2018/01/10 業界コラム 吉田 健司 「学び直し経営塾、塾長のつぶやき」 No.1 リカレント教育(学び直し)と生き物としての「経営学」 株式会社 ビット89 代表取締役 学び直しの経営塾「寺子屋カレッジ」 塾長 吉田 健司 株式会社ビット89 代表取締役 http://www.bit...もっと見る 株式会社ビット89 代表取締役 http://www.bit89.co.jp 学び直しの経営塾「寺子屋カレッジ」 塾長 http://www.terakare.com/ 1975年 旭化成株式会社 入社 主に、経営企画部門に従事。 1989年 株式会社ビット89設立 リサーチ、研修セミナー、コンサルティングを柱とした「社外経営企画室」事業を展開。 2010〜2015年 淑徳大学(経営学部)および大学院 教授 経営学関連の講義の他、学部・大学院のゼミ生の卒論・修論指導を担当。 早稲田大学 大学院理工学研究科 工学修士 米国イリノイ大学 経営大学院 MBA取得 私は総合化学会社のビジネスマンとして 40 歳まで勤務した後、中堅・中小企業を支援する「社外経営企画室」業務のベンチャー企業を創業した。そしてご縁があって大学(経営学部)・大学院で教鞭を執ってきた。大学教員という立場で、多くの学生を社会に送り出したが、彼らの中には久々に私のところに訪ねてくる “社会人” がいる。「先生、また大学に戻って授業を受けたくなりました。今だったらあのころと違って、もう少し授業内容が理解でき、今の仕事にも役立てることができると思うので、もっと真剣に受講できます。実に勿体ないことをしました」などと、ボヤキ交じりの相談にやってくるのである。それで私も「そうか。あの時の試験は少し甘すぎたかなと私も反省しているので、今ならもう少し真剣に中身の濃い試験問題を出すのだけどね」と応酬(?)してやると、「試験だけは今でも夢に出てくるので、勘弁してください」と、にわか学習熱も冷め、そそくさと退散してしまうから面白い。 しかし社会人になってから、学び直しへの欲求が高まってくる人が多いのも事実ではなかろうか。経営学の分野について言えば、一般に日本で大学まで進む人は、職務経験なしに高校から大学へとストレートに進む。研究者・教員職を目的としていない限り、大学院へと進むケースは稀有である。これに比べて米国などでは高校を卒業したあと、一旦社会で仕事をし、より高い教育の必要性を感じて大学へ進み、さらに大学卒業後、新たな社会経験を積んだ上で、大学院に進むというケースは珍しくない。私が米国のビジネススクール(イリノイ大学大学院MBAコース)で学んだとき、クラス仲間には大学卒業後にフォードのような企業の工場で働いたあと、より高いキャリアへの道を求めてビジネススクールに入学してくる学生が何人もいた。さらに学部のときの専門が経営学ではなく、機械工学だったり建築学だったり、中には心理学や音楽のような異分野出身の学生もいたことが印象的であった。 25 歳以上の学士課程への入学者の割合(国際比較) 出典:文部科学省「生涯を通じた学習機会・能力開発機会の確保に 向けた大学等における社会人の学び直し」 ※日本の数値は 2016 年 (http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg7/290313/agenda.html) (平成29年3月13日会議資料・資料2) 最近、日本の各大学でもエクステンション講座、リカレント教育講座、またはオープンカレッジといった名称の社会人向け講座も目にするようになり、「学び直し」ニーズのある社会人には歓迎すべき動きである。諸外国と比較すると、社会人学生の比率はまだまだ少ないが、2003 年以降、文部科学省の指導により、専門職大学院の設置が増え、経営系大学院へ進学する社会人も増えてきている。 ここで「国内の経営学系大学院における社会人の学び直し」という調査論文(兵藤郷著、2011、Works Review Vol.6)を紹介しよう。著者によると、社会人の入学目的は、仕事上での客観的な評価向上や処遇改善に関連した動機はそれほど多くなく、どちらかと言えば「仕事経験の論理的整理」や「論理的思考力の向上」のほうが大きな割合を占めているとのこと。本論文ではさらに、学習成果についても詳述している。