2013/09/03 業界コラム 瀧本 孝治 分かりにくい用語とその意味(3)軸振動センサのX-Y取付け 新川電機株式会社 瀧本 孝治 マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室 今回は大型回転機械の軸振動計測に適用される非接触変位センサの取付けに関連して、軸振動センサのX-Y取付けに関する規格とX-Y取付けの目的について説明します。 軸振動センサのX-Y取付けに関する規格・規定回転機械の回転軸における測定と評価基準について規定しているISO 7919-1※1(一致規格JIS B 0910※2)およびアメリカ石油協会の機械保護装置に関する要求事項を記載したAPI 670※3規格において、回転軸の振動を測定する軸振動センサの取付けに関してはそれぞれ表3のように規定されています。 ※1. ISO 7919-1:Mechanical vibration of non-reciprocating machines – Measurements on rotating shafts and evaluation criteria – Part 1: General guidelines ※2. JIS B 0910:非往復動機械の機械振動 – 回転軸における測定及び評価基準 – 一般的指針 ※3. API Standard 670 Fourth Edition:Machinery Protection Systems 表3. 軸振動センサの取付けに関する規格 項目 ISO 7919-1 (JIS B 0910) API 670 4th センサ数量 / 測定点 2個1組のセンサを設置する ただし、軸振動についての情報が十分にあれば、1つのセンサを採用してもよい 2個のセンサを取付けなければならない センサ間の取付角度 90°±5° 90°±5° 回転軸とセンサの垂直度 規定なし ±5° 垂直中心線に対する センサ取付角度 規定なし 45°±5° ベアリングと センサ間距離 各軸受又はその近く 75mm以内 いずれの規格でも軸振動センサは1つの測定点に2個のセンサを取付けることが基本となっていますが、より詳細に規定しているAPI 670規格の内容に沿った軸振動センサ取付けイメージを図4に示します。これらのセンサの取付け方向をX方向、Y方向と呼んだり、センサをXセンサ(Xプローブ)、Yセンサ(Yプローブ)と呼ぶことがあり、このようなセンサの取付け方法は一般的にX-Y取付けと呼ばれています。 図4. 軸振動センサの取付図なお、どちらがXセンサで、どちらがYセンサかというとAPI 670では「回転方向に関わらず、マシントレインの駆動側から見てYセンサは垂直中心線より左側、Xセンサは右側」※4と規定されています。 したがって、仮に図4がコンプレッサ駆動用タービンのロータで、このロータ側面図の右側にコンプレッサが連結されたマシントレインがあるとした場合、ロータ断面図で垂直中心線より左側がYセンサ、右側がXセンサということになります。 ※4. Referenced such that when viewed from the driver end of the machine train, the Y (vertical) probe is on the left side of the vertical center, and the X (horizontal) probe is on the right side of the vertical center regardless of the direction of shaft rotation. 軸振動センサのX-Y取付けの目的次に図4のように、2つの軸振動センサを互いに90度の角度を持って設置することによって何が測定できるのか考えてみましょう。 図5に滑り軸受における回転軸(シャフト)の挙動のイメージを示します。軸振動計測では、この回転軸がどのようにどのくらい動き回っているのか、回転軸の動的な挙動を捕らえるということになります。軸振動計測に適用される非接触変位センサは取付金具で軸受に固定され、そのセンサの計測軸方向における回転軸の動き(変位)を捕らえることになります。 図5. 軸受内の回転軸の動的な軌跡図5において、矢印付きの赤い曲線は回転軸中心の動的な軌跡を示すものですが、これがきれいな円形であれば、どの方向から測定しても振動振幅は同じ値となります。しかし、これが楕円となると、測定する方向、つまりセンサの取付け方向によってその振幅値が変わってきます。 実際の機械の軸の挙動(軸中心の動的な軌跡)は円形や楕円だけでなく、更に複雑な動きをすることがあります。したがって、一方向にだけセンサを取付けていた場合には実際の振動の最大振幅を捉えることができず、振動振幅を過小評価してしまう可能性があります。 そこで、図4に示すように2つの軸振動センサを互いに90度の角度を持って設置することで、2つのセンサの計測軸から成る平面上における回転軸の挙動、軸中心の動的な軌跡を捉えることができます。これにより理論的には軸振動の最大振幅を計測することができることになります。 つまり、軸振動センサのX-Y取付けの最大の目的は、軸振動をより正確に計測して、一方向取付けによる振幅値の過小評価の可能性というリスクを避けるということになります。 この他にも一方向取付けではできなかったが、X-Y取付けではできることがいくつかありますが、その当たりのことは次回説明したいと思います。 本コラム関連製品 FKシリーズ この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 新川電機株式会社 瀧本 孝治さんのその他の記事 2024/07/09 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 4 ) 2024/07/02 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 3 ) 2024/06/25 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 2 ) 2024/06/17 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 1 ) 2024/02/14 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2023/11/07 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2014/09/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(13)バランス調整 / 不釣合い修正 2014/08/05 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(12)ハイスポットとヘビースポットの位相角 2014/07/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(11)振動ベクトルとポーラ線図 2014/05/13 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(10)同期サンプリングにおける設定 2014/04/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(9)非同期サンプリングにおける設定 2014/03/11 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(8)同期サンプリングと非同期サンプリング 2014/02/12 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(7)データ収集間隔 / データ保存間隔 2014/01/14 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(6)サンプリング周波数 2013/12/10 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(5)位相基準信号(フェーズマーカ) 2013/10/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること 2013/09/03 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(3)軸振動センサのX-Y取付け 2013/08/06 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(2)ターゲット、システムケーブル長 2013/07/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(1)非接触変位センサの精度に関する用語の意味 2013/06/11 業界コラム 振動解析と診断 vol.11 ~ ポータブル振動解析システムKenjin ~ 2013/05/14 業界コラム 振動解析と診断 vol.10 ~ 振動解析診断システムの紹介(5) ~ 2013/04/09 業界コラム 振動解析と診断 vol.9 ~ 振動解析診断システムの紹介(4) ~ 2013/03/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.8 ~ 振動解析診断システムの紹介(3) ~ 2013/02/13 業界コラム 振動解析と診断 vol.7 ~ 振動解析診断システムの紹介(2) ~ 2013/01/16 業界コラム 振動解析と診断 vol.6 ~ 振動解析診断システムの紹介(1) ~ 2012/09/04 業界コラム 振動解析と診断 vol.5~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(2)~ 2012/08/07 業界コラム 振動解析と診断 vol.4 ~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(1)~ 2012/07/10 業界コラム 振動解析と診断 vol.3 ~ オービットとポーラ線図 ~ 2012/06/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.2 ~ 解析グラフ ~ 2012/05/15 業界コラム 振動解析と診断 vol.1 ~ 振動解析の概要 ~ 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. 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