2012/06/12 業界コラム 瀧本 孝治 振動解析と診断 vol.2 ~ 解析グラフ ~ 新川電機株式会社 瀧本 孝治 マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室 前回説明したように、振動解析システムの解析演算処理部分では各次数の振動振幅値、振動位相角の演算を行うとともに、波形データを基にした周波数解析を行っています。表示ソフトウエアの部分ではこれらのデータを目的にあわせて視覚的に理解しやすくするために各種の解析グラフに加工しています。今回は代表的な解析グラフに関して説明します。 代表的な解析グラフトレンドグラフ図3にトレンドグラフを示します。 トレンドグラフは、横軸を時間、縦軸を測定値としたグラフで、各測定値の時系列変化を見ることができます。 以下の測定値を表示することができます。 回転数、オーバーオール(OA)振幅、GAP、1X振幅 / 位相、2X振幅 / 位相、0.5X振幅 / 位相、NOT 1X振幅、nX1~nX4振幅 / 位相、Smax、fX1、fX2、Σ8X以上、inR、outR、BR 図3. トレンドグラフここで、1Xとは回転同期成分(1次成分)のことで、その1/2の周波数成分(1/2次成分)を0.5Xと呼び、2倍の周波数成分(2次成分)を2Xと呼びます。 また、0.5X、1X、2X以外の次数成分のトレンドデータを収集したい場合には、0.01~10.00までの範囲で任意に次数を設定できるnXという機能を使うことができます。nX1~nX4の4種類の次数を設定することができます。 nXで設定された次数成分の周波数は回転数に応じて変化しますが、回転数に関わりなく、特定の周波数成分の振幅のトレンドデータを収集したい場合には、fXの機能を使うことができます。 Σ8X以上、inR、outR、BRは転がり軸受を対象とした機能で、Σ8X以上は8次成分以上の高域成分の総和を、inRはインナーレースの傷、outRはアウターレースの傷、BRは転動体の傷による特徴周波数成分の振幅を示します。 トレンドグラフでは、これらの測定パラメータを任意に選択して表示できますので、例えば異常振動が発生している時に、OA振幅と同時に各次数成分がどのような変化をしているのか重ねて表示、比較することができますので、この時の機械の状態を診断する手がかりとして使うことができます。 infiSYS RV-200では、通常状態の短期トレンドは、その期間を1日(24時間)~31日間(1ヶ月)の範囲で設定でき、1秒間隔のデータを収集、保存、表示します。 この短期トレンドの期間を過ぎたデータで、特にイベント(警報発生、機械の起動 / 停止等)がない場合には、一定間隔でデータの間引き処理(10分、20分、1時間、2時間から選択)を行って、長期トレンドデータとして最長5年間保存します。 オービット図4. オービット&波形グラフ図4にオービット&波形グラフを示します。 オービットは、相互に90度の角度を持って設置された非接触変位センサ(いわゆるX-Yセンサ取付)による軸振動計測において、X方向、Y方向それぞれのセンサからの信号を合成して、軸心のダイナミックな軌跡とフェーズマーカ(位相基準)の位置と回転方向を表示したもので、リサージュとも呼びます。 アンバランス、ミスアライメント、オイルホワール、ラビング等の各異常に対してそれぞれ特徴的な形状のオービットが現れるため、オービットを観察することで特定の異常状態を推定することができます。 スペクトル図5. スペクトルグラフ図5にスペクトルグラフを示します。 スペクトルグラフはFFT処理した結果を、横軸に周波数または次数をとって表示したものです。 これにより、対象の振動波形がどんな周波数成分、または次数成分をどの程度含んでいるのかが分かりますので、異常振動の解析、診断を行う上で大きな手がかりとなります。 図6に示すウォーターフォールは、スペクトルを時系列に並べて3D表示したものです。これにより、時間変化に対応した周波数成分の変化とその全体像を解析することができます。 図6. ウォーターフォール図ボード線図 / ポーラ線図図7にボード線図を示します。 ボード線図は横軸に回転数を、縦軸に1Xまたは2Xの振幅と位相角を示すグラフを上下に並べたものです。これにより機械のスタートアップ / シャットダウン時の特性を把握することができます。 図7. ボード線図図8に示すポーラ線図はボード線図を極座標に変換したもので、グラフ中心からプロットされたデータまでの距離が振幅を表し、プロットされたデータのグラフ上での角度が位相角を示しています。ポーラ線図は振動ベクトルを表しているため、過去のデータとの比較により容易にバランスの変化を確認することができます。 図8. ポーラ線図また運転中に振動ベクトルが突変した場合、ロータ構成部品の欠損等のバランスの変化を伴うような異常が発生した可能性を示唆することになります。 ポーラ線図の場合、ボード線図と違ってグラフ上にプロットされたデータだけでは回転数情報を見ることができませんが、任意の点をクリックすることで、そのポイントの回転数を表示させることができます。図8は、過去の基準となるスタートアップ時のデータ(ベースデータとして登録したもの)を重ね描きしたものに、回転数の表示をさせたものの例を示しています。 さて、ここまで見てきて、図4のオービットと図8のポーラ線図は一見するとなんか似ているような ? と思われる方がいるかもしれません。もちろん、ポーラ線図とオービットそれぞれの意味と違いを理解されている方は多いと思いますが、次回はこの辺のところについて、初心者の方にも分かりやすいように説明してみたいと思います。 本コラム関連製品 infiSYS RV-200infiSYS 3.0Kenjin この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 新川電機株式会社 瀧本 孝治さんのその他の記事 2024/07/09 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 4 ) 2024/07/02 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 3 ) 2024/06/25 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 2 ) 2024/06/17 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 1 ) 2024/02/14 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2023/11/07 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2014/09/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(13)バランス調整 / 不釣合い修正 2014/08/05 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(12)ハイスポットとヘビースポットの位相角 2014/07/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(11)振動ベクトルとポーラ線図 2014/05/13 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(10)同期サンプリングにおける設定 2014/04/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(9)非同期サンプリングにおける設定 2014/03/11 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(8)同期サンプリングと非同期サンプリング 2014/02/12 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(7)データ収集間隔 / データ保存間隔 2014/01/14 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(6)サンプリング周波数 2013/12/10 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(5)位相基準信号(フェーズマーカ) 2013/10/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること 2013/09/03 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(3)軸振動センサのX-Y取付け 2013/08/06 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(2)ターゲット、システムケーブル長 2013/07/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(1)非接触変位センサの精度に関する用語の意味 2013/06/11 業界コラム 振動解析と診断 vol.11 ~ ポータブル振動解析システムKenjin ~ 2013/05/14 業界コラム 振動解析と診断 vol.10 ~ 振動解析診断システムの紹介(5) ~ 2013/04/09 業界コラム 振動解析と診断 vol.9 ~ 振動解析診断システムの紹介(4) ~ 2013/03/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.8 ~ 振動解析診断システムの紹介(3) ~ 2013/02/13 業界コラム 振動解析と診断 vol.7 ~ 振動解析診断システムの紹介(2) ~ 2013/01/16 業界コラム 振動解析と診断 vol.6 ~ 振動解析診断システムの紹介(1) ~ 2012/09/04 業界コラム 振動解析と診断 vol.5~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(2)~ 2012/08/07 業界コラム 振動解析と診断 vol.4 ~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(1)~ 2012/07/10 業界コラム 振動解析と診断 vol.3 ~ オービットとポーラ線図 ~ 2012/06/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.2 ~ 解析グラフ ~ 2012/05/15 業界コラム 振動解析と診断 vol.1 ~ 振動解析の概要 ~ 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月