2011/07/05 業界コラム 松下 修己 人間業には奇跡が起こる? 防衛大学校 名誉教授 松下 修己 (当社技術顧問)...もっと見る (当社技術顧問) 初めに自己紹介を少し。私は日立製作所でサラリーマン生活を21年近く経験しました。48歳のときに大学に転出、17年間の教職(公務員)生活の後、去年定年になりました。趣味はゴルフで、今回はその話です。 海外の友人に宛てた私のXmasカード(教職時代)は毎年ゴルフネタ(サンプルを添付)でした。年末が近づくと今年のゴルフのスコアをまとめ、数式を駆使したり、学校生活のトピックスと無理矢理に結びつけたり、関西系ですから、とにかく少しオチを入れた話に仕上げるのに苦労しました。当時、米国人家庭教師がついていまして、彼女に「これが今年のXmasカードの原稿です」と渡すと、しばらく黙って目を通した後、くすっと笑い「very good」と言われると安心しました。教師は度々変わりましたが、どなたもユーモア好きで、こうすればもっと面白いと味付けが得意でした。完成品は、とても照れくさくて国内では使えないものでした。 サラリーマンのゴルフ日立では技術畑に勤めていました。ご多分に洩れず、先輩サラリーマンからゴルフの手ほどきを受け、そのままのめり込んでいきました。小さいときから学校では野球少年で、親父の指導よろしくトラキチ(阪神ファン)で育ち、後年の子育て時代はお父さんソフトボールに熱心でした。このように一貫して唯一の趣味が球技でしたので、「ゴルフくらいは朝飯前・・・」と熱心に自己流で練習に励みました。1、2年してすぐに平均100前後の腕前にはなりました。 それから先は、ゴルフ経験を積み重ねましたが、成績は一進一退、可もなく不可もなく、競技志向のゴルフを目指していましたが、そのうちに懇親ゴルフに変質してしまいました。当初、「5年でシングル」などと豪語していましたが、目標未達でゴルフの奥深さを思い知りました。 この初心者時代がゴルフバブル最盛期(田中内閣のころ?)でした。練習場にはお客が溢れいつも満席状態、コースへの電話も繋がらないことが通常で予約に四苦八苦、かつ数万円の高いプレー費を払い、貴重な休日をゴルフで過ごす月1ゴルファーでした。バブルがはじけた今日とは隔世の感で、当時は全ゴルファーの気が狂っていたのでしょう。 ところで会社では、年に1度、工場を挙げて2コース貸し切りのゴルフコンペが開かれます。社員、業者など関係者も全員参加可能なオープンコンペです。本当にうまい人がいるもので、優勝者はシングルの人たちです。賞レースでは総じて、理論先行の設計技術者などはいつも蚊帳の外、仕事がきついはずの現場の方はなぜか巧いので、毎回感心していました。 自作ISO原案:ゴルフ成績評価法公務員になってからプレーの機会は減りましたが、成績は少し良くなりました。ゴルフというのは不思議なスポーツで、「技術」よりも「精神」の持ちように可成り左右されます。確かにサラリーマン競争時代のストレスに比べると、私の公務員生活のストレスは皆無に等しいと感じました。その分だけ成績は良くなり、平均90台になりました。 この時代のMyスコアの歴史が図1です。これは2004年度末のXmasカードからの引用です。確かに1993年の転職を境に、データは右下がりになっていることが読み取れます。理系人間の常で、早速データの近似曲線を数学的に求め、シングルになる時を予測し、2005年という答えを導きました。もちろん、今日まで未達成ですが…。 この教職時代には、ISO活動に取り組み磁気軸受部門のワーキンググループ委員長をしていました。ISOでは機械の振動レベルをA/B/C/Dの4クラスに分類し、それは「good/okay/要注意/機械の即停止」に対応しています。世界の友人もISO活動の関係者が主でしたので、ISO規格に倣い、ゴルファーのクラス分け表を同図1右のように提案しました。