新川電機株式会社 ソリューション本部

宋 欣光

SI部担当部...もっと見る SI部担当部

第2回目のメールマガジンにはUnityBoyの導入によるTCOの削減について説明しました。また、TCO削減の過程においてUnityBoyのアプリケーション開発ツールの特徴により、組込型装置にアプリケーション導入ための技術ハードルが下げられ、一般PCベースのSCADAシステムの開発とほぼ同じ感覚で効果的なシステム構築ができることを説明しました。

今回はUnityBoyで遠隔監視システムを構築した場合、業務拡大に伴って、分散サイトの導入から中・大規模な集中的なシステムへの進化について説明します。

UnityBoyで構築される組込型遠隔監視システムは、主に下記三つのタイプで運用されます。
(1) 分散Webサーバ方式
(2) 中央Webサーバ方式
(3) 分散・中央Webサーバ混合方式

(1) 分散Webサーバ方式

図1. 分散Webサーバ方式 (UnityBoyの内蔵Webサーバ利用)

分散Webサーバ方式はもっともシンプルで、初期UnityBoyを導入していた顧客はほとんどこの形態でシステムを運用されています。 監視対象装置の情報は各現場に設置しているUnityBoyに直接収集され、装置状況を監視するには、担当者が監視PCから現場のUnityBoyに直接アクセスして行うようになります。

また、UnityBoyからインターネットへの接続は、有線(ISDN、ADSL回線を利用する各種インターネットサービス)・無線(NTTドコモのFOMA、ウィルコムのPHSなど)を問わず基本的にルータ経由で行います。こうするに二つの理由があります。一つは、UnityBoyのSCADA機能は最優先に実現すべきもので、通信機能を持たせるには、本来の性能が影響される可能性があります。もう一つは、現在販売されているルータにはルーティング機能の他に、ファイアウォールやVPNなど様々なセキュリティ機能も組み込まれています。これらの製品との組み合わせにより、システムインテグレータがよりスピーディ、低コスト、且つ高品質・高安全性のシステムを顧客に提供できるメリットがあります。

応用事例の中に、LNGサテライト基地やエコステーションの遠隔監視、河川スクリーンや水位監視、雨天時越流水スクリーン設備の遠隔監視システムなどが挙げられます。雨天時越流水スクリーン設備は降雨時における合流式下水道の越流水に入っている汚濁物質を除去するものです。スクリーン設備が正常に動作しなければ、汚濁物質がそのまま都市の河川や下水路に排出され、その水質に影響を与えてしまうことになります。そこにUnityBoyが導入された理由もやはりコストでした。従来テレメータ方式のものと比べ、UnityBoyの開発・導入コストが安く、アプリケーションでの対応柔軟性も理由の一つです。

(2) 中央Webサーバ方式

図2. 中央Webサーバ方式

一般的に、上記分散Webサーバ方式で導入した遠隔監視ステムの数がある程度になると、担当者にとって各サイトに直接アクセスするだけでも面倒になる感じなので、中央Webサーバ方式のシステム構築が自然的に必要となってきます。この際、各サイトに分散しているUnityBoyが定期にまたは必要時、設備状態データを中央サーバに送り、そこのデータベースに保存されます。各サイトの状況監視は、担当者が各サイトに直接アクセスするのではなく、中央システムのWebサーバにアクセスして行います。通常、リアルタイム状態監視が必要なら、現場と中央Webサーバ間の通信はインターネットに常時接続できる環境が要求されます。また、中央サーバ側に各サイトからのデータが集められ、様々な画面表示機能を提供する必要もあるため、システムの構成スペックを高くしなければなりません。従って専用アプリケーションの開発・導入及びデータベースも必須となるので、その分のシステム導入コストが必要となります。

LNGサテライト基地の設備管理のために導入された例はあります。監視対象となる拠点数が数十以上になったため、日常の監視及びデータ収集作業が大変になってきたとのこと。また、タンクレベルの情報が定期的に中央監視センターに収集されてから、更にLNGタンクローリーの配車システムに渡されるので、配車計画も以前より手軽に作成できるようになったようです。

(3) 分散・中央Webサーバ混合方式

図3. 分散・中央Webサーバ混合方式

この運用方式は上記分散Webサーバ方式と中央Webサーバ方式を同時に利用する仕組みとなっています。各サイトに分散しているシステムが正常に稼働している時、UnityBoyに収集された設備情報があらかじめ設定した周期で定期的に中央サーバに送られます。一方、現場の設備に何らかの異常が発生し、警報メールが担当者に送られた場合、担当者は、さらにリアルタイムに状態確認が必要となってきます。その際、担当者が監視PCから直接特定の現場にアクセスして確認を行います。このように構築したシステムには、現場リアルタイムデータの監視はもちろん、中央サーバに保存されたデータに基づいて、設備状態の長期変化傾向確認もできます。

日本国内における、某社の「設備のリモート監視と予防保全サービス統合システム」は、このような仕組みで運用されているようです。そこにUnityBoyが装置から収集した計測データとログデータをFTP(File Transfer Protocol)で定期的にカスタマーセンターに送信し、そこのデータベースに蓄積します。これらのデータは日報・月報・トレンドデータのレポート作成や、地絡電流、バッテリー電圧などのトレンド解析による設備劣化の傾向管理に利用されますが、装置異常原因を特定する際、担当者がカスタマーセンターからインターネット網経由でUnityBoyにアクセスしリアルタイム状態を確認するようになっています。

その他、UnityBoyがP2P(Point-to-Point)のかたちで運用され、無線LANも使えないところで構内無線電話システムを生かし、通信ランニングコストゼロの警報転送システムや、生産ラインの看板システムとしての応用形態もありますし、様々な用途に合わせるかたちで導入できますが別の機会に触れたいと思います。

次回のメールマガジンでは、UnityBoyで遠隔監視システムを構築及び運用する際に考慮すべき事項について説明させていただきますので、楽しみにして下さい。