新川電機株式会社 ソリューション本部

宋 欣光

SI部担当部...もっと見る SI部担当部

SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)は、ご存知のように産業制御システムの一種で、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御を行うものです。歴史はすでに50年以上経ちましたが、安価なPCベースのものが出たのは1980年代のようで、現在代表的なパッケージ化されたSCADA製品には、米GE Fanuc社に買収されたIntellution社のiFIX、Wonderware社のInTouchとRockwell AutomationのRSViewなどがあります。これらの製品だけで全世界市場のおよそ50%のシェアを占めているようです。また、上記のような集中的、中・大規模システム向けの製品以外に、扱っているI/O点数が割と少ない、又は分散されているシステム監視用の小型SCADA製品もあり、弊社のUnityBoyがこのカテゴリに入っています。

UnityBoyの誕生

UnityBoy G2

UnityBoyの誕生は約10年前の2001年頃でした。当初のハードウェアは16MBのメモリしかなく、CPUも省電力タイプのSH3を搭載し、全体的な消費電力がわずか3W程度でした。その後、顧客側の多様なニーズに対応するため、性能をアップした二代目の製品UnityBoyG2は2006年8月に市場へ投入しました。さらにハードウェアの進化に伴って性能が強化され、近々開発完了を予定している三代目のUnityBoyがますます顧客の遠隔監視システムに活躍できると期待しています。

導入事例のご紹介

UnityBoyの初期導入事例には、名古屋市に設置され、石油代替エネルギーである天然ガスを利用する車に天然ガスを補給するエコステーションの遠隔監視システムがあります。ほかに、水処理,河川水位監視,自動車メーカ中の製造看板表示システムなどにも展開されています。特に、LNGサテライト基地設備の遠隔監視システムの展開が続く中、各分散拠点のデータをセンターに統合し、センター側のエンタープライズアプリケーションと連動するようなものもありました。

UnityBoyはI/O信号を直接入力できるインターフェースを持たない構成となっています。そこにはいくつかの理由があります。 まず、UnityBoyのハードウェア依存要素を少なくすることです。もう一つは、製品開発周期を短縮し、開発コストを抑えることです。 この構成で、UnityBoyが速いペースでハードウェアの進化に追いかけ、早い段階で顧客にもっとよい機能や性能を提供できるようになります。また、この構成により、UnityBoyで監視システムを構築するには、PLCやリモートI/Oなどの機器を介して行い、これらの機器との通信ドライバが必須となります。現在、弊社がすでに対応している十数種類の機器ドライバを標準品として、UnityBoyと一緒に無償提供しております。また、UnityBoy一台で複数異種のPLCなどと同時通信できるほか、最大8台500点まで横河電機製FA-M3、又は三菱電機製MELSEC-A、Q PLCと同時通信ドライバや、最近の動向として「エコ」関連の省エネ用エネルギー監視システムの引き合いが増えている中、電力計のような装置からデータ収集ドライバも用意しました。

高汎用性、素からのHMIのWEB対応機能

画面表示例

UnityBoyのHMI(Human-Machine Interface)の機能について少し説明したいところがあります。UnityBoyが誕生した頃、SCADA分野の数多くの顧客がインターネットに対して保守的な態度を取っていたため、導入時の説得には色々時間が掛かりましたが、10年後の今、インターネット対応の製品が日常生活環境の中に溢れ、インターネットのない環境での生活や仕事はもはや考えられないようになっています。

更に、人々がモバイル機器(携帯電話、iPhoneのようなスマートフォンとPDAなど)のHMIを利用し、設備や機器の遠隔監視又は操作もやるようになってきました。言うまでもなく、Web対応のHMIの最大利点は利用の便利さだと言えます。

従来のSCADAのHMIを利用するには、特別なソフトを監視用のPCにインストールする必要があります。ほかのPCを利用すれば、別途ライセンスを購入し、そこにも専用ソフトをいれなければなりません。それと対照にWebベースのHMIなら、監視する人がどこに行っても、どのPCを使っても、ブラウザさえあれば、現場状況を示す画面が見えますし、複数の関係者がリアルタイムに同じ画面を見ることもできます。また、 一箇所の画面修正ですべての関係者の画面更新ができるため、運用・保守コストの削減にも繋がりますため、Web対応と謳っているSCADA製品もどんどん増えているようです。ちなみにUnityBoyで複数オペレーターから監視画面への同時アクセスや操作は追加ライセンス料金が不要なので、顧客にとっては非常にお得です。

ただ、SCADAで組込系のWeb対応のアプリケーションを開発するには、通常組込系のOSを理解する必要がありますし、開発エンジニアに対するCやJava言語技術、更にインターネット関連技術の要求が高く、検収期間も比較的長いため、結局システムの高コストの開発体質が変わらないようです。そのため、単にシステムのハードウェアの値段で導入するかどうかを判断するのではなく、ほかに開発ツールによって開発効率がどの程度高められるか、機能追加やアクセス数の追加コストがどの程度であるか、保守などを遠隔で簡単にできるかなどコスト要素を総合的に評価する必要があると思われます。

次回のメールマガジンでは、UnityBoyがどのようにシステムのトータルコストを削減できるかについて説明させていただきたいと思います。