新川電機株式会社 ソリューション本部

宋 欣光

SI部担当部...もっと見る SI部担当部

第1回目のメールマガジンでは、UnityBoyの機能などを概要的に説明しました。今回はUnityBoyで遠隔監視システムを構築した場合、組込型のUnityBoy自身の特性から、開発過程、システム運用及び保守といったシステムライフサイクルにおいて、顧客のTCO(Total Cost of Ownership)がどのように削減できるかについて説明します。

組み込み型SCADA製品の特性

一般的なSCADAシステムは、PCやワークステーションなどで構築するものですが、長期データを自分のところに保存する必要はなく、設置環境が割と厳しい状況では組込タイプのものを考えた方がよいでしょう。例えば、盤が狭い場合や、環境温度変化範囲が広い時などは、工業用PCの利用、または特別な対策を取れば対応できるのは当たり前ですが、厳しい予算枠内にシステムコストを抑えるコツがなければ実現できません。

普通のPCと違い、組込型のUnityBoyには次のような特徴があります。

  1. 本体が手のひら程度の大きさと小さく、狭い盤への設置が容易。
  2. OS、アプリケーション及びデータの保存にHDDを使ってない為、運搬・設置工事、または設置場所の環境振動による機械故障の発生する可能性が低い。
  3. 異常停電または再起動に強い。

WindowsCEという組込系のOS上で稼働するUnityBoyは、OSのイメージファイル及びアプリケーションなどのソフトはすべて一枚のCFカードに保存されています。起動時これらのファイルがCFカードからRAM上に展開されます。異常停電またはWatchDogで計画的な再起動をしても、RAMにあるものが消えるだけで、PCのようにHDDの故障は発生しないし、OS関連の一時ファイルがHDDに残ることもないので、再起動したシステムは初期起動状態とまったく同じように走ることになります。

逆に、OSまたはアプリケーションに占有されたシステムリソースをPCの再起動で開放する実例の中に、数十回の再起動でPCのOSが立ち上がらなくなった報告を聞いたことがあります。つまり、OSの一時ファイルの残骸やごみは、単にHDD上に残るだけではなく、ある程度たまるとシステムの安定性にまで影響する可能性があります。

I/O点数が数百点以内で、設置環境が厳しい、特に無人なところに遠隔監視システムを導入するなら、組込型のSCADAソリューションUnityBoyをお勧めします。

アプリケーション開発過程でのコスト削減

一般のSCADAシステムを構築された経験のある方ならSCADAパッケージソフトの利用が有効です。ライセンス費用を除けば、システムの品質を保ちながら開発期間の大幅短縮で、開発コスト削減効果が得られます。しかし、組込型装置に踏み込んで行くと、汎用的なものは少なく、CやVB言語を利用するケースが多いことから、SCADAエンジニアたちの悩みの種となり導入を抑制します。組込型のソリューションが顧客のニーズにマッチしても、提案まで持ち込むのもなかなか難しい現実がそこにあります。

それでは、開発難の問題はUnityBoyがどのように解決しているでしょうか。それは AxedaBuilderという開発ツールです。もともとこのツールは設備の遠隔監視システム用に、組込系の実行環境を想定した上で作られたもので、一般のSCADAパッケージの便利さを得ながら、組込型用のアプリケーション開発ができます。

ここでUnityBoyプロジェクトの開発の流れを概要的に説明します。

(1)通信ドライバの選択
顧客が使用しているPLC制御装置のタイプに合わせて、内蔵している通信ドライバを選択します。UnityBoyに利用できるドライバ(2010年7月7日時点で)は、三菱電機、横河電機、オムロンなど国内十数社の製品に対応し、UnityBoyをご利用の顧客に無償提供しています。また、市場需要性または顧客の要望に応じて新規開発も行っています。

(2)タグ(Data Item)の定義で制御装置上のメモリとマッピング
これで、データ収集から、演算ためのExpression、記録ためのLogger、表示画面上のアニメーションとの連動が簡単にできるようになります。

(3)ロジック処理
UnityBoyのアプリケーション開発には、CやJavaのような言語知識は不要ですが、LogicSchemaという起動条件(トリガー)と実行内容(アクション)ペアの定義で顧客の要求に応える仕組みが入っています。トリガーとは、タイマー(Timer)、アラーム(Alarm)、タグ値の変化のようなもので、アクションには、メール(E-Mail)送信、データ記録(Logger)、タグ値変更などがあり、これらはすべて開発者が定義できます。例えば、毎正時(トリガー)に指定したタグ値をあるロガーファイルに保存(アクション)したり、アラーム発生または終了時(トリガー)に指定したメールを配信(アクション)すると同時に、(マルチアクション)FTPクライアントソフトを起動させ、指定したデータファイルを遠方のFTPサーバに転送したりすることができます。

(4)表示画面の作製
UnityBoyの表示はすべてインターネットエクスプローラ上で行うことから、素からWeb対応のSCADA製品と言えます。特に、AxedaBuilderの画面定義情報は自動的にUnityBoyの描画エンジン(JavaApplet)用に変換されるため、開発者の技術ハードルが下げられ、開発負担が軽くなり、開発期間が大幅に短縮され、コスト削減効果が明確に見えます。

運用及び保守面でのコストメリット

システム運用段階において、よくある事情は担当者の異動です。システムに組み込んだ警報メールの宛先やシステムセキュリティ関連のユーザ名・パスワードの変更が度々発生します。UnityBoyの遠隔監視機能には、標準なシステム管理ページが用意されています。そこで、関連情報の変更は遠隔から素早く対応できます。更に、システムの保守の一環として既存システムへの機能変更なども、インターネット経由で遠隔から行える仕組みがAxedaBuilderに組み込まれています。これらによって、顧客は現地作業回数が減り、現場までの移動経費不要と時間の節約となり、最終的にトータルコストダウンを感じてもらえることになります。

上記で説明したように、組込型のSCADA製品にはそれなりの特徴があり、UnityBoyはその中の1つの選択肢です。特に、AxedaBuilderの利用で、技術面とコスト面のハードルが他のソリューションより優れ、UnityBoyとAxedaBuilderの遠隔機能を活かすことで、運用・保守の面においても顧客のTCO削減目標が達成しやすくなるでしょう。

次回のメールマガジンでは、UnityBoyで構築した遠隔監視事例を紹介させていただきますので、楽しみにして下さい。