2013/10/08 業界コラム 瀧本 孝治 分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること 新川電機株式会社 瀧本 孝治 マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室 今回は、大型回転機械の軸振動計測に適用される非接触変位センサの取付けに関連して、軸振動センサのX-Y取付けと1方向取付けでできること、できないことについて説明します。 軸振動センサのX-Y取付けでできること前回、図4に示すような軸振動センサのX-Y取付けに関する規格・規定と、X-Y取付けの目的に関して説明しましたが、今回もそれに引き続き、軸振動センサのX-Y取付けと1方向取付けでできること、できないことについて説明します。 図4. 軸振動センサの取付図 まず、振動モニタを使った振動監視に関しては、X-Y取付けでも1方向取付けであっても振動値の計測が可能です。ただし、前回述べたように、1方向取付けでは振動振幅を過小評価してしまうリスクがありますが、X-Y取付けではそのリスクを避ける、または最小限に抑えることができます。 次に、infiSYS RV-200等の振動解析システムとの組合せによる、各解析メニューの適用可否に関して考えてみます。 この時、軸振動センサのX-Y取付けか1方向取付けかということだけでなく、同じ回転軸上で検知した位相基準信号があるかないかも含めて考えてみましょう。 表4にX-Y取付けと1方向取付けにおける解析メニューの適用可否の比較を示します。まず、X-Y取付けと1方向取付けの比較が分かりやすい右側2列の位相基準がある場合を見てください。位相基準がある場合、X-Y取付けでは全ての解析メニューに対応していますが、Smaxやオービット、軸軌跡、またフルスペクトル等回転方向が関わるような90度の角度を持って設置された2方向のセンサ信号が演算に必要な解析メニューに関しては1方向取付けでは適用できません。 表4. X-Y取付けと1方向取付けにおける解析メニュー適用可否 解析メニュー項目 位相基準なし 位相基準あり X-Y取付け 1方向取付け X-Y取付け 1方向取付け トレンドグラフ OA振幅 ○ ○ ○ ○ 0.5X振幅/位相 × × ○ ○ 1 X振幅/位相 × × ○ ○ 2 X振幅/位相 × × ○ ○ Not-1X振幅 × × ○ ○ Smax振幅 ○ × ○ × n X振幅/位相 × × ○ ○ fX振幅 ○ ○ ○ ○ バーグラフ ○ ○ ○ ○ スペクトル △ △ ○ ○ 波形グラフ △ △ ○ ○ オービット&波形グラフ △ × ○ × ウォータフォール △ △ ○ ○ ポーラ線図 × × ○ ○ 軸軌跡 ○ × ○ × X-Yグラフ ○ ○ ○ ○ S-Vグラフ × × ○ ○ ボード線図 × × ○ ○ カスケード × × ○ ○ フルスペクトル △ × ○ × フルウォータフォール △ × ○ × フルカスケード × × ○ × キャンベル線図 × × ○ ○ 【記号 ○:適用可能 ×:適用不可 △:一部機能制限あり】 次に表4の中央2列の位相基準なしの場合を見てみます。位相基準なしでは、X-Y取付けであっても多くの解析メニューが適用不可となっていますが、それら適用不可の解析メニューに共通しているのは、回転数と次数・位相解析が含まれるというところです。 また、スペクトル系グラフ※では次数解析ができなくなるものの、横軸を周波数として表示することは可能なため、記号△の「一部機能制限あり」として示しています。 なお、表4の解析メニュー「X-Yグラフ」に関しては、その名称から軸振動センサの「X-Y取付け」と関係がありそうに見えてしまいますが、実は関係ありません。X-Yグラフというのは、直交座標系グラフのX,Y座標軸にそれぞれ任意の測定パラメータを配置して、それぞれのパラメータの相互の関連を見るためのグラフです。例えばX軸を軸受温度、Y軸を振動振幅としてそれらの関係を見ることができます。 解析メニューの適用可否に関しては基本的に表4のようになりますが、もう少し細かく条件を見て行くと表4とは多少異なってくる部分や注意を要する部分もあります。その辺りの詳細は以下の注記をご参照ください。 位相基準なしでも、シミュレート回転数を設定しておき、機械がその回転数で運転している時には、位相角は演算できないが、各次数(0.5X, 1X, 2X, nX, Not-1X)の振幅値は演算、表示できる。また、スペクトル系グラフ※の次数表示も可能である。ただし、いずれも回転数が変化して設定したシミュレート回転数と異なっている時には、これらの各次数の振幅値は正しく演算されない。 対象の軸振動センサが取付けられている回転軸には位相基準はないが、ギアで結合された別の回転軸に位相基準がある場合、位相角の演算はできないものの、各次数(0.5X, 1X, 2X, nX, Not-1X)の振幅値は演算できる。また、スペクトル系グラフ※の次数表示も可能である。この場合には、回転数が変化してもそれに追従して次数演算を行うため、各次数の振幅値は演算、表示できる。 X-Y取付けと1方向取付けの両方に適用可能(○)となっている解析メニューは、基本的にX-Y取付けにおいても1方向ずつの演算となる。 位相基準なしとありの両方に適用可能(○)となっている項目は、振動信号のみ使用し、位相基準信号を使用していないで演算している。ただし、オービットと波形グラフに関しては、それらのプロット上に位相基準マークを小さな白丸で表示し、オービット&波形グラフでは更にその直前の線を消している。これによりオービットと波形グラフにおける1回転分のプロット範囲が分かる。更に、オービットの移動方向(進路)も分かることになる。