入学前の役職が部長・課長クラスのようにマネージャー経験が長いほど、上述した「仕事経験の論理的整理」と「論理的思考力の向上」に対する成果が大きかったということである(アンケート結果)。 これは社会人が自らの実務経験に照らして経営面での普遍的な原理原則や現場での課題解決策のヒントを、大学での理論学習の中に見出したい、あるいは確認したいという欲求を満たすことができるということである。また講座開設の大学側にとっても、社会人との交流を通して学問的理論についての実証研究と新たな研究課題の発掘につなげていけるということで、通常の学生への一方的講義からでは得られない大きな特典も魅力となっている。つまり双方にとって、Win-Win 関係の構築が期待されるのである。しかし日本の場合、ここで大きな問題が浮上してくる。それは教える大学側に実務経験のある教員が少なく、社会人である学び直し学生との間で、インタラクティブで本質的なディスカッションや説得力ある回答・解説のできる教員が少ないということである。 さらに先ほど紹介した兵藤氏の論文では、学び直し意欲のある社会人が多いのに対し、実際に経営学系大学院への入学者は、大企業勤務者が多いとのこと。これは学び直したいという社会人の中でも、ある程度の高所得者でないと、高額な入学金・授業料の関係で入学することが難しいのではと結論づけている。 このような日本の現状を鑑みて、私は潜在的な「学び直し」意欲のある社会人(一般庶民)を対象に、昨年 4 月「寺子屋カレッジ」という経営塾を開校した。これは学士、修士のような学位や公的資格を得られるものではないが、誰でもがリーズナブルな料金で、実務に即した「経営学」を気楽に修得できる “学び舎” である。日本企業のうち 99% を占める中小企業で働いている経営幹部・中堅社員だけでなく、商店街などの個人事業主、さらに税理士・会計士、歯科医・医師、教育機関運営幹部、NPO 運営者のような方々に対しても、生きた学問としての「経営学」を学ぶ機会を提供したいと考えている。また、日本全体の経営力底上げに少しでも貢献できれば、というのが究極の願いである。(参考:「寺子屋カレッジ」の HP http://www.terakare.com/ ) 「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ますことは出来ない」 ということわざがあるが、のどが渇くことで、自ら飲みたくなる、とうのは教育分野でも同様である。また飲みたくなるように後押しするような、“教育術” も同時に求められている。教育と訳されている英語の education はラテン語が語源で、e は「外へ」、ducate は「引き出す」、要するに「その人の中にある潜在力を外に引っ張り出してあげる」というのが原義であることも再認識したいものである。 内閣府の「平成 29 年版高齢社会白書」によると、65 歳以上の総人口に占める割合は、27.3%、すなわち 4 人に一人を超えたとのことである。そこで最後に私は、バーナード・ショーの言葉のなかの “遊び” を “学び” に置き換えた名言をご紹介したい。「年をとったから学ばなくなるのではない。学ばなくなるから、年をとるのだ。」 次回は「寺子屋カレッジ」の講座概要をご紹介しましょう。 フジテレビ「NEWS アルファ」で紹介されました!(2017年12月7日放映) http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00378727.html ※現在、動画は配信されていませんが、 コンテンツに関する紹介文をご覧になれます。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社 ビット89 代表取締役 学び直しの経営塾「寺子屋カレッジ」 塾長 吉田 健司さんのその他の記事 2018/03/06 業界コラム 「学び直し経営塾、塾長のつぶやき」 No.3 「経営学」の真髄とイノベーションを求めて 2018/02/06 業界コラム 「学び直し経営塾、塾長のつぶやき」 No.2 「経営学」の学び方とリベラル・アーツ教育の重要性 2018/01/10 業界コラム 「学び直し経営塾、塾長のつぶやき」 No.1 リカレント教育(学び直し)と生き物としての「経営学」 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月