新川電機株式会社

長井 昭二

技術顧問...もっと見る 技術顧問

テーマの表題はちょっと大げさですが、私が CDM 事業(京都議定書、CleanDevelopment mechanism)とか再生可能エネルギー(バイオマス発電)に関わってきた経験から。温暖化は「どういう問題なのか」という原点を考えるため、下記の書物を読んでみました。

1.「異常気象と人類の選択」江守正多(国立環境研究所)著 2013 年 9 月角川 SSC 新書
2.「Plan B 4.0」Lester R. Brown(Earth policy institute所長)著
3.「10 万年の未来地球史Deep Future 100,000 years of life on Earth」Curt Stager 著 2012 年 11 月岸由二:監修解説、小宮繁訳
4.「Science Fact, Climate Fiction-Clarifying the Debate」 Science American May-June 2010

詳細は別としまして、これらの本を読んで少し私の頭の中を整理してみました。

地球温暖化と CO2

世界で初めて温暖化の話をしたのは 1824 年、「ジョセフ・ フーリエ」の「二酸化炭素による地球温暖化仮説」だそうです。その後近年では 1990 年代の温暖化問題は京都議定書、リーマンショック、IPCC の気候データ情報操作疑惑、2011 年の震災、そして再生可能エネルギー固定買取制度(FIT)等ありまして、

今年 2014 年 1 月、IPCC の第 4 次の報告が出され、「産業革命以降の気温上昇はかなりの信頼度で人間の経済活動が原因」と結論されました。これで多くの「温暖化懐疑論者」は沈黙したようです。

それでも、EU を除く各国の対応、各国政府の CO2 削減計画は画期的には進展してません。最近中国と米国政府が初めて目標設定を公表しましたが、実際に法制化できるか不明です。

これは CO2 削減政策が、各国の各個人の経済効果を押し下げ、「地球温暖化は問題だが、生活が不便になったり、収入が下がるのはいやだ」という現実の話になり、「今まで通りに生活する」となってしまうからです。

これはある意味仕方のないことです。地球温暖化という案件はテーマが極大で地球規模の話です。人類はかつて、こんな大きなテーマに取り組んだことはありません。食糧、人口、健康等のテーマでは、取組はありますが、温暖化という地球全体の物質構造変化、生命活動変化が影響を受けるテーマと比較すると、限定的と言えます。

よくモントリオール協定 《 1995 年までにオゾン層の保護のためフロンガスの使用の禁止協定》.the Montreal Protocolを成功事例の引合いに出す科学者もいますが、やはり温暖化と比較すると、その目標設定が「排出 0 %」という簡潔な目標で、経済への影響も限定的でした。CO2 の場合は「排出 0 %」とは簡単に行きません、今の人類では不可能です。

どんな感じで考えればよいか

では何が問題か!それは、(1)「気温の上昇ペースが速すぎる」ため、人間を含めた地球上の生物がその温度変化に対応できなくて(2)「将来、自分の子孫が不幸な結果」になる。ということのようです。

ではまず、どれくらい「気温の上昇」が速いかですが、下図に 1880-2012 年間の大気温度上昇変化と過去の代表的地球温暖化(約 13 万年前エーミアン間氷期前:データは Earth Policy Institute HP と EPICA2004 のデータ)の時と比べてここ最近の 50 年の気温上昇は約 5 倍(1.3℃/100 年)くらい早さになってます。

エーミアン間氷期温暖化の時期は上図の右側図に示しますが、見かけは急に上昇してるように見えますが、実は約 5000 年かけて、ゆっくり(0.28℃/100 年)と地球平均気温の約 +5℃ まで上昇しました、平均気温で +5℃ は実かなりの高温な温暖化ですがその「ゆっくり」が多くの生物(原人類も含めて)には生き延びる余地は与えました。長い時間をかけて北に移動しながら温暖化に適応して行き、相当数の生物の死滅もありましたが、がまんしてる間に地球の周期的な feedback 作用で温暖化が終わり穏やかな気候(間氷期)に向かい、いくつかの人類の祖先と生物は生き延びました。つまり絶滅は無かったのです。 下図に生物の生存可能な避難速度のデータ例を示します。

詳細説明は省略しますが、右軸の気候変動速度(温度上昇++)が大きくなるほで各種生物の生存可能な避難速度(白い棒グラフの範囲:単位は左軸)を上回り、絶滅が増加することを示してます。

今の温暖化は人類が「何もしない」と、今後 1000 年で +13℃ 以上、500 年で +6.5℃ の気温上昇が推定されます、また他の相乗効果で温度上昇はもっと加速するとも言われてます。そうなると次のことが想定されます。

  1. 全ての生物は北極か南極には移動して適応できない。人間が都市化、耕作開墾して移動を妨害する。また人口増加で北に移動しても居住できるスペースと食糧は不足する。
  2. 人間が原因で起こった温暖化は自然現象で起きる定期的寒冷化を阻害して、温暖化が長引き生物生存の確立がさらに下がる。

ではどう考えてどうするかは次回に譲りますが、今回の話で急激な温暖化は生命へ影響が大きいことが何となくイメージできたら幸いです。

プロローグ 「人間の理性」

次回は、自然現象で発生した温暖化は誰も止められないので「しかたない」とあきらめることができるが。人類が引起こした温暖化は「しかたない」と他人事のように言えるか?という質問(自問)に対して「そうではない!」という人間の理性が働くかどうかと、自分たちが排出した CO2 分ぐらいは自分たちで応分に対策して「子孫には全てを負担させない」という人間の理性について書いてみたいと思います。

しかしこの問題がややこしいのは、今何かをすると直ぐに何かが変わるという話ではなく 効果と影響が出るのは 100 年、1000 年とか先の話です。逆を言うと、子孫のために CO2 対策の「何かをする」の選択の余地を次世代の人にも次次と引き継いでいく必要あります。つまり今の我々の時代で「何もしない」は、子孫が将来生きる延びる(あるいは自然絶滅を選択する)ための選択も奪ってしまうことになるので、それは「意思と理性」を持つ人類として自らを否定することになりやっかいですね。それではまた次回まで。