例えば、ゴルファーの65%がクラスCに属し、「新しいクラブを購入して成績向上を!」ということで、ゴルフギヤーメーカの餌食となる層です。当時の私はクラスBに属し、「自己流では限界ですよ。プロに習え」の25%の層にいました。因に、クラスAのトップ5%層は「ゴルフやり過ぎでしょう。もっと、家族を大切に」、他方のクラスDは「もうゴルフはあきらめて、ほかの趣味をどうぞ」です。 図1. 左:スコアの推移と未来予測 右:自作ISO風ゴルファーの分類そして、奇跡は起こったさて、いよいよ本題で、2008年度末のXmasカードに載せたデータが図2です。 当時はHYBRID車の出始めで、私は燃費を実測していましたので、それとゴルフスコアを比較しました。HYBRID車はカタログ値30km/Lに比べ、赤線で示すように実測値は約17.5km/Lあたりに分布する。これが機械の実力で、ほぼ一定である。 他方、青線で示すゴルフスコアには「急変」が7月中旬に実際に起こりました。この急変は、例の工場を挙げてオープンコンペという一大イベント大会でした。この日は何をやっても巧く行くのです。OB方向に向かったボールは樹に当たってコースの方に戻ってきました。パターは打てばとんとんと入るのです。とうとう、最後にはシングル級のスコアで優勝してしまいました。仔細は添付の英文を読んで下さい。 図2. 2008年におけるゴルフとホンダCIVIC燃費の推移この図2から結論: 「機械は正直、奇跡は起こらない。期待するな。よって、よく考えてしっかり設計せよ。精度よく加工製作せよ」 「人間業には奇跡が起こる。求めよ、さらば与えられん、馬券も然り」 毎年、このような自作小話をXmasに送っていました。あるとき、ウィーン工科大学教授を訪れました。研究棟廊下の掲示板で「最新研究ニュース」を拝見していました。唖然としました、その隣に私のXmasカードが貼ってあったのです。くだんの教授のいたずらで、「毎年、職場では君のカードを楽しみにしているよ」とのことで、本当に赤面しました。 今も、この優勝者の名前は会社の社員食堂のボードに、図3のように、刻まれています。この食堂で食べる定食も、私には格別です。 「日立1勝の次は、海外だ!」 皆さん、知っていますか? USオープンやUKオープンは日本でも予選会に参加できます。勝ち抜けば、石川遼選手と同じコースに立てるのですよ。 友人「戯言では、奇跡は無理ですよ。」 敬白「拝承。ご精読感謝。」 図3. 優勝者ボード@社員食堂とUSオープンの招待待ち この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 防衛大学校 名誉教授 松下 修己さんのその他の記事 2015/04/07 業界コラム 私の ISO 活動の始めと終わり 2011/07/05 業界コラム 人間業には奇跡が起こる? 2011/06/07 業界コラム 貧乏からの脱出 by 「数学」 2011/05/17 業界コラム 「東日本大震災」の経験 タック 川本䕃山 晶久万代 栄一郎中村 昌允久保田 信光藤 昭男内海 政春北原 美麗古川 怜吉田 健司園井 健二坂井 孝博堀田 智哉増本 健大西 徹弥安藤 真安藤 繁宋 欣光小川 貴弘小林 正生小畑 きいち山田 一山田 明岡本 浩和岡田 圭一島本 治川﨑 和寛後藤 一宏斉藤 好晴早川 美由紀杉田 美保子松下 修己松浦 謙一郎森本 吉春櫻井 栄男水野 勉瀧本 孝治熊谷 卓牧 昌次郎生田 幸士田中 正人田畑 和文神吉 博竹内 三保子米山 猛結城 宏信藤嶋 正彦西村 昌浩西田 麻美足立 正二金子 成彦長井 昭二青木 徹Steven D. Glaser 2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月