新川電機株式会社

大佐古 伊知郎

技術統括本部 システムアプリケーション部 IVPグループ...もっと見る 技術統括本部 システムアプリケーション部 IVPグループ

第1回では、SCADAの機能とその生い立ちについて概要を説明しました。第2回では、SCADAがどのように変遷していったかを説明するとともに、SCADAとIIoTの関わりについて概説します。

SCADAの発展と変化

当初、比較的安価・小規模な制御システムとして採用され始めたSCADAですが、オープン化技術を採用していることで急激に能力が向上していきます。’00年代に入り、パソコンのプロセッサやメモリ・ディスク容量といったハード的な能力向上に加え、Windows2000,XPとOSの進化により画面表現力の強化・ネットワーク利用の利便性や通信速度が向上しました。また、これらの機器やソフトウェアは基本的に一般市場にも出回っているものであるため、その巨大な市場を背景に製品価格も劇的に下落していきました。

これにより、SCADAソフトの利用領域が拡大していき、従来DCSの独壇場であった大規模システムの監視/制御といった用途にも適用されるようになりました。その一方でDCSもオープン化技術を取り込み、マンマシンインターフェース部分が専用端末からパソコンへ、ネットワークも専用データバスからEthernetへと変化し、技術的な差異は縮小しつつあります。

ただし、利用シーンはDCSとSCADAで異なっており、早くからDCSが普及していたプロセス制御系などにおいてはプロセス制御に適した機能を数多く有するDCSが現在も主流で、SCADAはDCSが普及していなかったビルオートメーションやパイプライン監視などでの採用が目立ちます。これらの特徴的な点は、1か所あたりのI/O点数は少なめ・処理内容は比較的単純である一方、ネットワークを構成するノード(この場合はPLC)の数が多く、かつ、ネットワークの総延長が非常に長くなる傾向にあることです。

こういった経緯により、一口にSCADAといっても、大規模・広域をカバーするためのSCADAと、従来からの中・小規模なローカルシステムに用いるSCADAに分化していきました。

また、この時代、ソフトウェア技術も進化し、Javaの普及などWebベースで用いる技術の応用で遠隔から高度なグラフィック画面を参照出来るようになってきました。これにより現場から収集したデータをサーバで蓄積し、複数のオペレータが数台のクライアントPCで監視・運用するというニーズに対して、これらの技術を応用した製品が出てきました。

このようにSCADAというプロダクトが目まぐるしく変化する中、UnityBoyは小型BOX PCに予めSCADAパッケージをプリインストールし、小規模SCADAでありながらWebベース技術に対応し、遠隔地のクライアントPCから画面を参照できるという特徴的な機能を持つ製品としてリリースされました。

IIoTとは

ここで話は変わり、今回のタイトルに出てくるもうひとつのキーワード・IIoT(産業用IoT・IoTはInternet of Thingの略でモノのインターネットと呼ばれる)ですが、これを簡単に説明すると、通常のインターネットは基本的にコンピュータとネットワークを介して人と人の間で情報を伝達することで付加価値を生み出すものであるのに対し、モノのインターネットはモノとモノ(あるいはモノとコト)がネットワークで繋がり、情報を伝達することで付加価値を生み出すものであると言えます。

具体的には工場内に張り巡らされたセンサによりデータを収集し、現場で起きている事象を捉えて、これを解析することで生産上のボトルネックを解消して生産性を高める・あるいは生産設備同士が連携して自律協調運転することでラインのトラブルが起きても生産を継続できる冗長性の高いシステムを構築する・設備の異常を予知またはいち早く捉えることで保守コストを抑制するといったことが挙げられます。

IIoTの大規模な例のひとつとして、スマートグリッドが挙げられます。各家庭に取り付けられたスマートメータ(通信機能を搭載した電力量計)からリアルタイムに送られる消費電力の情報を集約して、気象情報などと組み合わせたビッグデータ解析により電力需要を精緻に予測した上で、供給側の広域に分散した太陽光発電や風力発電の発電量情報なども参考にしつつベースロード電源の火力発電の発電量を決定したり、自然エネルギーの使用量を決定することで、電力供給の最適化を図るというものです。

ここまでSCADAとDCSについて説明したのちにIIoTについて説明しましたが、実はIIoTの源流はSCADAやDCSにあり、基本的な考え方はSCADAやDCSと大きく違いません。しかし、無線ネットワークや省電力・プロセッサ・センサといった技術の進歩と標準化が一層進展したことによるコストダウンが、文字通りあらゆるモノにセンサとプロセッサを付けることで緻密なデータ収集を可能にし、多変量解析などデータ処理テクノロジの進歩がビッグデータ活用の道を開くことで、より高い付加価値を生み出せるようになったと言えます。