2019/10/01 業界コラム 北原 美麗 「美麗流」手書きの良さ( その 2 ) 株式会社美麗書院 代表取締役 書家・美文字講師・書パフォーマー 北原 美麗 書家 1964年和歌山市生まれ 子どもの頃から...もっと見る 書家 1964年和歌山市生まれ 子どもの頃から書道を始め、1991年に師範免許を取得。 書道教室で生徒を教える一方、作品を数多く発表し、受賞歴多数。 ライブ活動やワークショップ、筆耕も精力的にこなす。 2015年、モリサワフォントから美麗流「錦麗行書」がリリース。 ミセスQUEEEN2016ファイナリスト。 今回は美文字の法則についてお話します。 まず文字を綺麗に書く前に「美しい文字」とはどういう文字なのかを説明していきます。 八つの基本点画すべての文字は点と線で出来ており、これを「点画」と呼びます。また線の中には止める線、はねる線、払う線などがあり、これらを纏めて「基本点画」と呼びます。 【永字八法】この基本点画には八つの要素があります。それぞれの決まり事を知れば、組み立てられたときに美しい文字になるのです(以下たて線を縦画、よこ線を横画と表記します)。この八つの要素が全て入っているのが「永」の字で、いわゆる「永字八法」と呼ばれ書の勉強によく使われます。 ①点(側)ソク ②横画(勒)ロク ③縦画(努)ド ④ハネ・左上 (趯 )テキ ⑤払い・右上 (策)サク ⑥払い・左下(掠)リャク ⑦払い・左 (啄)タク ⑧払い・右下( 磔)タク ❶漢字の全ては点からのスタートです。縦画、横画を引く時はまず始めに点を入れる気持ちで紙に筆圧を加えましょう。 ❷やや右上がり(約 6 度)が美しく見える角度といわれています。複数並んだ横画は平行に(平行の原理)、間を等間隔(等分割の原理)にします。 ❸縦画は漢字の柱になることが多いので曲がるとバランスが悪くなります。書き始めの点に力をを加えてその反動で線を引きます。手首を動かさず肘を後ろに引く意識で書いてみましょう。(垂直の原理) ❹縦画からの流れではねるので、途中までは縦画と同じです。はねる所で十分力を加えたら一旦止まり、左上 45 度の方向に抜きます。ここで力を入れないように。 ❺短い線です。まず紙の上でペンを止めてから一気に払います。水のフや氏のレのように繋がる場合と、土へんのように独立している場合があります。 ❻右上から左下への大きな払いです。払う方向を定めて伸びやかに払いましょう。この時払う直前に少しだけ力を加えると線の先が細くならずやや膨らみ、次の線に繋がりやすくなります。 ❼角度が緩やかで短い払いです。点の角度に力を加えたら、一旦軽く浮かせて(同じ場所で上下運動)点に被せるように左方向に力を抜きます。 ❽左下への大きな払いから繋がってきている線なので、書き始めは点を意識せず、気脈を大切にします。はねる所に向かってだんだん筆圧を加えていき(止まった位置で上下運動)最後に力を抜くと自然な右方向にはねる事が出来るはずです。 美文字のルール 1文字を図形に入れる実は全ての文字にはそれぞれ決まっている 6 つの形があります。 特にひらがなは元の漢字を崩したものなので、本来はフォントのような正方形ではなく、丸、三角、四角、縦長四角、横長四角、菱形の 6 つの図形に当てはまるのです。これはひらがなに限らず全ての字に当てはまります。 《 例 》「た」と「に」元の漢字は太と仁です。 図形では両方とも正方形ですが、これが行書から草書にディホルメされていく場合、太の三画目が長く最終画がが点ですの最終画は小さくなります。同じように仁は最終画は長くなるのです。 「わ」と「れ」元の漢字は「和」と「礼」です。 和を崩していくと逆三角形に、礼を崩していくと三角形になります。 【ひらがな】 ◯グループ あ め の む ね ゆ △グループ ふ ろ み ん よ れ ▽グループ な か や せ わ て す と □グループ は た お に 縦長□グループ こ る ほ く け も き ち ら ま ひ え う り し 横長□グループ い つ へ ぬ ◇グループ そ を 【漢字】 ◯グループ 赤 水 派 △グループ 山 友 見 品 ▽グループ 下 可 市 □グループ 国 陸 則 縦長□グループ 月 身 用 負 横長□グループ 十 皿 血 四 ◇グループ 子 千 姿 意 去 ひらがなは大まかにこれらに分類できますが、一つだけの図形ではなく二つの要素が入っているものも複数あります。 あ ⇒ ○+△ 、け ⇒ 縦長+▽ 、ゆ ⇒ ○+▽ む ⇒ □+○ 、よ ⇒ 縦長+△ = 二等辺三角 https://www.shinkawa.