新川電機株式会社

大佐古 伊知郎

技術統括本部 システムアプリケーション部 IVPグループ...もっと見る 技術統括本部 システムアプリケーション部 IVPグループ

1年間に渡って連載して参りました本コラムも今回で最終回になります。第4回、第5回は技術的な部分に踏み込んだ話でしたので、最終回では、これまでの納入実績やUnityBoyⅣの利用シーンを具体的に挙げてご説明します。遠隔監視を検討する際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

UnityBoyⅣと他プロダクトの比較

UnityBoyⅣは本コラムにて説明されているとおり、SCADAパッケージを小型コンピュータに実装したもので、主に遠隔監視を目的として、それに求められる各種機能を用意しています。その説明の中でPLCやタッチパネルなどといった機器についても少し触れてきましたが、IIoTや遠隔監視といった視点からこれらの機器について説明してみたいと思います。また、近年はクラウドサービスによるIIoTプロダクトも出現していますので、これについても考察してみます。

まず、全般的な話としして、従来は制御・監視・データ記録といった具合に用途別に製品が開発されていましたが、プロセッサの性能向上やコストダウン、高付加価値化・高機能化といった流れもあって、現在はいずれの製品もハイエンドモデルになると主たる機能に隣接する機能を搭載するようになっています。

具体的には、PLCの中にデータ収集してCSVファイルを作成する機能を搭載したり、タッチパネルに簡易PLC機能を搭載するといった感じです。遠隔監視のための機能についても同様で、ビューアソフト等を組み合わて遠隔監視を実現したり、簡易Web画面を用意する製品も多くなりました。

また、インターネットの普及に伴い、遠隔監視に特化した製品も既に市場に存在していて、これらは優れたWeb画面によるGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を提供しています。用途特化であることから、カスタマイズには一定の制限があるものの、遠隔監視という普遍的ニーズを捉えた、非常に扱いやすい製品です。

そして、近年はIIoT技術の発展に伴い、現場に設置したデータ収集機器から直接クラウドサーバへデータを送り、クラウドサービスによって各種データを蓄積/加工してWebを介して表示するシステムも存在します。弊社も、ZARK(ワイヤレス振動センサ)とMachine Dossier(クラウド設備監視プラットフォーム)を組み合わせたクラウドサービスを展開しています。これらは、導入が非常に簡単かつシステム保守の大半をサービス運営会社側が行なってくれることから、手間が掛からないメリットがあります。

このように、遠隔監視に関する製品は非常に多様化している一方で、これらの製品は、それぞれ異なる背景で生み出されたものですので、当然、製品によって得手不得手が存在します。それゆえ、システム導入を検討される方は、現場で求められるものに対して適切な製品を選択することが非常に重要になっています。

UnityBoyⅣをどのように使うか

ここまでの説明にあるとおり、UnityBoyⅣと競合する製品は数多くありますが、その中でUnityBoyⅣが採った差別化戦略は、UnityBoyシリーズが従来から持っている優位性・グラフィック画面の表現力を維持しつつ、比較的小規模なシステムで柔軟性を発揮して顧客のニーズにジャストフィットさせるということでした。

先のプロダクト比較にもありますが、UnityBoyⅣは遠隔監視目的で開発していることから、遠隔監視が可能であることは勿論ですが、SCADAとして一通りの機能を持っていることから、SCADAとしての利用や、タッチパネル搭載のパネルコンピュータなどと組み合わせればタッチパネルとしても利用出来ますし、PLC通信ドライバなどを用いた簡易プロトコル変換、データ収集機能を活かしてデータロガーや演算・ロジックスキーマを活用したエッジデバイスとしても利用可能です。

しかし、個々の機能を単独で見た場合、専用機に使い勝手の点で及びません。UnityBoyⅣは、All-In-Oneという特徴を活かして、小規模システムをこれ1台でまとめて構築すること・このクラスで屈指のグラフィック機能などにメリットを見いだすことができます。

UnityBoyⅣアプリケーション事例

UnityBoyシリーズは20年に及ぶ歴史があり、産業分野の多種多様な現場に対して採用実績があります。いずれもUnityBoyの特徴である、高い柔軟性や強力なグラフィックなど製品の特徴を活かせる場所で使われています。

これまでのUnityBoyシリーズ販売実績を見るとエネルギー分野での採用実績が多く、特にガス関連設備の遠隔監視用途でご利用いただいています。設備の数が数十カ所程度で大量生産とまではいかない数量で、かつ設備毎に細部が異なり、基本は同一ソフトをベースとしつつも、設備毎に細かな手直しが発生するような場合に、UnityBoyはその能力を遺憾なく発揮します。

また、上位システムと連携しつつも、単独システムとして独立していることから、万が一上位システム側がダウンした場合であっても、現場の設備監視には何ら問題ないこと、特定の現場でトラブルが発生しても他の設備監視には全く影響が出ないこともUnityBoyならではの利点で、ゲートウェイやPLCだけで構成したシステムやクラウドサービスに対する優位性と言えます。

もうひとつ、UnityBoyの面白い使い方として、現場を巡回する運転員が持つスマートフォンに対して警報メールを送信するという、それ自体はオーソドックスなものですが、警報の種類に応じて添付するファイルを切り替えており、警報の内容に応じたトラブル対応マニュアル兼チェックシートのPDFファイルを送付しています。これにより、運転員は制御室に戻ることなく警報の発生を知ることができ、その対応マニュアルとチェックシートが送付されることで、そのまま現場に向かうことが出来ます。

単純なことではありますが、用途に特化した専用機で実現するのは難しく、汎用的なSCADAパッケージを使うには大がかり過ぎるため、小型PCにプログラム言語で実装することになりそうです。しかし、データを取得してメールを送信するまで一連の処理を実装するとなるとそれなりに手間が掛かります。特にPLC通信のようにマイナーな通信処理とオープン技術であるメール送信両方の知識を持つプログラマはOA系やWebエンジニアの様に多く居ないのが実情です。

UnityBoyはプログラムレスで一連の処理を実装することが出来るため、エンジニアリング費の抑制と可読性向上・属人性排除といった保守面での優位性があります。工場設備は長期に渡って運用されることから、保守性については十分考慮しておく必要があります。

最後に

筆者はこれまでの産業用アプリケーション開発の経験から、産業用システム・特に設備監視の分野は、監視対象が多種多様であるためマスプロ化された製品をそのまま適用するのが難しい一方、システムで組み上げようとすると、色々なデバイスを組み合わせる必要があるため、大がかりになりすぎてトータルコストが高いという問題に悩まされていました。

UnityBoyⅣ開発にあたって目標としたのは、製品ライフサイクル全体で見たときのシステム導入ハードルを下げ、ニッチな市場に柔軟に適合する製品を作るというものでした。掲げた理想にはまだまだ到達していませんが、これからもより一層扱いやすい製品を目指して磨き上げていきますので、今後とも応援していただければ幸いです。

また、UnityBoyⅣ開発担当としてはUnityBoyⅣを推していきたいところですが、それぞれの製品には得手不得手があります。弊社ではUnityBoyⅣ以外にも多様なプロダクトを取り扱っておりますので、お客様のニーズに沿って柔軟に最適なシステム提案をおこなう事が可能です。お気軽にご相談いただければと思います。