新川電機株式会社

瀧本 孝治

マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室

位置決めや厚さ測定、また回転体の振動測定など、スタティックな変位から高速でダイナミックな挙動計測まで、多くの場面で非接触変位センサが使用されていて、その主な測定方式として渦電流、静電容量、超音波、レーザ等があります。その中でも耐環境性に優れ扱いやすい『渦電流式変位センサ』に関して、その原理と特徴について解説します。

測定原理

変位を測定するセンサには、測定対象物に接触させて測定するものと、測定対象物に接触しない、つまり非接触で測定するものがあります。図1には、それらの変位センサで使われている主な測定原理の種類を示しています。

図1.主な変位センサの種類(測定原理で分類)

それでは初めに、渦電流とは何かということから簡単に説明します。磁界内に金属のような導電体が存在している状態で磁束密度が変化した時、その磁束変化を妨げる方向の磁束を生じるような渦状の誘導電流が発生しますが、これを渦電流と呼びます。なお磁束密度が変化しながら磁束の方向も交互に変化するような交流磁界中に導電体がある場合、表皮効果によりその周波数が高ければ高いほど渦電流は導電体の表面近くに生じるという特性があります。

渦電流式変位センサでは、センサ内部の先端近くにあるコイルに MHz オーダの高周波電流を流すことで、センサトップ周辺に高周波の磁場を発生させ、センサトップ前方のターゲット(通常は金属)表面に高周波の渦電流を発生させます。そこで、渦電流の大きさはターゲットとセンサトップ間の距離(ギャップ)に対応することとなり、変換器から見たセンサ側インピーダンスが距離(ギャップ)に対応することになります。このセンサ側インピーダンスは、 MHz オーダの発振信号をキャリア(搬送波)として振幅変調されて図2の共振回路出力となります。これを検波、増幅、リニアライズすることで、ターゲットとセンサトップ間の距離(ギャップ)に比例した電圧信号を出力します。

図2.渦電流式変位センサの原理

ここでは、測定原理を簡単に説明しましたが、もう少し詳しい説明をご覧になりたい方は「渦電流変位センサの原理と特徴 vol.1」を参照ください。

キャリア信号の励磁方式による違い(自励式と他励式)

先に述べた基本的な測定原理は同じですが、渦電流式変位センサには、センサコイルを発振回路の一部(共振系)として利用する自励式と、一定振幅かつ一定周波数の独立した発振回路からキャリア信号をセンサに供給する他励式があります。当社のFKシリーズは自励式ですが、VCシリーズVGVI-CVNDシリーズなどは他励式です。自励式はセンサとターゲットの距離によりキャリア周波数が変化しますが、他励式では距離に関係なく一定です。これはセンサ同士の近接設置による相互干渉の対策に影響します。相互干渉が発生するようなアプリケーションにおいて他励式の場合には同期またはキャリア周波数を離すという電子回路上での対策が可能ですが、自励式の場合にはセンサ同士を機械的に離して干渉しないようにすることが必要となります。

自励式は他励式に比べ回路が単純で小規模であり、変換器の小型化、耐環境性、防爆構造がとりやすいなどの有利な点があるが、ターゲット材質やケーブル長の標準以外への調整が容易ではないといった側面もあります。そこでAPI 670規格の要求仕様を標準とした石油・石化プラントや発電プラントの大型高速回転機械の軸振動センサ、軸位置センサとして利用されるFKシリーズに自励式が適用されています。FKシリーズは機械状態監視システム(CMS)アプリケーションに特化した製品ということができます。

※ 2024/02/16 誤記修正:誤「FKシリーズに他励式」⇒正「FKシリーズに自励式」

これに対して、CMSに特化しない汎用的なアプリケーション、高精度、高分解能などを求め、また多種多様なターゲット材質での適用や特殊なケーブル長なども求められることのある試験研究用や、様々なニーズやユニークなアプリケーションに対応する変位センサとしてはVCシリーズVGシリーズなどの他励式が使われます。
なお、他励式においてもVI-Cシリーズのように防爆タイプも実現していますが、FKシリーズに比べると大掛かりな構成となっています。

表1.渦電流式変位センサの自励式と他励式の比較

自励式 他励式
キャリア周波数 センサとターゲットの距離により発振周波数が変化 センサとターゲットの距離に関係なく一定
センサ近接による相互干渉対策 電気的には対策不可であり、機械的に離す、またはシステムケーブル長の異なる組合せで対応 キャリア周波数の同期または変更で対策可能
ターゲット材質 SCM440標準ターゲットのみでの校正 各種指定金属で校正可能
回路規模
変換器の大きさ
変換器の耐環境性
(温度、振動)
用途 API 670規格準拠の機械の軸振動、軸位置監視用 試験研究用、特殊用途、多様なアプリケーション
機種(シリーズ名) FK VCVGVI-CVND

* API 670は、アメリカ石油協会(API: American Petroleum Institute)発行の規格で、タイトル “Machinery Protection Systems” として2014年11月発行の5th editionが最新版(2023年10月現在)。軸振動や軸位置、およびその他監視パラメータによる重要な機械の保護監視システムに対する要求事項に関する規格である。

