2017/10/03 業界コラム 䕃山 晶久 日本のオフィス環境を考える No.3 – ワークプレイスの動向とそのデザインに向けて – 株式会社 蔭山晶久アーキテクツ 代表取締役 䕃山 晶久 株式会社 蔭山晶久アーキテクツ 代表取締役 A...もっと見る 株式会社 蔭山晶久アーキテクツ 代表取締役 Akihisa Kageyama Architects, Limited. Managing Director / Principal http://www.akik-a.com/ 1969年 兵庫県生まれ 1992年 広島大学卒業 1994年 北海道大学大学院修了 英国を代表する建築家 Richard Rogers によって設立された、Rogers Stirk Harbour + Partners ( https://www.rsh-p.com/ )にて、20 年間勤務後独立、英国の EU 離脱国民投票結果を機に帰国し、蔭山晶久アーキテクツを主宰。 代表作として、VRテクノプラザ(岐阜)、天野製薬研究所(岐阜)、新風館(京都)、南山城小学校(京都)、日テレタワー(東京)、政策研究大学院大学(東京)、Ching-Fu HQ(台北)、Chifley Sq(シドニー)、Lok Wo Sha(香港)、The International Quarter(ロンドン)などを担当。 英国建築家協会(RIBA)より World Wide Award、International Award、オーストラリア建築家協会(AIA)より Sir Arthur G Stephenson Award、The National Award for Commercial Architecture ほか、The Hong Kong National Property Awards(香港)、日本優秀建築選(3件)、公立学校優良施設文部科学大臣奨励賞、グッドデザイン賞(建築・環境部門)、日経ニューオフィス賞(2件)など受賞。 ワークプレイスのトレンドを考えるにあたり、まずベンチマークはどうあるべきかを理解するため、前々回・前回とオフィスの事例を通じて、オフィススペースを取り巻く物理的な条件と、その適正収容人員およびサポートスペースの話をしてきました。 テムズ川の対岸からのオフィス外観 (c) AKIKA*1というのも、日本しか知らないでいると比較対象がないため、問題を問題として認識できないことに陥ります。 私は、幸運にも長らく英国の設計事務所に勤務しておりましたが、日本企業から移った時の衝撃は、未だに忘れられません。ハイテク建築の旗手として知られた建築家の事務所でしたが、建物は、燃料保管庫を改装・増築したものでした。天井はもちろん高く、机のサイズも大きい。製図台とコンピュータを置いたとしても、まだ日本で使っていた机よりも一回り大きいサイズをもう一つ配置できました。日本で劣悪な環境に慣れていた私にとって、クリエーティブなアイデアをつくるために環境を整える努力を怠っていたことを、改めて痛感しました。 日本のワークプレイスは、机の島形レイアウトに代表されるような、前時代的な過密レイアウトが、まだまだ残っているのが現状です。多様化する業務内容を瞬時にまとめ処理するには、1 つのスペースを共有することが最も効果的だといえます。古来より、糧をえるための生産過程を共有することで、コミュニティの結束力を高めていたこともその理由です。 メインストリートからの外観オフィス (c) AKIKA*1私達が設計するにあたり、5 つの重要なポイントがあります。 美しくあること (常に新鮮で、五感を慣れさせない) 機能的であること (動線が可視化して、人の流れを停滞させない) 余裕があること (変化の多様性に対応できるよう余裕を持ち、ジャストフィットではなく、ルーズフィットする空間。必要とならば拡張できる) シンプルであること (飽きのこないデザイン) 遊び心があること (遊び心が、緊張と緩和のバランス維持に最も効果的である) オフィスの内観 1 (c) AKIKA*1設計は、空間をデザインして、提供することだけでは終わりません。提供後も使い手がカスタマイズできるような仕掛け、元々のプログラムが何であったのかを理解できるようにしておかなければなりません。 この 5 つのポイントが、その仕掛けとプログラムを可視化したものなのです。 近年、ワークプレイスをプランニングするにあたり世界的なトレンドは、インタラクティブ(双方向の互換性)を建物に組込むことが主流になってきました。では、どの様にして空間をプランニングしていくのでしょう。 代表的な手法としては、2 つあります。 オフィスの内観 2 (c) AKIKA*11 つ目は、インターコネクション(相互接続)とよばれるものです。干渉空間、例えば透明性の高い吹抜けや階段等により、異なる空間・機能を繋げます。これによって、視線や人の動きが有機的に絡み合い、異なったシナプスが結びつき、創造的なアイデアが生まれることをイメージしています。 2 つ目は、クロスオーバー(重複領域)というものです。 これは、日本の「間」という概念に非常に似ています。時間軸で空間の機能を変え、空間の効率化を図るものです。例えば、単なる階段室にするのではなく、吹抜けの中に大階段を設置し、本来は避難時のルートになりますが、ある時には階段に座ってシアターや講演できるように変容する仕掛けをもたせるものです。 単に余裕を持った机のレイアウトだけでは、意味がありません。オフィスで過ごす時間は、少なくとも 1 日の 1/3 にあたります。通勤時間を除けば、家族や友人と過ごす時間よりも長い時間、拘束されるのです。 よりワークプレイスを充実させ、魅力あるものにすることは、デザインの基本です。業種もしくは建物用途が異なったとしても、根本は変わりません。根拠のない常識にとらわれず、より働きやすい環境を後世のために残していくためにも、この動向を考慮して、デザインを提供し続けたいと思います。 *1:Akihisa Kageyama Architects, Limited (= AKIKA), http://www.akik-a.com/ この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社 蔭山晶久アーキテクツ 代表取締役 䕃山 晶久さんのその他の記事 2017/10/03 業界コラム 日本のオフィス環境を考える No.3 – ワークプレイスの動向とそのデザインに向けて – 2017/09/05 業界コラム 日本のオフィス環境を考える No.2 – 共有スペースの再考〜海外事例を通じて – 2017/08/01 業界コラム 日本のオフィス環境を考える No.1 – 生産効率を上げるための適正な一人あたりの専有面積 – 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月