなわちコイルの抵抗の低減とインダクタンスの増加が必要である。表皮効果(導線の外周に電流が偏る現象)と近接効果(導線が作る磁界によって、近接した導線に渦電流が生ずる現象)によって抵抗が増加する。表皮効果に起因する抵抗の低減効果を有するリッツ線(細い導線を撚った導線)は、 IH調理器やトランスなどに多用されている。電磁界共振結合を用いたワイヤレス電力伝送では、数MHzの周波数での駆動が有望視されており、交流抵抗を低減させるためには、表皮効果に起因する抵抗だけではなく、特に近接効果に起因する抵抗を抑制する必要がある。 (ワイヤレス電力伝送によってランプが点灯する ように、学生がデモ品も調整している様子)そこで、当研究室では交流抵抗低減のために磁性めっき線(MPW)を検討している。MPWは銅導線(COW)の外周に磁性薄膜をめっきした構造を有しており、近接効果に起因する交流抵抗増加の抑制の効果がある。近接効果に起因する交流抵抗増加の抑制は、銅に比べて透磁率と抵抗率の両者が大きな磁性薄膜内を交流磁界が通過するために、COWと比較して導線内で生ずる渦電流損を低減できることに起因している。MPWを用いることによってよりQ値が向上して高効率で電力伝送することができる。 ワイヤレス電力伝送技術が確立すれば、 家庭から充電コードが消えたり、医療現場や災害現場などに用いるロボットの電池切れがなくなったりと非常に夢のある研究である。大学と企業らが一致団結して、夢のコードレス社会実現に向けて日々研究に励んでいきたいと考えている。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 信州大学工学部 電気電子工学科 教授 水野 勉さんのその他の記事 2012/11/06 業界コラム ワイヤレス電力伝送 No.3 2012/09/04 業界コラム 物理現象の図解のすすめ No.2 2012/07/10 業界コラム 大学院生の学会発表 No.1 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月