2018/03/06 業界コラム 古川 怜 ポリマー光ファイバー業界・若手の苦悩と挑戦 No.2 光合成の波長変換と光ファイバーの出会い 電気通信大学 大学院情報理工学研究科、情報理工学域 基盤理工学専攻、Ⅲ類(理工系) 准教授 古川 怜 ワシントン大学 ポスドク 2009/06/08-2010/0...もっと見る ワシントン大学 ポスドク 2009/06/08-2010/02/28 電気通信大学 特任助教 2010/05/01-現在 博士(工学) 慶応義塾大学 2009/03 [専門分野] 複合材料・表界面工学 、構造・機能材料、高分子・繊維材料、高分子化学 [研究課題] 光合成細菌の光捕集系モデルを用いた光電子デバイスの提案 ポリマー光デバイス、エネルギー移動、 天然界の光捕集系に倣ったポリマーデバイスの提案と評価を行っている。 前号からだいぶ話が逸れるが、自然界には未だ人々の興味を引きつける見事な仕組みが存在する。その一つに光合成が挙げられる。幸運にも門外漢であった筆者が、光合成の研究と触れ合う機会に恵まれた。光合成を行う細菌から取り出したタンパク質を人工的に並べなおすという作業であったが、その狙いの一つは生体特有の波長変換機能の再現であった[1]。このタンパク質には色素の特異的な配列がいくつか存在し、それぞれが異なる波長を吸収し、さらにその励起エネルギーが色素の配列間を行儀よく伝達して行くという。図にその仕組みの概略を示す。タンパク質の中で、色素が特異的に配列を作っているのがわかる。日照条件の悪い沼などに生息する細菌が、長波長を利用するためにこのような機能を獲得したらしい。 *図は名古屋工業大学の南後/山下/出羽/近藤研より戴きました。 話は前号に戻り、ポリマー光ファイバー(POF)が中短距離情報媒体として開発された歴史があった。通信媒体としての POF の長所は、容易な光接続および曲げやすさなどの取り扱いのしやすさである。とはいえ、現在は伝送距離や耐久性で優れる石英光ファイバーにおいても、ケーブル本体および周辺機器が進歩し、接続や曲げがクリティカルな課題となるシーンは少ない。また、通信そのもので考えると、無線通信が急速に拡大している。このような状況にあって、新参の POF の研究者はどう立ち振る舞うべきかと考える。POF の利点である可とう性や加工性を生かせる新たな利用シーンはあるのだろうか。 そこで、現在当研究室では、POF のひずみセンサーとしての可能性を探索している。応力に対して顕著なひずみが起きることから、高感度が狙え、太いファイバー径は応力を伝えやすく、敷設しやすさにつながる可能性がある。しかし、光ファイバーひずみセンサーには、石英系ですでに確立された BOTDR や FGB などの技術がある。POF ひずみセンサーに関しては、これらの技術に対する住み分けまたは優位性がない限り、開発の意義は薄い。 そこでまず、シンプルな着想としてコストダウンを考えたときに、旧システムから「光源」と「受光部」が省けたならどうだろうかと考える。手軽に思い当たる代用といえば「環境光」と「視認」である。このペアで機能するセンサーを POF で実現できればありがたいものである。ここで、冒頭に述べた光合成細菌の波長変換の仕組みが大いに参考になる。 最終回となる次回は「『色でわかる』ひずみセンサーを土木現場へ」と題して論ずる。 [1] S. Yajima,et.al., Appl. Phys. Lett., 100 (23) 233701,2012. この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 電気通信大学 大学院情報理工学研究科、情報理工学域 基盤理工学専攻、Ⅲ類(理工系) 准教授 古川 怜さんのその他の記事 2018/05/09 業界コラム ポリマー光ファイバー業界・若手の苦悩と挑戦 No.3 「色でわかる」ひずみセンサーを土木現場へ 2018/03/06 業界コラム ポリマー光ファイバー業界・若手の苦悩と挑戦 No.2 光合成の波長変換と光ファイバーの出会い 2018/02/06 業界コラム ポリマー光ファイバー業界・若手の苦悩と挑戦 No.1 ポリマー光ファイバーのこれまで 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月