新川電機株式会社

瀧本 孝治

マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室

今回は、デジタル化された振動モニタや振動解析装置におけるサンプリング周波数、およびそれらに関連する事項に関して説明します。

サンプリング周波数とは?

振動センサで検出した振動波形は、電圧等のアナログの電気信号として振動モニタや振動解析装置に入力されます。従来のアナログ機器であれば、アナログ信号として量的にも時間的にも連続的な変化を示す入力信号をそのまま連続的に処理しているので、サンプリング周波数といった概念はありませんでしたが、現在主流のデジタル機器においては、入力した連続的なアナログ信号を離散的なデジタル信号に変換する必要があります。

今回は、デジタル化された振動モニタや振動解析装置におけるサンプリング周波数、およびそれらに関連する事項に関して説明します。

このアナログ信号からデジタル信号への変換をA/D変換と言いますが、その時のデータをサンプリングする時間間隔を「サンプリング間隔」または「サンプリング周期」(記号:⊿t)(単位:秒)と言い、その逆数が「サンプリング周波数」(記号:fs)(単位:Hz)ということになります。従って、

   fs = 1 / ⊿t

という関係になります。

図10にアナログ信号と、それに対応したデジタル信号のイメージを示していますが、横軸の1目盛がサンプリング周期(⊿t)を、縦軸の1目盛がデジタル信号の最小単位1bitを表しています。ここでアナログ信号は目盛とは関係なく連続した曲線を示すことができますが、デジタル信号は縦軸と横軸の目盛り線の交点しか取ることができません。従って、デジタル信号はレベル的に1bit単位の離散量となりますが、時間的にもサンプリング周期毎の信号であり、1秒間に何個のデータをサンプリングしているかを数えることができ、これがサンプリング周波数(fs)ということになります。

図10.アナログ信号とデジタル信号

つまり「サンプリング周波数」とは、アナログ信号をデジタル信号に変換する際、1秒間に何回データをサンプリングするかということを表したものになります。

このサンプリング周波数は、取り扱える信号の最高周波数(Fmax)を制限する要素となります。サンプリング定理では、サンプリング周波数は最高周波数の2倍以上(fs ≧ 2Fmax)であることが必要条件となっているため、原理的にはサンプリング周波数の1/2を最高周波数として取り扱える(fs = 2Fmax)ということになります。しかし、現実的にはアンチエリアジングフィルタの特性やデジタル処理の都合等から通常のFFTアナライザや振動解析装置では、サンプリング周波数は最高周波数の2.56倍(fs = 2.56Fmax)としているのが一般的です。

例えば、振動解析診断システムinfiSYS RV-200では、サンプリング周波数fsは最大51.2kHzまで設定できますので、スペクトルの最高周波数Fmaxは20kHz(= 51.2 / 2.56)まで取ることができます。勿論、サンプリング周波数fs = 51.2 kHzは上限の設置値ですので、サンプリング周波数fsを下げれば、それに応じてスペクトルの最高周波数Fmaxも下がることになります(Fmax = fs / 2.56)。

なお、スペクトルのライン数は有限ですので、周波数分解能をできるだけ細かく取るためには、必要以上にサンプリング周波数を高くしないことも重要です。また、収集した振動波形信号を周波数解析する際、演算に使用するデータ数はある決まった個数(N個)毎に処理しますが、これをデータ数(N)と呼び、これによりスペクトルラン数が決まります。これらの関係に関しては、また別の機会に説明します。

次回は、サンプリング周期と混同されることがあるデータ更新間隔(データ更新周期)に関して説明する予定です。

本コラム関連製品

infiSYS RV-200

Kenjin

infiSYS 3.0