新川電機株式会社

大佐古 伊知郎

技術統括本部 システムアプリケーション部 IVPグループ...もっと見る 技術統括本部 システムアプリケーション部 IVPグループ

コラム執筆にあたって

筆者は'91年に新川電機に入社以来、ソフト開発部門で産業用システムのアプリケーション開発に関わってきました。
現在は、自社製品開発部門で製品仕様を取り纏める仕事に携わっています。

筆者が開発に関わったSCADA・UnityBoyⅣを展示会などで説明員として製品説明しているうちに、実は製造業にあってもSCADAという言葉がそれほど浸透していないのではないか? という疑問を抱くようになりました。本連載では、まずSCADAなるものを筆者の経験で得た理解に基づき、思いついたことをゆるく書き綴りつつ、自社製品の紹介をしていきたいと思いますので、気楽に読んでいただけたら幸いです。

あらためまして、『SCADA』という言葉をご存知でしょうか? 辞書を引くとSCADA(スキャダ)とは、Supervisory Control And Data Acquisitionの頭文字を取ったもので、日本語に直訳すると"監視制御およびデータ収集"とあります。しかし、これだけを見ても何のことか分からないという方も多いと思います。また、よく似たシステムとしてDCS(Distributed Control Systemの略、分散制御システム)というものもあり、当社とお付き合いいただいている方々の中には、SCADAとDCSの違いがいまいち分からないという方もいらっしゃると思います。

本コラムでは、出現から約30年が経過しようとしているSCADAの歴史を振り返りつつ、SCADAやIIoTについての説明と、その中で当社が開発したSCADAである『UnityBoyⅣ』の製品紹介をおこないます。ただカタログに記載された内容をなぞっても面白くありませんので、どういった設計思想なのか、想定するアプリケーションはどういったものなのか、といったものをご紹介していきたいと思います。

SCADAとは

SCADAとは、工場の設備や装置に対する制御システムの一形態でネットワーク接続された制御装置であるPLC(Programmable Logic Controller)とパソコンの間で通信をおこないながら設備の状態を監視 / 制御するとともに、データを収集して帳票を作成したりします。このうち、パソコン部分はユーザーインターフェースを司ることから、SCADA / HMI (HMIはHuman Interfaceの略) と表現されることもあります。

一般的にSCADAはソフトウェアパッケージとして販売されており、SCADAを用いてシステムを構築する場合、エンジニアはパソコン・ネットワーク機器・PLCを選定/調達し、パソコンにSCADAパッケージをインストールしてアプリケーションを作成します。

SCADAパッケージソフトに求められる基本的な機能としては、PLCなどとのデータ通信機能・通信機能で取得したデータを加工した上でソフト内で共有する機能・データを画面に表示する機能・データを元に帳票を作成する機能などがあります。

これらは開発用環境(ビルダなどと呼ばれる)を用い、プログラムレスでアプリケーションを構築することができます。また、標準機能でサポートできない部分を補うため、ユーザー作成プログラムと連携したり、用途特化の追加機能(電力デマンド機能や計装機能など)といったものが提供されているものもあります。
この基本構成は現在に至るまで変化していません。

SCADAの生い立ち

プロセス業界におけるSCADAの歴史を振り返ると、’90年代に入りPCおよびPLCの性能が向上したこと、Ethernetに代表されるネットワークの標準化が進展したことで、それまではDCSに代表される、メーカー独自規格の専用システムで構築されていた工場の制御 / 監視システムが、徐々に汎用品を用いたSCADAシステムに置き換わっています。

特に、’96年に発表されたWindowsNT4.0が普及し、マルチタスクによる複数処理の同時実行やマルチウィンドウやマウスオペレーションによる画面表現力の充実と直感的な操作性、製造現場の状態監視や生産指示・データ収集や帳票作成といった用途で汎用的に利用可能であることから、DCSでおこなうには小規模・ローコストなシステム、プログラミング言語でゼロから構築するには手間のかかるシステム、PLCと操作盤だけで構築するには複雑なシステムといった分野を皮切りに採用されるようになりました。
また、PLCはFA(ファクトリーオートメーション)の分野で早くから普及していました。これらのユーザーインターフェースは、操作盤に状態を示すランプや、操作指示をおこなうボタンを取り付け、これをPLCが直接扱うことが多く、高度な表示やデータ処理が必要な用途では、FAコンピュータで手作りのプログラムを作成して監視 / 操作していましたが、これらに対してプログラムの作成コストを抑制でき、保守性が高まることから、SCADAが採用されるようになっていきました。

UnityBoyの原型はこの時代に誕生しました。当初はWindowsNT4.0およびLinuxで動作するSCADAパッケージソフトとして開発されています。

次回は、SCADAの発展からIIoTに至るまでの道筋をお話ししたいと思います。