2016/09/06 業界コラム 小川 貴弘 光ファイバセンサによる防災への提案 その2 古河電気工業株式会社 情報通信ソリューション統括部門 小川 貴弘 ファイテル製品事業部門アクセスネットワーク部 ...もっと見る ファイテル製品事業部門アクセスネットワーク部 光システム課 課長代理 光ファイバの防災への提案 その1 では、光ファイバセンサの利点について説明しました。今回は、光ファイバセンサの実用例を紹介します。 光ファイバセンサの実用例光水位計光ファイバセンサは、地球温暖化等の影響による局地的な豪雨の多発や猛烈な台風の接近という背景から、河川や下水道の増水を監視する水位計測、多量の雨水の流入による道路(アンダーパス)の冠水・浸水検知に利用されています。写真 1 は、下水道革新的技術実証研究(B-DASH プロジェクト)「ICT を活用した浸水対策施設運用支援システム実用化に関する技術実証事業」にて、下水道内に設置した小型光水位計です。 写真 1 小型光水位計設置状況写真 2 小型光水位計センサ仕様(抜粋) 項目 仕様 外形寸法 約W100×H30×L170mm 防水耐圧 IPx8(水深10m(0.1MPa)相当) 筐体材質 ポリプロピレン樹脂 この小型光水位計は、FBG(Fiber Bragg Grating)という技術を用いています。ファイバのコアの部分にブラッグ回折格子を形成したもので、特定の波長の光のみを反射します。反射フィルタとして利用できるほか、波長制御素子、センサ素子等に応用することができます。 FBG によって反射される光の波長は回折格子のパターンによって決定されます。この FBG に温度や外力が加わると光ファイバが膨張や伸縮し、それに伴い回折格子の間隔も変わり、反射する波長も変化する。この特性を活かして歪や温度変化をセンシングすることができます。光水位計は FBG をダイアフラムに貼り付け、水圧によって FBG を伸縮させその水圧による波長シフト量を遠隔地から測定し、水位に換算しています(図 1)。 図 1 光水位計の測定原理光雨量計光雨量計の計測方式は従来の電気式雨量計と同じ転倒升方式(図 2)ですが、転倒升のカウントは光ファイバ近接センサを用いて行います。転倒升に連動した磁石が光ファイバ近接センサを通過するときに反射光を発生させます。反射光は、遠方(光ファイバ雨量計から最大 30km)に設置した光ファイバ雨量計用センサモニタにて反射光を検出し電気接点を出力します(図 3)。 図 2 光ファイバ雨量計の構造図 3 光ファイバ雨量計のシステム構成例この光雨量計に用いている光ファイバ近接センサは、ステンレスのケーシング内には光ファイバ、ファラデー素子、光ファイバを反射するためのミラーが入っています(図 4)。 通常の状態では光ファイバに挿入された光は、ファラデー素子に遮られてしまっていますが、図 5 のように光ファイバ近接センサの先端に磁石が近づくことで、ファラデー素子が磁界の影響を受け光ファイバの挿入光を透過させます。透過した挿入光は、ミラーに反射し戻ります。 図 4 光ファイバ近接センサの構成 図 5 光ファイバ近接センサへ磁石を近づけた場合の状態 光ファイバ雨量計の特徴光ファイバ雨量計の特長として、リアルタイムで雨量を計測できる降雨強度観測システムとしての構築が可能です。近年の気候変動からゲリラ豪雨が頻繁に発生しています。このゲリラ豪雨は瞬間的に激しい雨量を伴います。短時間で変化する降雨量を瞬間的な降雨強度としてリアルタイムに計測、把握することで、迅速な冠水/洪水対応が期待できます。 図 6 降雨強度の表示効果時間雨量が同じでも、瞬間的な雨の強さは異なります。ゲリラ豪雨などの短期的な集中豪雨監視には、雨の強さ、つまり、降雨強度のリアルタイム計測が効果的であり、光ファイバ雨量計の適用により実現します。 光ファイバセンサの設置例図 7、図 8 は光ファイバセンサの設置例になります。 図 7 都市/市街地域道路系への設置 図 8 河川流域増水の監視 まとめ 今回は、代表的な光ファイバセンサの実用例について紹介しました。どちらの光ファイバセンサーもここ数年の気候変動による甚大災害、都市型災害に対して有効なセンサーであることがお分かりいただけたと思います。この光ファイバセンサーをさらに普及させ、防災、減災を実現できる社会を目指していきたいと思います。 最終回は、そのほかの光ファイバセンサについて紹介いたします。 参考文献 光ファイバセンシング振興協会:「光ファイバセンサ入門」 小川雅英,「屋外に電源・電子部品を用いない防災用光ファイバセンサ:月刊OPTRONICS,2014.7 vol33,No.391 小川雅英,「わかりやすい光ファイバセンサ(N o.2)」:(一社)日本下水道光ファイバ-技術協会,広報専門委員会 小川雅英,「光ファイバセンサ(ガラスで作る広域防災・構造物の神経網),建設電気技術Vo l.177,2012.3 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 古河電気工業株式会社 情報通信ソリューション統括部門 小川 貴弘さんのその他の記事 2016/10/04 業界コラム 光ファイバセンサによる防災への提案 その3 2016/09/06 業界コラム 光ファイバセンサによる防災への提案 その2 2016/08/02 業界コラム 光ファイバセンサによる防災への提案 その1 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月