新川電機株式会社

藤嶋 正彦

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中国をはじめとして韓国、シンガポール、アメリカ、タイ及びドイツに行く機会にめぐまれ、海外では色々なことに遭遇しました。

特に中国には何度も行ったりきたりして滞在日数1000日を超え、韓国は楽に30回以上は往復した経験から、自分の常識からは想像できなかったことや珍しいことにも出会うことができました。そして、それぞれの国にはそれぞれの習慣、慣わしがありお互いに尊敬すべきことが多々あり、すばらしい技術者も多くいることも知ることができました。

私よりはるかに良い経験をされもっとすばらしい経験をお持ちの諸先輩の方々が多くいらっしゃるのはよく存じていますが、このようなこともあるのだとコーヒーブレイク中の軽い気持ちで聞いていただければと思います。

竣工式と豚の頭とお坊さん

海外で生活していると日本の習慣との違いに驚かされることが多々あります。
日本ではプラントを建設したときに神事での竣工式を行い、参列する自分も何の違和感もありません。逆に当然のことと思います。

しかし、お隣の韓国でプラントの竣工式に出席した時、焼石灰プラントのキルンバーナーのところに豚の頭(顔の部分)がおいてありました。何も知らない自分は何が始まるのかと思い”何これ?”と隣の韓国の技術者に聞いたらそのまま立っていれば良いとの回答でした。そこで、見学者の気分で見ていたら、急に拝礼に参加しろと言われ大慌て。厳粛な気持ちになるどころではなく、隣の韓国の技術者のやることをあたふたと真似て、気がついたら豚の頭に深々と頭を下げていました。

また、タイの竣工式では中央計器室のDCS(Distributed Control System)の傍に台座が設けられ多くのお坊さんが一斉にお経を唱え始められました。日本でお坊さんのお経の意味を聞きとれない自分にとってタイ語(?)のお経は子守唄? しかも、その前の約三週間は深夜まで仕事をし、竣工式の日は朝5時まで働いていた自分にとっては必死にまぶたをあけておくことだけで、厳粛な気持ちになるどころではなく、式次第も思い出せない状態でした。なぜならば竣工式の様子がテレビで放映されていて、そこでいびきをかいて寝るわけにはいきませんでしたから。もっともテレビを見ていた仲間は私が寝るのではないかと面白がって見ていたようですが・・・。

習慣の違いは時々想像を超えることがあります。本来、厳粛な気持ちにならないといけない場面でそれどころではない状態に陥ってしまい、不真面目な参列者となってしまい、あとでひとり”反省”。

出国停止

韓国で1か月毎にProgress Meetingがあるために、煩雑に韓国出張を繰り返していました。福岡空港で飛行機の搭乗手続きを終え、出国窓口に行ってパスポートを出して待っているといきなり出国管理官から“出国させません”と言われた。“えー”と驚き、なぜですかと尋ねると“出入国の印を押す空白がパスポートにないので出国はできない”と言われ大慌て。たしかにパスポートには余白がほとんどなく、出国管理官の言われることは一理ありましたが、こちらも次の日には客先と打ち合わせなければならず、搭乗手続きも終えた後で出国停止になるわけにはいきません。平身低頭してどうにか余白に出国印を押してもらいましたが・・・。

煩雑に海外に行かれる方はご注意を!

果物

タイから帰国するときに出国検査を終え飛行機へ乗るためにゲートに向かっていると800円程度で果物の女王と呼ばれているマンゴスチンを売っていました。

出国手続きが終わった場所で売っているということは日本の検疫に通るのではないかと思い聞くと”もちろん問題ないですよ”との答え。飛行機の中でマンゴスチンを買うと5000円程度することを知っていたのでしめしめと思い家族へのおみやげに買いました。そして福岡空港に着いて荷物検査のときに”果物等はありませんね”と尋ねられたので堂々と”マンゴスチンがありますが、これは出国のときに日本の検疫OKと言っていました”と申告したら、検査官はニヤッと笑い”検疫窓口に行って確認してください”。 ”えっ”と思い検疫窓口に行ったら、”検査は通るでしょうが3ヶ月程度かかりますが、受け取りに来られますか?”との回答。 ”好きにしてください。受け取りにはきません”と回答するしかありませんでした。

海外から果物、動物を持ち帰るときはご注意を!

