2017/11/07 業界コラム 竹内 三保子 ライター こぼれ話 No.1 知っておきたい『ミサイル対策の基本』 株式会社カデナクリエイト 代表取締役社長 竹内 三保子 東京生まれ。1983年 明治学院大学経済学部卒業。同年、西武...もっと見る 東京生まれ。1983年 明治学院大学経済学部卒業。同年、西武百貨店入社。紳士服飾部、コンセプトショップ担当、特別顧客チームなどを経て経済評論家の竹内宏に師事。百貨店で学んだ顧客視点をベースに、主に「中小企業」「地域再生」「働く女性」などに関する記事を執筆。その後、編集プロダクション、株式会社カデナクリエイトを設立。 現在は高齢者ビジネスに対する関心が深まり、『介護経営白書』(日本医療企画)等に執筆。共著に『課長・部長のための労務管理問題解決の基本』『図解&事例で学ぶイノベーションの教科書』などがある。 東洋経済オンラインに連載中。 現在、ビジネスものの記事を中心に雑誌や WEB マガジンなどで執筆しています。テーマに沿って取材をしたり、調べたりしながら、だんだん答えに近付いていく作業は楽しいものです。そんな答え探しでみつけた情報の中から思い出深いものをいくつか紹介していきたいと思います。皆さまに役立つ情報があれば幸いです。 二匹目のどじょうを狙った『防衛本』第一回目は、ミサイル対策の基本。最近、北朝鮮が頻繁に日本方面にミサイルを飛ばしてくるので、このテーマを選ぶことにしました。 そもそも、何で、ミサイル対策のことを調べることになったのかと言えば、スイス政府が各家庭に配った民間防衛本の翻訳版『民間防衛―あらゆる危険から身をまもる』が売れに売れていたからです。北朝鮮のミサイル実験をひとつのきっかけに、二匹目のドショウを狙って、いろいろな出版社が一斉に民間防衛本の制作に乗り出しました。私たちも、そうした流れに乗ろうとしたわけです。 ロングセラーのスイス政府の民間防衛。 筆者が購入した段階で33刷でしたまず、大ヒット中の『民間防衛』をざっと読んでみました。平和を守る意義からはじまり、生き残る大切さ、核兵器や生物兵器などから身を守る方法、レジスタンスのやり方まで書いてあります。いつ戦争に突入してもおかしくない緊張感と、何が何でも「祖国を守るのだ」という強い決意が伝わってきました。 それに対して日本はどのくらい防衛のことを考えているのでしょうか。防衛省が防衛関連の資料を出しているのは当たり前なので、それは抜かして探してみることにしました。 まず内閣官房。『武力攻撃やテロなどから身を守るために』というパンフレットを出していました。警報が発令されてから避難までの手順が手際よく解説されています。 最近は、Jアラートについてテレビなどでも盛んに紹介していますが、昨年の段階では、恥ずかしながらJアラートの存在を知らなかったので、こんな仕組みがあるのかと驚いたものです。 出典:国民保護ポータルサイト(http://www. kokuminhogo.go.jp/shiryou/hogo_manual.html) 基本情報から応急処置まで コンパクトにまとめられていて便利パンフレットの中の項目のひとつ「武力攻撃の類型などに応じた避難などの留意点」では、ゲリラや特殊部隊からの攻撃、弾道ミサイル攻撃、着上陸侵攻などのケースが紹介されていました。さらに、化学剤、生物剤、放射性物質、核兵器、いわゆる CBRN 兵器が使用されたらどうするのかといったことにも触れています。これが防衛省の資料であれば、「専門家はそこまで想定しているのね」とさらりと流してしまいますが、内閣官房の資料となると、不思議なもので現実味を帯びた危機に感じてきます。 さらに、平成 16 年の国民保護法に基づいて各都道府県・市町村ともに、国民保護計画を策定するようになりました。万一、攻撃やテロが発生したら、国から都道府県、市町村に避難指示が出ますが、その時、どうするかといったことが書かれているわけです。 よく考えてみれば当たり前なのですが、感覚的には、日本の行政や自治体も攻撃に備えていたことは驚きでした。 愕然としたのは、その中身。市町村によって随分とレベルが違うからです。たとえば、狙われやすい施設はどれか、米軍とどう連携するのか、どの道路を使って逃げるのか、安定ヨウ素剤の備蓄はどうなっているのかといったことを具体的に書いている自治体がある一方で、「要請する」「構築する」といった表現ばかりで具体的な対策は書かれていなかったり、部門や企業の役割分担や施設紹介に終始しているところも少なくありませんでした。 果たして自分が住む地域はどうなのか…。ぜひ、みなさんも、自宅や職場周辺の国民保護計画をチェックしてみてください。「建物の数」「橋の数」「工場で働く人の人数」など、様々な地域情報も出ているので、自分の住む地域を改めて知るといった観点で楽しむこともできます。 ミサイルに搭載されているのは何かを考える「弾道ミサイル」に搭載できるのは、「核兵器」だけだと思っている人は少なくないかもしれません。実際には、前述した大量破壊兵器『 CBRN 兵器』すべてを搭載できるそうです。 