2018/02/06 業界コラム 吉田 健司 「学び直し経営塾、塾長のつぶやき」 No.2 「経営学」の学び方とリベラル・アーツ教育の重要性 株式会社 ビット89 代表取締役 学び直しの経営塾「寺子屋カレッジ」 塾長 吉田 健司 株式会社ビット89 代表取締役 http://www.bit...もっと見る 株式会社ビット89 代表取締役 http://www.bit89.co.jp 学び直しの経営塾「寺子屋カレッジ」 塾長 http://www.terakare.com/ 1975年 旭化成株式会社 入社 主に、経営企画部門に従事。 1989年 株式会社ビット89設立 リサーチ、研修セミナー、コンサルティングを柱とした「社外経営企画室」事業を展開。 2010〜2015年 淑徳大学(経営学部)および大学院 教授 経営学関連の講義の他、学部・大学院のゼミ生の卒論・修論指導を担当。 早稲田大学 大学院理工学研究科 工学修士 米国イリノイ大学 経営大学院 MBA取得 「経営学」と聞くと、一般には大学の経営学部で学ぶ専門科目や、最近では米国生まれの MBA(Master of Business Administration:経営学修士)教育のような学問をイメージされる方が多いのではなかろうか。私自身、大学では理工学部に在籍しながら「マネジメント・サイエンス(経営科学)」を専攻し、また米国ビジネススクール(経営大学院)で MBA 教育を受けてきただけに、従来の「経営学」をそのまま肯定してきたほうである。しかし社会での実務経験(大手化学会社の経営企画室スタッフ業務、経営コンサルティング業務など)と教育分野での経験(大学経営学部の教授職など)を通じて、従来の経営学の取り扱われていない “物足りなさ” を実感するようになった。 さらに度々報道される企業不祥事に接することで、これまでの経営学のあり方や学び方だけでは、現実の企業組織の問題を解決できないのではと疑問視するようになった。 当然のことではあるが、企業等の組織が生き残るためには自組織を中心に考えねばならない。すなわち自組織を “主体” に置いて、いかに有利な事業活動を展開していくかを追い求めていくと、次第に過度な “競争原理” へと突き進む傾向が強くなる。これは短期的には有効であっても中長期的には社会から受け入れられず、結局、持続可能な経営が成り立たなくなるのではなかろうか。多くの企業不祥事は自社利益を優先することから、社会を欺くような非モラル的行動に走った結果とみることもできる。 自社にとっての利益に直接寄与する能動的な経営学を「専門コア科目」とするならば、それだけでは不十分であり、その基盤や背景にある「周辺教養科目」を学ぶことが求められる。すなわち “一般教養” ともいえるリベラル・アーツ(Liberal Arts)教育が不可欠ということである。 具体例を挙げてみよう。昨今、大学の経営学部でも企業の事業展開を反映させて「グローバル経営論」という「専門コア科目」を履修するところが多くなっているが、この講座ではグローバル人材の育成・採用やグローバル販売体制、さらにグローバル資金調達戦略などを中心課題として取り上げている。しかし社会に出て海外事業の実務に携わると、進出国現地の言語だけでなく、その国・地域の文化や習慣、さらには宗教などにもある程度、精通していないと、計画通りに事業を軌道に乗せることができない。したがって、下図の専門コア科目である「グローバル経営論」を支える上に有効なのは、周辺教養科目群のなかの「文化人類学」や「宗教学」であることを理解することになる。 「経営学」の学び方と、専門コア科目・周辺教養科目の関係(作成:吉田健司)ここで宗教学を紹介したので、関連して仏教用語にある「自利利他」という言葉も再認識してみたい。目的を自分の利得にとどめているのが「自利」で、他人が利益を得られるように他を生かしてやるのが「利他」とのこと。重要と思われるポイントを強調するため、敢えて粗っぽい定義をすれば、「専門科目」が「自利」で、「周辺教養科目」が「利他」に該当するような関係にある。 さらにこれまでの「経営学」について再評価すると、即効性が高く理論的に体系化されているので “必要条件” はクリアーしているが、リベラル・アーツ的要素が不足しているので “十分条件” は満たしているとは言い難い。 話は少し反れるが、私は明治時代以降、欧米から導入された理論やスキル等によって体系化された洋式「経営学」(経営術)に、一般教養や道徳観のようなココロの側面を重視した和式「経営学」(経営道)を融合し再構築したものを、新たに進化系「経営学」として提唱したい。これは「フュージョン経営学」と名付けてもよいが、視覚的にイメージしやすいので「あんパン経営学」と命名してみよう。その由来として「あんパン」の歴史に少々お付き合い願いたい。まずパンが日本に伝えられたのは、1543 年ポルトガルから種子島に銃とともに伝来されたときと言われている(パンはポルトガル語)。しかしその後の鎖国やキリシタン弾圧等によってパンは長い間、姿を消してしまった。そして明治に入ったあとの 1869 年、「木村屋総本店」がパンのなかにあんこを入れて明治天皇・皇后に献上してから、「あんパン」を通してパン文化が日本中に広まったとのこと。私が開校した、学び直しの経営塾【寺子屋カレッジ】では、洋の経営術をパンとし、和の経営道をあんことして、和洋折衷型の進化系「経営学」 を『あんパン経営学』と名付けて、講座を開いている。 和洋折衷型の進化系「経営学」⇒『あんパン経営学』これまで「経営学」の学び方について「専門コア科目」だけでなく、リベラル・アーツとしての「周辺教養科目」の重要性を説いてきた。そこで、私は「専門コア科目」のなかの主要 10 科目を選定し、リベラル・アーツ的要素を取り込んだ進化系「経営学」として、『あんパン経営学』を学び直しの経営学としてお薦めしたい。 次号(No.3)は最終回となるが、あらためて「学び直しの経営学」の意義を述べたい。技術進歩などの変化が激しく、100 年人生を迎えている今日、企業だけでなく、自治体や NPO などの組織運営において、スキル+マインドの学び直し経営学が果たす役割は高まっていると思われるが、社会構造だけでなく個人の意識が “学び続けていく” ことへの大切さをあまり認識していないような気もする。日本の場合、一般に学校を卒業すると「試験や勉強から解放され、学習過程を終了した」と考えがちであるが、米国の大学・大学院では卒業式のことを “commencement” すなわち「はじまり・スタート」と呼び、大学を社会への助走期間と捉えているのである。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社 ビット89 代表取締役 学び直しの経営塾「寺子屋カレッジ」 塾長 吉田 健司さんのその他の記事 2018/03/06 業界コラム 「学び直し経営塾、塾長のつぶやき」 No.3 「経営学」の真髄とイノベーションを求めて 2018/02/06 業界コラム 「学び直し経営塾、塾長のつぶやき」 No.2 「経営学」の学び方とリベラル・アーツ教育の重要性 2018/01/10 業界コラム 「学び直し経営塾、塾長のつぶやき」 No.1 リカレント教育(学び直し)と生き物としての「経営学」 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月