2023/11/27 業界コラム 白井 泰史 磁気浮上と渦電流式変位センサ 新川電機株式会社 白井 泰史 マーケティング部 ST推進企画...もっと見る マーケティング部 ST推進企画 私たちが身の回りで、普段、何気なく利用している電気製品、機械装置や移動システムには、モータなど回転部や摺動部の接触、摩擦を軽減し長期間、滑らかに維持するためにいろいろな工夫がなされています。その代表的な仕組みの一つが「転がり軸受(ベアリング)」で、回転体の重さを支え、摩擦を少なくするために大小、様々な機械、装置に利用されています。 また最近では磁気を利用して物体を空間に浮かし、接触や摩擦を発生させない磁気浮上技術が実用化され、多くの分野で応用が広がっています。この磁気浮上の制御には当社の渦電流式変位センサが使用されており、それらの代表的な例をご紹介します。 磁気浮上式鉄道日本で初めての磁気浮上による営業路線は、Linimo(リニモ)の愛称で親しまれている愛知高速交通株式会社様の東部丘陵線(藤が丘駅-八草駅間 8.9 km )で、2005年の日本国際博覧会「愛知万博 / 愛・地球博」(略称)では、メインアクセスとして活躍、注目されました。 当時は、動くパビリオンとしても話題を集め、万博終了後も快適な地域の足として活躍し続け、2022年11月には愛・地球博記念公園内に新たにテーマパークが開園されるなど、沿線の発展にも貢献している路線です。(写真1,図1,図2) 写真1. Linimo(リニモ)【出展:愛知高速交通株式会社ウェブサイト】図1. Linimo(リニモ)の距離・時間【出展:愛知高速交通株式会社ウェブサイト】図2. Linimo(リニモ)の路線図【出展:愛知高速交通株式会社ウェブサイト】磁気浮上式鉄道の仕組みとメリットリニモは、3車両1編成による全9編成で運行されています。リニモの各車両下部には左右5組(10台)のU字型電磁石が搭載されており、この電磁石の吸引力によって車両を浮上させると同時にレールに沿った走行案内の役割を果たしています。 電磁石とレールの隙間は、走行中や乗車人数などによって変化するため、各電磁石の上部に取り付けられている渦電流式変位センサによってレールとの距離(ギャップ)を計測し、常に浮上量が約 8 mm に保たれるように電磁石の電流を調整し、吸引力を制御しています。(図3) このようにリニモは、空間に浮上し、リニアモータによる推進走行のため、低速から最高速度、時速約 100 km の走行中でも振動や音が極めて少なく、乗客の快適な乗り心地はもちろん沿線への騒音もなく、地域の住環境にも優しい交通システムです。 また磁気浮上式鉄道は、車両、軌道の劣化要因となる接触、摩耗がなく、振動、衝撃などの外力が極めて小さいため、保守費用が低減できるなどのメリットがあります。 図3. 浮上・推進の仕組み【出展:愛知高速交通株式会社ウェブサイト】磁気浮上制御と渦電流式変位センサリニモの磁気浮上制御には当社の渦電流式変位センサが使用されています。 当社では、磁気浮上式鉄道の開発時より、実用化に向けた鉄道システム、車両の長期間の試験運転を共にし、磁気浮上制御用として求められる渦電流式変位センサの信頼性、安定性、メンテナンス性の向上に取り組んできました。 渦電流式変位センサは、センサ先端部のコイルから発生させた高周波磁界により、ターゲット(導電体)に渦電流を発生させ、距離(ギャップ)によるコイルインピーダンスの変化を利用してターゲットとの距離を非接触で正確に測定します。渦電流式変位センサは、微小な距離変化に対する感度と高速現象への応答性も高く、センサとターゲットの間に水、油、埃のような非導電体が介在しても測定に影響を受けないと言った特徴があります。またリニモに使用されているセンサは、夏季にはレールからの輻射熱による高温環境、冬季には氷点下となる低温環境にさらされ、またセンサへの直接の風雨、積雪などの条件で使用されるため、高い耐環境性能を持たせた磁気浮上鉄道に最適なセンサ仕様としています。 渦電流式変位センサの原理と特徴渦電流式変位センサついて詳しい情報は、『渦電流式変位センサの原理と特徴』で紹介しています。是非、こちらもご覧ください。 磁気軸受磁気軸受は回転軸を電磁石の吸引力で軸受の中で浮上させることにより、非接触で摩擦のないスムーズな回転を得ることができます。 リニモの磁気浮上と同様に、渦電流式変位センサでターゲットとなる回転軸の浮上位置を測定し、磁気軸受内の回転軸の中心が軸受中心と一致し、過大な振動が発生しないように電磁石への電流を制御します。(図4) 図4. 磁気軸受制御、制振制御(イメージ)磁気軸受を使用した回転機械は、振動が少なく高速回転が可能であることから、産業用の遠心圧縮機、遠心分離機などに使用されています。 また、潤滑油を必要としないため、真空、極低温環境など特殊環境で使用されるポンプなどの回転機械にも利用され、クリーンな環境下で小型化も可能であることから医療分野への応用も進んでいます。 渦電流式変位センサへの外部磁界の影響磁気浮上では電磁石の吸引力を利用しますが、渦電流式変位センサもその強い磁界の中で使用されます。また、渦電流式変位センサ自体も、センサから高周波磁界を発生させてターゲットとの距離(ギャップ)を測定しているため、磁界の影響とその対策について紹介します。 まず、当社の渦電流式変位センサ自体は、外部磁界の影響を受けないことが確認されています。 しかしながらターゲット(導電体)が磁性体の場合、磁界の方向(Y)によっては磁化され影響を受ける場合があります。(図5) このような場合にはターゲットを非磁性体材でメッキ処理するか、回転体の場合、測定部に非磁性体のリングを嵌めるなどすることによって磁界の影響を受けなくすることができます。 図5. 渦電流式変位センサの外部磁界の影響 本コラム関連製品 VCシリーズ渦電流式非接触変位・振動計 – 世界トップクラスのセンサ温度特性 VGシリーズ高温用変位計 – センサ耐熱 600 ℃ VI-Cシリーズ工業用変位・振動計 – 本質安全防爆構造 ( Ex ia ⅡC T4 Ga ) VNDシリーズタッチロール式厚さ計 – シート、フィルムの厚さ測定 Quick RIVERNEW [クイック・リバニュー]FA / ラボ用変位計 – 簡単3ステップキャリブレーション FKシリーズ非接触変位・振動トランスデューサ – 回転機械の状態監視用 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 新川電機株式会社 白井 泰史さんのその他の記事 2025/03/11 業界コラム 鉄道の安全と渦電流式変位センサ (その2 地点検知) 2025/02/13 業界コラム 鉄道の安全と渦電流式変位センサ(その1 軌道検測) 2023/11/27 業界コラム 磁気浮上と渦電流式変位センサ 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月