新川電機株式会社 ソリューション本部

宋 欣光

SI部担当部...もっと見る SI部担当部

今までUnityBoyが組込型SCADAソリューションとして容易に小規模から大規模遠隔監視システムまでの導入プロセスについてすでに説明しました。しかし、容易に導入できると言っても、安易に使っていいこととイコールしてないところがあります。遠隔監視システムの機能を実現するには様々な関連要素とその役割がきちんと働いているのが必要です。重要なところに利用される場合は、各要素を分析しどのようにシステム全体の信頼性が上げられるかについて細かく検討しなければなりません。

(1) メール送信について

遠隔監視システムの運用に必要な機能は主に二つあります。一つは警報メールを含むデータ転送機能、もう一つは画面表示操作機能です。図1は、警報関連信号の収集、判断と警報メールの発信から、有線・無線二つ経路で担当者の携帯電話にメールが届くまでの流れを示すものです。

図1. 警報メール配信機能の関連要素

はじめに、無線網経由のケースで説明します。遠隔サイトに配置されているUnityBoyは警報発報する際、メールが無線通信カードの入っているルータからオレンジ色の経路を沿って無線網キャリア系のサービスプロバイダISPwに送られます。その後、ISPwから青色の経路でこのメールを担当者の携帯電話まで送信します。

他の有線タイプのISPを利用する際、メールはルータから緑色の経路でISPiに行きます。その後、ISPiがこのメールをインターネットと無線網へのゲートウェイ経由でISPwに転送します。最終的にISPwから同じ青色の経路で担当者にメールを届けることになります。

言うまでもなく、UnityBoyからのメールが担当者の携帯電話に届く前提条件とは、図1上の各矢印の線及び通過する要素がすべて正常に機能していることです。

PLCとの通信

ここに問題が発生すると、センサーのデータがPLCから正常に収集できず、事前に設定した警報判断ができないため、関連の警報メールも正常に送信できなくなります。

UnityBoy

UnityBoyは遠隔監視システムの中でデータ収集、処理、警報判断、警報発信の中心であり、重要な役割を果たしています。一方、長期間システムが走り続けるとWindows CEシステムに利用可能なリソースが減少するのが一般的で、それによってUnityBoy全体のパフォーマンスが低下したり正常に機能しなくなる可能性はゼロではありません。そのため、システムリソースが減らないことを祈るより、UnityBoyの再起動は一つの現実的な回避手段と考えられます。また、異常再起動と計画再起動の中で、後者はシステムへの影響まで想定可能なので、よりよい問題回避の実現ができるでしょう。

ルータ

UnityBoyの次に重要な要素はルータです。現在市販されているルータは単にISPと接続し通信経路を確保するだけではなく、セキュリティ関連、ハッカー攻撃対応など様々な付属機能が盛り込まれています。そのため、UnityBoyとよく似ており、ほとんどのルータの中に組込タイプのコンピュータが入っているようです。従って、そこにもシステムリソースの問題が存在し、不調時にリセットで元に戻ります。UnityBoyと同様に、このリセット仕組みをシステム設計の段階で検討すべきだと思われます。しかし、一つUnityBoyと違うところは、ルータが直接通信回線と接続しているため、異常発生で通信回線が切れなくなったら、予想外の通信コストが発生する可能性があります。

通常、顧客がランニングコストを抑えるため、遠隔監視の通信時間や通信データ量にぴったり合うような回線契約プランを選択する傾向があります。例えば一日1通のメールしか飛ばさない遠隔サイトなら、月に約1,000円程度のプランで十分ですが、ルータに異常が発生したら、通常の契約料金を大幅に上回る請求書が顧客に来るかもしれません。このような事態にならないように定額の使い放題契約プランが一番望ましいと思われますが、契約料金が少し高いため、利用したくない顧客もいるでしょう。その意味でも、通信と通信料金の仕組み及びリスクの取り方について、顧客の理解が必要です。最終的には顧客の責任で契約プランを決めることになります。

