新川電機株式会社

瀧本 孝治

マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室

前々回、デジタル処理におけるサンプリング周波数のお話をしましたが、今回はそれに関連して振動解析装置における「同期サンプリング」と「非同期サンプリング」に関して説明します。

同期サンプリングとは?

振動測定対象軸の回転に同期して振動波形データのサンプリングを行うことを同期サンプリングと言います。このように言ってしまうと文字通りで、分かったような?でも具体的によく分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで、もう少し具体的に説明してみます。
同期サンプリングを行うには、回転に同期させるための回転パルスが必要になります。回転パルスは通常、位相基準としても適用するので、1回転当たり1パルスの信号を使います。この回転パルスの周波数、つまり回転数に比例したサンプリング周波数でデータをサンプリングします。
従って、回転数が遅い時はサンプリング周波数も低く、回転数が早くなればそれに比例してサンプリング周波数も高くなります。
振動解析システムの infiSYS RV-200 や Kenjin では同期サンプリングにおける1回転当たりのサンプリング数を 32個、64個、128個から選択して設定できるようになっていますが、1回転当たりのサンプリング数をA個として、回転数を S (rpm) とすると、サンプリング周波数 fs (Hz) は

     fs = A×S/60

となります。

例えば、1回転当たりのサンプリング数を64個として設定した場合、回転数が 600 rpm の時のサンプリング周波数は 640 Hz となります。また、回転数が 3,000 rpm の時のサンプリング周波数は 3.2 kHz となります。
このように同期サンプリングでは、サンプリング周波数が回転数に比例して変化するという特徴があり、振動の次数比分析を精度よく行うのに適しています。
同期サンプリングのイメージを図13に示します。上記で述べたように、回転数に比例してサンプリング周波数が変化する訳ですが、これは図13に示すように、1回転当たり1パルスの回転パルス信号(位相基準信号)の周期に比例してサンプリング周期が変化すると言うことができます。図13では、視覚的に分かりやすくするため、1回転当たりのサンプリング数 A を8個としていますが、図に示すように回転数が変わって、振動波形データの周期が変わっても、1回転当たりのサンプリング数 A は8個のまま変わらないことが分かります。これは、1回転当たりのサンプリング数 A が、例えば 128個であっても同様で、同期サンプリングにおいては、回転数が変わっても常に1回転当たり設定した A個のデータをサンプリングするようになっています。

図13. 同期サンプリングのイメージ

非同期サンプリングとは?

非同期サンプリングでは、回転数とは関係なく決められた一定の周波数をサンプリング周波数としてデータをサンプリングします。従って回転パルスを必要としませんが、回転数が変化している状態での次数解析はできません。また、定格回転数を設定しておき、その回転数で運転している時の次数解析を行う場合でも、サンプリング周波数が回転数には同期していないので、周波数分解能と回転同期周波数とのずれによる不一致から、同期サンプリングに比べて精度が悪くなる可能性があります。
非同期サンプリングでこのような影響をできるだけ小さく押さえるためには、FFTの周波数分解能を極力上げる( ⊿f を小さくする)ことが必要であり、そのためには一つの波形としてサンプリングするデータ数 N をできるだけ多く取る必要があります。