位相基準なしの場合、この位相基準マークが表示されないため、解析メニューの「波形グラフ」と「オービット&波形グラフ」は記号△の「一部機能制限あり」としている。 ※ スペクトル系グラフとは、スペクトル、ウォータフォール、カスケード、フルスペクトル、フルウォータフォール、フルカスケードの周波数解析グラフを指す。 本コラム関連製品 FKシリーズinfiSYS RV-200KenjininfiSYS 3.0 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 新川電機株式会社 瀧本 孝治さんのその他の記事 2024/07/09 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 4 ) 2024/07/02 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 3 ) 2024/06/25 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 2 ) 2024/06/17 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 1 ) 2024/02/14 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2023/11/07 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2014/09/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(13)バランス調整 / 不釣合い修正 2014/08/05 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(12)ハイスポットとヘビースポットの位相角 2014/07/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(11)振動ベクトルとポーラ線図 2014/05/13 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(10)同期サンプリングにおける設定 2014/04/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(9)非同期サンプリングにおける設定 2014/03/11 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(8)同期サンプリングと非同期サンプリング 2014/02/12 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(7)データ収集間隔 / データ保存間隔 2014/01/14 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(6)サンプリング周波数 2013/12/10 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(5)位相基準信号(フェーズマーカ) 2013/10/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること 2013/09/03 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(3)軸振動センサのX-Y取付け 2013/08/06 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(2)ターゲット、システムケーブル長 2013/07/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(1)非接触変位センサの精度に関する用語の意味 2013/06/11 業界コラム 振動解析と診断 vol.11 ~ ポータブル振動解析システムKenjin ~ 2013/05/14 業界コラム 振動解析と診断 vol.10 ~ 振動解析診断システムの紹介(5) ~ 2013/04/09 業界コラム 振動解析と診断 vol.9 ~ 振動解析診断システムの紹介(4) ~ 2013/03/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.8 ~ 振動解析診断システムの紹介(3) ~ 2013/02/13 業界コラム 振動解析と診断 vol.7 ~ 振動解析診断システムの紹介(2) ~ 2013/01/16 業界コラム 振動解析と診断 vol.6 ~ 振動解析診断システムの紹介(1) ~ 2012/09/04 業界コラム 振動解析と診断 vol.5~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(2)~ 2012/08/07 業界コラム 振動解析と診断 vol.4 ~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(1)~ 2012/07/10 業界コラム 振動解析と診断 vol.3 ~ オービットとポーラ線図 ~ 2012/06/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.2 ~ 解析グラフ ~ 2012/05/15 業界コラム 振動解析と診断 vol.1 ~ 振動解析の概要 ~ 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. 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