新川電機株式会社

瀧本 孝治

マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室

前回まで振動解析に使う主なグラフやロータキットを用いた異常発生時の解析事例等の説明を行っていますが、今回は、新川電機の振動解析診断システムに関して紹介します。

システム構成

新川電機の振動解析診断システムには、常設型のinfiSYS RV-200とポータブル型のKenjinがあります。
いずれも解析機能、解析グラフの種類および操作性等は同じですが、そのシステム構成が大きく異なっています。

図24にinfiSYS RV-200の典型的なシステム構成例を示しています。図中の左側と真中はすべり軸受で支持された大型回転機械の状態監視システムと解析診断システムを示しています。真中は状態監視モニタが新川電機のVM-5シリーズや他社製モニタの場合であり、この場合には状態監視モニタのバッファ信号をデータ収集装置DAQpodに入力し、DAQpodで解析演算処理を行い、そのデータをイーサネットで上位の解析PCであるinfiSYSビューステーションに伝送することでシステムを構成しています。

また、左側は状態監視モニタが最新型のVM-7シリーズの場合であり、この場合VM-701B振動モニタモジュールに解析ボードを実装することで外部にDAQpodのようなデータ収集装置を設けることなく、VM-7モニタから直接イーサネットでinfiSYSビューステーションに解析データを伝送することができます。

図中の右側は通常、状態監視モニタの設置されていないような転がり軸受で支持された小型回転機械の例であり、加速度センサによりケーシング振動を検知しています。DAQpodにはCA-302などの二線式加速度センサ駆動用の定電流電源出力を持っているため、加速度センサをDAQpodに直接接続することができます。

図24. infiSYS RV-200の典型的なシステム構成例

図24のシステム構成例では、大型回転機械には19インチ・ラックマウントタイプで最大96ch※1のDAQpod AP-2000が、小型回転機械には自立設置型で最大24ch※1のDAQpod DP-2000が設置されていますが、それぞれのDAQpodが大型回転機械専用とか小型回転機械専用ということではなく、それぞれ共通の機能を持っており、設置形態と入力CH数によって選択することができます。

このようにして、状態監視モニタが新川電機製か他社製かに関わりなく、また対象の回転機械もすべり軸受支持の大型回転機械と転がり軸受支持の小型回転機械の混在したシステムを構成することが可能です。
infiSYS RV-200では、1システムで最大480chまでの入力を接続することが可能です。

次に図25にポータブル振動解析システムKenjinのシステム構成を示します。

図25. Kenjinシステム構成例

Kenjinは24ch入力※1のKenjinポータブルデータ収集装置KJ-2000と解析PCであるKenjinポータブルビューステーションのみから構成されるシンプルな構成となっています。また、KJ-2000は入力端子がBNCコネクタとなっているため、既設モニタ前面のBNCコネクタ※2からのバッファ信号を両端BNCの同軸ケーブルで簡単に接続、収集することができます。
したがって、重要な回転機械で状態監視モニタまでは設置されているが、常設の振動解析システムまでは設置されていないような設備において、異常発生時の振動解析実施や、機械のスタートアップ/シャットダウン時のトランジェントデータ収集を行う際、間単に持ち運んですぐにデータ収集を行うことができます。

※1 infiSYS DAQpodおよびKenjin KJ-2000の最大入力点数にはフェーズマーカ(位相基準信号)の入力点数も含みます。なお、振動チャンネル、フェーズマーカチャンネルとも4ch / ボード単位のため、接続可能入力点数の増減は4ch毎となります。

※ 2VM-5シリーズやVM-7シリーズ等のAPI 670規格に準拠して設計された振動モニタでは、モニタ前面のBNCコネクタとモニタ裏面の端子台の両方からバッファ信号が出力されています。そこで、解析システムに接続するバッファ信号は一般的に、infiSYS RV-200のような常設システムの場合には裏面の端子台を、Kenjinのような仮設でデータ収集を行うポータブルシステムの場合には前面のBNCコネクタを使用します。