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/vol011_no10_col03_111-1.mp4三角形の漢字 (約1分)美文字のルール 2★リズムをつける 生き生きとした文字を書く為には速い部分とゆっくりの部分のメリハリが大切です。 短い線は速めに、長い線や左右の払い、曲線などはゆっくり書きます。 具体的に、例えば「二」を書く時に一画目は 1 秒なら、二画目は倍の2秒にします。 「花」なら七画なので、一画目が 1 秒なら二画目以降は 0.5 秒、0.5 秒、1 秒、1 秒、0.5 秒、2.5 秒となります。 このように速さを考えながら書くことにより、文字にリズムが生まれて活きた文字になるのです。 https://www.shinkawa.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/vol011_no10_col03_13A.mp4花 (約17秒)美文字のルール 3★漢字を単体と複合体に分類する 漢字の中で一つの漢字で成り立っているものを単体、へんとつくりから成り立っているものを複合体といいます。単体で複数の横画がある漢字には主画(しゅかく)と呼ばれる長い線が必要です。 また、複合体には 3 つからなるものや、4 つからなるものもあります。 単体の漢字は中心から左右対称に書き、なおかついずれかの図形に入れていきます。 複合体の漢字はへんとつくりの面積の分割を考えてから図形に入れていきます。分割は画数により 1/2 : 1/2 または 1/3 : 2/3 を決めます。 ★へんとつくりの複合体(6 パターン) ①へんが広い 引 倒 ②つくりが広い 低 行 ③へんが短い 断 神 科 拝 ④つくりをずらす 都 印 ⑤へんが小さい 味 球 ⑥つくりが小さい 細 和 仁 仏 ★上下に重なる複合体(2 パターン) ①上が大きい 肯 暫 習 ②下が大きい 災 思 盟 ★三部分が重なる複合体(4 パターン) ①巾が同じ 謝 術 ②中央が狭い 縦 靴 班 ③中央が広い 掛 倒 ④中央が短い 湖 御 樹 ★へんとつくりは相手の領域を侵さない 複合体では、それぞれが独立した漢字として成り立つので、もとの大きさやバランスで書いてしまいがちですが、 へんは右のラインを揃え、つくりはへんに被らないよう、お互いの領域を侵さないように書く事が大切です。 詩 如 絵 響 美文字のルール 4★たれ がんだれやまだれなど、たれのある字はバランスを取るのが難しいものですが、ポイントは中を右にずらす事です。そうする事により左右対称の外形になりバランスが良くなります。 広 原 圧 展 応 岸 ★同じカタチが並ぶ時 同じカタチが 2 つ並ぶ時は、後から書く方を大きくします。 「小→大」 林 昌 双 多 炎 替 同じカタチが 3 つ並ぶ時は筆順に従って「大→小→中」と大きさもかえます。 「大→小→中」 森 臨 協 4 つ並ぶ時は筆順の早いほうから「小→中→中→大」にします。 「小→中→中→大」綴 傘 vol011_no10_col03_21.jpg 美文字のルール 5 ★日と曰を書き分ける 「日」「曰」は活字にするとほとんど変わりませんが、漢字により用途が変わります。日は平行に、曰は下すぼまりに書きます。口も同様ですが口だけは最終画の接筆が右に出ますので注意して下さい。 ・日グループ(日 目) 音 円 同 因 国 者 見 側 照 ・曰グループ 白 回 田 昌 星 曲 甲 豊 書 ・口グループ 中 向 吉 品 可 若 京 追 照 美文字のルール 6★筆順は正しく書く 美しい文字には筆順がとても重要です。筆順は、その字を書くのにとても都合がよく、バランスのよい形に仕上がるように決められたものです。原則は上から下へ、左から右へ書きます。間違いやすいものに注意して下さい(右、必、飛など)。 https://www.shinkawa.co.jp/assets/img/movie/vol011_no10_col03_24.mp4必・飛(約53秒) この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社美麗書院 代表取締役 書家・美文字講師・書パフォーマー 北原 美麗さんのその他の記事 2019/11/06 業界コラム 「美麗流」手書きの良さ( その 3 ) 2019/10/01 業界コラム 「美麗流」手書きの良さ( その 2 ) 2019/09/03 業界コラム 「美麗流」手書きの良さ( その 1 ) 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月