新川電機株式会社

島本 治

顧問...もっと見る 顧問

前回ご紹介しましたエネルギー使用特性解析モジュールにより、精度の良い定式化が行なわれたならば、それを用いて今回ご紹介する最適化計算モジュールにより、実際にエネルギーのコストダウンが図れます。

最適化計算機能

Excelのソルバーは非線形計画/線形計画/整数計画などの問題を解くための定評ある機能ですが、EMASではこれを用いてエネルギー管理の場面で必要となる最大化、最小化問題を解くモデルを用意しています。

最大化モデル

これは各種制約の下で利益を最大とする解を求めるものですが、簡単な例を以下に示します。図1が実行前ですが、製品A,B,Cを製造するのに5種類のユーティリティーを使用しており、各々の原単位が特性解析モジュールで求められた事を意味します。この図の空色のセルをすべて与件として入力しますが、これらの制約条件の下で目的関数「利益合計」を最大にするには3製品をそれぞれいくら製造すればいいかという問題です。

図1. 実行前

図2が実行結果ですが、この様に直接解を求めるだけでなく、この場合だと電力が能力(例えば契約電力)一杯使用する事になっているため、これを50増やしたら、利益がいくら増えるかといったケーススタディーも簡単に行なえます。

図2. 実行後

最小化モデル

図.3 ボイラー特性

これは与えられた制約条件の下で目的関数を最小化する場合の解を求めるものです。例としては複数のボイラーを運転している場合に、負荷配分をどの様にしたら燃料費やCO2排出量を最小にできるかという問題があります。図3の様なボイラー特性はメーカーから与えられますが、経年変化もあり、まず、特性解析モジュールで実際の運転データで解析した特性式を求めます。

この特性式はボイラー毎に異なり、しかも非線形な特性なので、総合効率を最もいいものとし、燃料費用を最小とする負荷配分を求めるのは難しい問題となります。燃料種別が異なる場合などは更に複雑なものとなります。しかし、エネルギー多消費型の企業ではボイラープラントの数パーセントの効率化でもメリット金額が大きいため、古くより検討され、実施されてきたテーマで、かなりな規模のコンピューターを用い、線形計画法や非線形計画法などによって解を求めていましたが、現在ではこの様な複雑な処理でもパソコンの世界で出来る様になった訳です。

図4はボイラー3缶運転時、工場全体の蒸気の必要量が180T/Hの場合、最適化計算を実行した場合の結果を示していますが、すべての場合に効率のいいボイラーの負荷を最大にするのがいいとは限らなくて、定格負荷時に最大効率で、それ以上になると低下しますし、効率の悪いボイラーの負荷を落すと更に効率が低下するので、ある程度の負荷はかけておいた方がいい場合がある、ある燃料の単価が急変した場合など、直感的に考える負荷配分とかなり異なる場合があります。

図4. 最小化問題例

逆に、設備運転での最大化問題として送水ポンプなど何台かをパラランさせて同一目的で使用している場合に総合効率を最大とするとするには負荷配分をどの様にしたらいいかといってものがあります。しかし、これらはいずれも精度の良いエネルギー使用特性解析を行う事が前提となります。

次回は最終回として、その他の機能や実際の導入事例をご紹介します。