古河電気工業株式会社 情報通信ソリューション統括部門

小川 貴弘

ファイテル製品事業部門アクセスネットワーク部
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ファイテル製品事業部門アクセスネットワーク部
光システム課 課長代理

地象情報(雨量、風速、気温、浸水等の情報)の収集には、電気式のセンサが広く使用されています。これら電気式センサは、電子/電気部品を使って観測を行うため、電源の供給が必要になります。さらに得られた情報を防災対策の拠点へと伝送するために、無線テレメータや光伝送装置等の情報伝送機器を設置する必要があり、それら機器を駆動するための電源装置を設置します。また、電源線や電気信号線の配線に発生する誘導雷サージから機器を守るための保護装置を設置するのが一般的です(図 1)。従来の電気式センサを用いた広域モニタリングシステムでは、モニタリングポイントにこのような付帯設備を設置する必要があるため、施工費を含む導入コストが増加する傾向にあり、また電子/電気部品が屋外(センシングポイント及びその近傍)に設置されるため、落雷や浸水等、災害発生時の環境下での故障率の増大が懸念されています。

電気式センサによる現地構成(例)

図 1 電気式センサで構成した場合

【センサ設置工事内容】

・電源工事

・センサ用光ファイバの分岐

・光伝送装置設置

・センサ設置

センサ本体以外に、設置個所に変換器・伝送装置・

耐雷装置等の付帯設備や電源工事が必要。

システム全体としてコスト高。

古河電工は、このような問題を解決するために、光ファイバを利用した観測システムの開発を行っています。センシングポイントに光ファイバ、光部品等パッシブ部品で構成される光ファイバセンサを用い、観測所及び防災拠点と光ファイバで結ぶことで、観測点に付帯設備を構築する必要のない観測システムを構築しています(図 2)。

光ファイバセンサによる現地構成(例)

図 2 光ファイバセンサで構成した場合

【センサ設置工事内容】

・センサ用ファイバの分岐

・センサ設置

設置個所には光ファイバセンサのみ。

センサ以外の付帯設備は不要なため、システム全体

として高い信頼性を有し、ローコスト

光ファイバセンサ

光ファイバセンサの特徴

光ファイバセンサは、光ファイバ/光カプラ/ FBG /光偏光子/ファラデー素子等の光部品から構成された光回路と機構部品から構成されています。通信用途で布設されている光ファイバ線路を介して、遠方の光源から光を送り込み、戻ってきた光を受光する。その戻り光を解析することで、センサ部の光回路が外部の影響によって起こす特性の変化を検知し、センサ部分で起こった事象を観測しています。

 

電源や電気信号を無中継で長距離伝送することは難しいが、光ファイバは数 km ~ 数十 km の長距離を無中継で伝送することが可能です。センシングポイントには、パッシブ部品で構成されたセンサを設置し、数十 km 離れた観測所に光源(LD)や受光部(PD)といった電源が必要な検出器等を設置します。その間を光ファイバで結ぶことでセンシングポイントに電源不要の災害に強い観測システムを構築することができます。

電気式センサによる屋外設置機器の構成(例)

図 3 電気式センサによる屋外設置機器で構成した場合

電気式センサでは、電源が必要な機器をセンサ近傍に設置しなければならい。

屋外機器が落雷で故障することがある。

光ファイバセンサによる屋外設置機器の構成(例)

図 4 光ファイバセンサによる屋外設置機器で構成した場合

光ファイバセンサでは、電源が必要な機器を数 km ~ 数十 km 離れた箇所に設置できる。

屋外に電子機器が無いので、落雷や水没による故障/停電の影響を回避できる。

次回は、光ファイバセンサの実用例をご紹介いたします。

参考文献

  1. 小川雅英,輿水聡,増井洋介,村山英晶,田畑和文:「鉄道光防災センサ実証試験システムの構築と評価」センサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウム2010年10月
  2. 光ファイバセンシング振興協会:「光ファイバセンサ入門」
  3. 小川雅英,「屋外に電源・電子部品を用いない防災用光ファイバセンサ:月刊OPTRONICS,2014.7 vol33,No.391
  4. 小川雅英,「わかりやすい光ファイバセンサ(N o.2)」:(一社)日本下水道光ファイバ-技術協会,広報専門委員会
  5. 小川雅英,「光ファイバセンサ(ガラスで作る広域防災・構造物の神経網),建設電気技術Vo l.177,2012.3