ちなみに自衛隊に問い合わせたところ放射性物質(R)については、理論的にはミサイルに搭載は可能ですが、技術的にはかなり難しいとのことでした。 大量破壊兵器とは、下手をすれば、その国が滅びてしまうほど大勢の人を無差別に殺傷してしまう兵器のことです。かつては、大量破壊兵器は NBC 兵器と呼ばれていたそうです。N は Nuclear(核兵器)、B は Biogical(生物兵器=細菌やウィルスなど)、C は Chemical(化学兵器=毒ガスなど)。当時は国対国の戦争で使用するといったイメージでしたが、実際は、NBC が使用されるのは戦争だけではありません。テロリズムに加えて、事故や自然災害などでも甚大な被害をもたらすこともあります。また、工業用、医療用などに使われている放射性物資(R)も、仮に悪意がある人間が持ち出せば大量破壊兵器として使えます。 そこで、オウム真理教のサリン事件、米国炭疽菌郵送事件などをきっかけに、戦争だけではなく、テロや事故や自然災害、また放射性物質も含んだ広い概念として CBRN という言葉が使われるようになってきたそうです。もちろん CBRN 兵器はいずれも使ってはだめです。化学兵器禁止条約、生物兵器禁止条約をはじめ、使用を制限する条約もあります。 だからといって、ミサイルが飛来した時に、おかしなものは搭載されていないと考える人はいないでしょう。内閣府のパンフレットによれば、Jアラート等でミサイルが飛んで来るのが分かった時に、仮に屋内にいたとすれば、搭載されているものが何にせよ、まずガムテープなどで窓の隙間を目張りするのが有効だそうです。 『ガムテープで防げるの?』とは思いましたが、それだけでも放射性物質、細菌やウィルス、毒ガスなどの侵入をかなり緩和できるようです。あわせて、できるだけ有害な空気を吸い込まないように、口や鼻などをハンカチで覆い、皮膚の露出を避けるために上着などを頭からかぶります。 外にいた場合は、密閉性の高い建物に飛び込み、口や鼻などをハンカチで覆います。 核兵器が搭載されていた場合は、コンクリートの建物にいたかどうかが生死を分ける可能性も。コンクリートは高温の熱線を遮るからです。適当な建物がなければ、あきらめずに側溝などでもいいので隠れるのがベター。爆発によって閃光や火球が発生した場合には、絶対に見てはいけません。失明するおそれがあるからです。 いずれにしても、ミサイルが飛んで来たら準備できる時間はわずか 10 分程度。今年 2 回も鳴ったJアラートで、多くの人が時間の短さは体感済みでしょう。無意識にどこまで準備ができるかが生存率アップのポイントです。 大切なのは整理整頓?さて、ミサイル着弾後、助かったからやれやれではありません。人が大勢倒れていれば毒ガスが使われた可能性があるので、風上に逃げる方がいいでしょう。毒ガスの場合は、空気より重いもの、軽いもの両方ありますが、重いものの方が多いということは頭に入れておきたいものです。その上で周辺を見て、頭を高くするべきか、低くするべきかを決めます。 家についたら、まずは着ていた衣服はビニールなどに包んで廃棄。化学兵器、生物兵器、放射性物質などで汚染されている可能性があるからです。皮膚の汚染も考えられるので、きれいに洗います。 さらに飲み水、食料など気を付けることが満載。 また、生物兵器が使用された場合は、ウィルスや細菌を媒介する蚊やハエなどが発生しないようにゴミなどこまめに片づけることも重要です。なんだかしつけ教室みたいになってきましたが、整理・整頓・清潔などは、実は防衛的にも重要なのだとわかりました。 ところで、内閣府のパンフレットでは、CBRN 兵器への対処法はたった 3 ページしかありません。核爆発の圧力波ひとつに 2 ぺージも割いて説明しているスイスの民間防衛とは対照的。いいかえれば、平和憲法に守られている日本では、そこまで心配する必要はないということでしょう。 弊社で取材・執筆を担当したムック。 二兎追うどころか、かなり欲張りな内容になりましたそれよりも怖いのは、放火魔やストーカーをはじめとした日常の危機。2020 年東京オリンピックのテロ対策が気になる人もいるでしょう。ということで、余談ですが、私たちの防衛本は、「CBRN 兵器対策」に「テロへの対処法」「日常生活の防犯」「防犯グッズ」などを加えた総合的な自己防衛をテーマにしたものになりました。 次回は、「水道局がなげく井戸水人気?」について紹介する予定です。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社カデナクリエイト 代表取締役社長 竹内 三保子さんのその他の記事 2018/01/10 業界コラム ライター こぼれ話 No.3 『 キャンピングカー・ブーム』 2017/12/05 業界コラム ライター こぼれ話 No.2 『水道局が嘆く井戸水人気』 2017/11/07 業界コラム ライター こぼれ話 No.1 知っておきたい『ミサイル対策の基本』 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月