通信電波状況の影響

ルータからISPwまで通信電波状況がよくなければ、ルータからのリトライが頻発し、送信時間が遅れたり、通信コストが通常より高くなる可能性があります。同様にISPwから携帯電話までの電波状況がよくなければ、あるいは担当者が通信圏外にいる時に、警報メールの確認はできなくなる可能性もあります。運用上、上記の可能性を減らすには、警報メールを複数担当者に送信することや異なる通信形態でメール送信を取り込むことが考えられます。

ISPwのメール配信ポリシーの確認

携帯メールの送信ポリシーが一般有線ISPのものと異なる点に注意が必要です。UnityBoyの導入先に下記のような事例があります。UnityBoyからISPi経由で複数のシステム担当者の携帯に警報メールを送信する際、メールが届かない人がいます。UnityBoyのシステム履歴、 ISPiの受信履歴及びISPwに転送されたところまで確認し、最後に分かったのが非常災害に電話設定をした担当者のみすべてのメール受信ができたことです。なお、本件に関してはあくまでISPiとISPwの組み合わせであり、他のISPまたは他のISPwだったらどうなるかはあらかじめ契約先に確認した方がよいでしょう。

(2) 遠隔監視画面の表示について

図2はUnityBoyのWeb画面を表示し、遠隔サイトの監視を有線接続にて行う場合のデータ流れを示します。

図2. 遠隔監視時のデータ流れ

プロキシサーバーの邪魔

直接ADSL経由で現場のUnityBoyにアクセスする場合は殆ど表示に問題はないようですが、会社の社内LANからUnityBoyの画面を見る際、時々画面が見えない、アニメーションが動かないなど顧客から報告を受けたことがあります。殆どの原因は、社内LANに設置しているプロキシサーバでした。つまり、UnityBoyの監視画面に見る時に、プロキシサーバの設定によって通信パケットがブロックされたり、変更されたりすることがあるからです。この場合は、全社ネットワークポリシーを変更するのが一般的に難しく、新規回線を用意した方が無難だと思われます。

Java VM(Virtual Machine)の準備

UnityBoy監視画面の構成には、HTMLページの裏にJavaAppletが使われています。画面のデータ更新、アニメーションの表現、操作の処理などはすべてJavaAppletプログラムより処理されるため、JavaAppletが走るために必要なJava VMをあらかじめ監視用PCにインストールしなければなりません。Java VMは、専用サイトからダウンロードし利用できますが、場合によってPCのシステム管理者からの応援が必要かもしれません。

(3) 表示関連の通信コスト及び表示速度について

JavaAppletプログラムをあらかじめ監視PCに用意

上記UnityBoyの遠隔表示にJavaAppletが使われていると説明しました。担当者が監視PC上のブラウザを開いてUnityBoyのIPアドレスにアクセスする際、担当者が何らかの操作は要らないが、このJavaAppletプログラムをPCにダウンロードする必要があります。この仕組みで、Java VMが入っているPCであれば、どれでも遠隔監視に使えます。

一方、回線通信速度が遅い場合、または回線利用に時間あるいはパケット数に応じて課金される場合は、このJavaAppletプログラムのダウンロードで最初画面の表示に時間や通信料金がかかることになります。
もし監視用のPCがほぼ固定であれば、このような利用時間と利用料金の心配を解消する方法があります。つまり、あらかじめUnityBoy表示用のJavaAppletプログラムを監視PCに入れることです。これで上記のようなダウンロードがなくなり、表示の高速化が実現でき、回線料金の削減に繋がります。

以上、UnityBoyの遠隔監視機能の紹介及び注意すべきところについて説明させていただきました。これから、UnityBoyはさらに進化し、遠隔機能を持つ組込タイプのSCADAソリューションとして、トータルシステム導入コストの削減で顧客の満足を実現して行きます。今後とも、UnityBoyのご活用とご愛顧いただくようよろしくお願い申しあげます。