主な仕様

回転機械振動解析診断システムinfiSYS RV-200の主な仕様を表2~表4に示します。

表2.infiSYS RV-200の主な仕様(データ収集機能)
データ収集機能
測定チャンネル数 最大480CH
データ収集間隔
(定常時)
トレンドデータ:1秒
波形データ:10秒、20秒、30秒、・・・5分、10分
警報時高速データ
収集間隔
トレンドデータ:0.1秒(警報前20秒間、警報後10秒間)
※警報時高速収集はDAQpod適用チャンネルのみ対応
周波数分析ライン数 DAQpod:400、800、1600ライン    VM-7:800ライン
サンプリング周波数 51.2kHz
表3.infiSYS RV-200の主な仕様(データ保存機能)
短期 / 長期データ保存機能
短期データ保存期間 1日間~31日間の範囲で設定可能
短期データ収集間隔 定常時のデータ収集間隔と同じ
長期データ保存期間 1年間~5年間の範囲で設定可能
長期データ間隔 10分、20分、1時間、2時間
警報時データ保存機能
保存データ収集間隔
と保存期間
トレンドデータ
・ 1秒間隔:警報発生前後各24時間のデータ
・ 0.1秒間隔※4:警報前20秒間&警報後10秒間
※4高速収集(0.1秒間隔)はDAQpod適用チャンネルのみ対応

波形データ
・ 10秒~10分間隔※5:警報発生前後各24時間のデータ
※5定常時波形データ収集間隔設定値による

保存件数 計測点あたり100件~1000件保存(保護設定機能有り)
トランジェントデータ保存機能
保存データ範囲 スタートアップ時:指定回転数~指定回転数+指定時間
シャットダウン時:指定回転数~指定回転数
スタートアップとシャットダウン合計で計測点あたり100件~
1000件保存(保護設定機能有り)
保存データ収集間隔 ⊿t設定:トレンド1秒 / 波形10秒(固定)
⊿rpm設定:⊿1rpm~⊿100rpm(1rpmピッチ)
表4.infiSYS RV-200の主な仕様(データ表示 / 解析メニュー)
一覧表 / マシントレイン図
最新値一覧、警報設定一覧、イベント履歴(システム履歴と警報履歴)、
3Dマシントレイン図(回転数、OA振幅、プロセスデータを表示)
短期 / 長期トレンドグラフ
回転数、GAP、OA振幅、0.5X振幅 / 位相、1X振幅 / 位相、2X振幅 / 位相、Not 1X振幅、Smax振幅、任意の次数の振幅 / 位相nX1~nX4(n:0.01ステップ)、特定周波数成分振幅fX1,fX2、Σ8X以上振幅、IR(インナーレース)、OR(アウターレース)、BS(ボールスピン)振幅
標準解析グラフメニュー
バーグラフ、スペクトル、波形グラフ、オービット&波形グラフ、ウォーターフォール、
ポーラ線図、軸軌跡、X-Yグラフ、S-Vグラフ、ボード線図
オプション解析メニュー
カスケード、フルスペクトル、フルウォーターフォール、フルカスケード、キャンベル線図

また、写真1にデータ収集装置 DAQpod AP-2000の外観を、写真2にDP-2000の外観を示します。

写真3にはKenjinポータブルデータ収集装置KJ-2000の外観と現場への持ち運びに便利な専用ケースを示しています。

写真1.DAQpod AP-2000(19インチラックマウントタイプ)外観
写真2.DAQpod DP-2000(24CH Boxタイプ)外観
写真3.Kenjinポータブルデータ収集装置KJ-2000

ポータブル振動解析システムKenjinの場合、測定チャンネル数やデータ収集間隔が異なりますが、データ表示と解析メニューは表4に示すinfiSYS RV-200と同じになります。
Kenjinでは、測定チャンネル数は最大24ch※1、データ収集間隔はトレンドデータ、波形データとも最短で0.1秒間隔※3となります。

※3 入力チャンネル数とスペクトルライン数の設定によって異なります。

次回も引き続きinfiSYS RV-200とKenjinの特長等について説明する予定です。

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