失踪事件

中国のウルムチでプラントを建設していたときに、我々が滞在していた招待所にウイグル族の舞踊団が来てくれて、交歓会が催されました。踊りの好きな自分は一緒に踊ったりして、和気あいあいの時間を過ごしました。ウイグル族の踊り子たちは青い目、つやのある黒い髪、きめ細かい白い肌、とにかくすばらしい美人で、とてつもなくかわいい子ばかりでそれだけで”ぼー”となってしまいそうでした。

その後、ボイラーの試運転が終わったときに、客先が試運転に関わったS/V(Supervisor)三人とそれぞれの通訳と一緒にトルファン旅行に特別招待してくれました。そのとき宿泊したトルファンのホテルでウイグル族の舞踊団がショーを行っていましたので、踊りの好きな私はさっそく一人で見学にいきました。そして、観客席で楽しく見ていたら、ステージの側で見覚えのある舞踊団の責任者が私を見て手招きするではありませんか。私はその招待にのり、楽屋に行くと先に一緒に踊った踊り子たちが歓迎してくれ、お菓子を食べながらショウーが行われる間、楽屋で楽しい時間を過ごしました。そして、その余韻にひたりながら部屋に帰ると通訳が泣きそうな顔をして待っていました。そして、涙ながらに説教されました。私が失踪したとして、ホテルだけでなくその近辺も探し回ったとのことでした。まさか、舞踊団の楽屋にいるとは思いもしなかったようです。

涙目で怒る通訳を見て、ホテルの中であっても勝手な行動をした自分の行動を猛烈に反省しました。通訳は本当に私のことを心配していました。

海外に行ったときは常に居場所を明確にするのが重要なことです。私の失敗からの教訓です。

火焔山と孫悟空

孫悟空の物語の中で、火焔山の炎を芭蕉扇で消す話が出てきますが、トルファン旅行の夕方、ふと火焔山を見上げると夕日をあびて山全体が真っ赤に燃えているように見えました。短い時間でしたが、それはすばらしい景色で思わず見とれてしまい、そしてすぐに孫悟空の物語を思い出しました。トルファンには二回行く機会があり、一回目にはその景色に遭遇することがなかったのでびっくり、その雄大さ、自然の不思議さを実感し感動しました。

孫悟空の物語を書いた人もこの景色を見て、火焔山が燃えるアイデアが浮かんだのかなと一人勝手に思うほど山が燃えていると感じました。

金魚殺魚事件

あるS/V(Supervisor)が西安の近くの渭河というところのホテルの部屋で金魚をかっていました。金魚は水道水よりも池の自然の水が良いと思い、そのS/Vは時々ホテルの池の水を汲んできては金魚鉢の水を変えていました。池の水に変えると金魚が動き回るので“おーおー、水を変えてやったから嬉しいか”と喜んでいたら、しばらくして金魚が全部死んでしまいました。その後、又、金魚を買ってきて同じく池の水を時々使っていたら、また死んでしまいました。ある日、ホテルの従業員とその話をしたら“ホテルの池には藻が生えるのを防止するため薬剤を入れている”と言われてびっくり。

海外では水に注意を!

におい

ウルムチに10ヶ月超滞在した後、帰国するために北京空港から日本航空の飛行機に乗った時です。搭乗してしばらくするとスチュワーデス(今はC.Aと呼ばなければいけないことは知っていますが、古い人間なのでぴんときませんのでスチュワーデスと呼ばせてください)が新聞をくばっていたので日本の新聞に飢えていた私はすぐに手を出したら、なんと人民日報を渡されました。”えー”と思い、”私日本人ですが”と言ったらスチュワーデスは大慌て。”失礼しました”と言ってすぐに日本の新聞に交換してくれましたが、自分としてはきちんとスーツも着ているし、日本人の顔をしているとひそかに自負していたのにショックでした。しかし、そのスチュワーデスはお詫びのつもりがあったのか知れませんが、その後、搭乗している間、ワインはどんどん持ってくるし、降りるときは残ったワインまでくれたりして・・・サービスは満点でした。
そして自宅に帰ってくつろいでいたら、子供が帰ってきていきなり”なにこの臭い”と言って部屋に入ってきました。そして”あらお父さん帰っていたの”と言われて初めてスチュワーデスが私を中国人に間違えた理由が分かりました。

その後、中国から持ち帰った下着はすべて女房に捨てられてしまいました。