渦電流式変位センサの特徴

渦電流式変位センサには、その測定原理から以下に示すような特徴があります。

  1. 非接触で変位および振動を測定できる
    ターゲットとの距離(ギャップ)に比例した電圧を出力し、直流(静止した状態の距離)から高い周波数まで応答するため、位置決めや微小なギャップなどの変位測定はもちろん、低周波から高周波数までの広帯域の振動測定やダイナミックで複雑な挙動測定にも使用可能である。
  2. ターゲットは導電体(通常は金属)に限られる
    ターゲット表面に渦電流を発生させることで測定が可能となるため、通常ターゲットは良導体である金属に限られる。また、その原理よりターゲットの固有抵抗と透磁率の違い、つまり材質の違いにより特性が変わる。したがって、ターゲット材質に合わせた変換器の校正が必要となる。
  3. ターゲットは磁性材に限らない
    電流が流れる材質であれば測定可能なため、商用周波数などの低周波数で励磁するインダクタンス式の変位計とは異なり、ターゲットとしては鉄鋼材などの磁性体である必要はなく、アルミや銅、チタンなど非磁性の金属、通常非磁性のオーステナイト系ステンレス(SUS304など)でも測定することができる。
  4. センサは耐環境性に優れている
    原理的に電流の流れない絶縁物は感知しないので、油や水がかかっても影響を受けないで測定が可能である。また、センサとターゲット間に絶縁物が介在していてもターゲットまでの距離を測定するため、絶縁物のシートをターゲット金属とセンサで挟むことで絶縁物の厚さを測定することができる。

さて、非接触の変位センサには図1で示したように様々な測定方式がありますが、それぞれの特徴は、それらと比較した時の渦電流方式の優れた点は、といった視点でまとめたものが表2です。

他の測定方式に比べて渦電流方式の特に優れた点としては、耐環境性が挙げられると思います。これは上記の4.に示した原理上の特徴ということになります。 例えば、静電容量方式ではセンサとターゲットの間に水や油など比誘電率が空気と異なるものが存在、またレーザ方式では水や油だけでなくレーザ光を屈折または遮るようなものが存在すると正確に測定できなくなります。また、超音波方式では、媒体となる液体(水など)や気体(空気など)は音波が反射する境界面を持たず、単一で一様でなければなりません。したがって、これらの方式は水や油が飛散するような環境、雪や粉塵で見通せないような環境には適用できませんが、渦電流方式であればそれらの影響を受けることなく変位を測定することができます。また、温度特性にも優れているため、様々な過酷な環境の中でも安定して変位測定を行うことができます。

表2.主な非接触変位センサの測定方式による比較

表2.主な非接触変位センサの測定方式による比較

※ 静電容量式,レーザ式(光学式),超音波式の仕様は,一般的な仕様です。

VCシリーズなど他励式渦電流式変位センサの特長

様々なアプリケーションにおける非接触変位センサとして、ここでは特に他励式のVCシリーズやVGシリーズなどの適用可能性を考える上で、それらの特徴的なポイントを列記しますので、参考にしてください。

  • 優れた温度特性、高い安定性
    VCシリーズのセンサは、温度特性 ±0.015 % of F.S./℃ (典型値)と極めて低く、センサ周囲温度が変化しても安定した計測が可能です。
    ※ 上記は典型値であり、ターゲット材質や測定レンジによって異なります。
  • 各種ターゲット材質への対応
    金属であればどのような材質でも変位(ギャップ)に比例した出力電圧となるよう校正して出荷します。
    ただし、汎用的な材質で在庫しているもの以外の材質の場合、テストピースの支給が必要となります。
  • 特注仕様対応
    アプリケーションに合わせた特殊な仕様や形状のセンサも製作します。
     ⇒詳細は「特殊用途センサ」をご覧ください。
  • 極低温から高温まで対応できるセンサ使用温度
    VCシリーズ系のセンサでは -253 ℃ の極低温用から 200 ℃ までの高温用まで対応可能。またVGシリーズでは、600 ℃ までの高温環境で冷却せずに使用可能な高温用センサも製作可能です。
  • 多様な測定レンジ
    VCシリーズでは、測定レンジ 0.5 mm、 1 mm、 2 mm、 4 mm、 6 mm、 8 mm、 10 mm、 15 mm、 25 mm の9種類を標準ラインアップ。多様なアプリケーションに合わせて選択できます。
  • 防爆対応
    VI-Cシリーズは、VCシリーズと同じセンサ(VSセンサ)を使用して本質安全防爆構造( 日本Ex ia ⅡC T4Ga )を実現。例えば、極低温センサのアプリケーションとして、仕様環境がLH2液体水素( -253 ℃ )やLNG液化天然ガス( -162 ℃ )など防爆性能が必要となる場合にはVI-Cシリーズを適用することができます。

最後に、渦電流式変位センサを利用したアプリケーション集を公開しております。
ご興味ある方はぜひご覧ください。

渦電流式変位センサを利用したアプリケーション集

過去の「渦電流式変位センサの原理と特徴」関連コラム

2010年から2011年にかけて「回転機械の状態監視」に関連して「渦電流式変位センサの原理と特徴」に関するコラムを掲載しました。
当時は、主に滑り軸受で支持された大型高速回転機械の回転軸の振動(軸振動)監視用に適用されるAPI 670規格に準拠した非接触変位センサであるFKシリーズ変位振動トランスデューサにフォーカスした説明をしています。
FKシリーズは自励式であり、産業用大型高速回転機械以外の産業機器の計測と制御、実験や試験研究などに適用される他励式のVCシリーズ等とは励磁方式が異なりますが、基本的な原理は同じですので参考にしていただけると思います。

本コラム関連製品

VCシリーズ

渦電流式非接触変位・振動計
– 世界トップクラスのセンサ温度特性

VGシリーズ

高温用変位計
– センサ耐熱 600 ℃

VI-Cシリーズ

工業用変位・振動計
– 本質安全防爆構造
 ( Ex ia ⅡC T4 Ga )

VNDシリーズ

タッチロール式厚さ計
– シート、フィルムの厚さ測定

Quick RIVERNEW
[クイック・リバニュー]

FA / ラボ用変位計
– 簡単3ステップキャリブレーション

FKシリーズ

非接触変位・振動トランスデューサ
– 回転機械の状態監視用