新川電機株式会社

島本 治

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前回、原発問題に起因する長期的な電力不足に対応するために製造業において電力システム改革を進める負荷が増大していくが、電気主任技術者などの対応力が低下しており、そのギャップをいかに解消していくかという事自体が今後の大きな課題となっていく事をお話ししましたが、そのためのひとつの施策がITと計測・制御技術を利用した省電力の推進と共に電力管理業務の徹底した効率化であり、当社でもその実現のお手伝いをする事がひとつの役目だと認識しています。

製造業での電力管理の課題解決に向けて

現在、スマートグリッドで社会全体の電力管理を効率化する事が検討され、一部の地域ではスマートシティーとしての実証実験も行われていますが、製造業においても、これまでの金さえ出せば電力はいくらでも使えた時代から電力使用可能量に制限のある状態でいかに企業活動を最適化していくか、電力利用に関するスマートカンパニーとなっていかなければならないと思われます。具体的には電力を「管理下におく」という事だと思いますが、その基本はやはり全社に亘る電力の使用状況をしっかりと捉えるという事であり、当社でも、これまで多くの電力SCADA(Supervisory control and data acquisition)システムを納入させて頂きましたが、スマートメーター技術の応用で今後はコスト的な面など更に導入が容易になっていく事と思われます。

一方で、これまで電力SCADAの導入でデータは集まる様になり見える化は進んだが、データの有効活用がもうひとつだというお話もよくお聞きします。そこで当社では収集したデータは骨の髄までしゃぶりつくそうという発想で、そのツールとして収集したデータの統計解析/定式化機能や電力管理業務における実績処理をデータベース中心に一元管理できるパッケージソフトEMAS(電力管理支援システム)を開発し、各企業における同業務の効率化をご支援して参りました(図1)。

図1. EMASを用いた電力管理システム構成例

特に、ここに来て電力管理業務の効率化機能についてのニーズが高まっています。これは従来、製造部門や事務部門に比べて電力管理部門に対してIT投資による業務の効率化がされておらず、ある企業においては電力管理技術者の勤務時間の50%以上が実績報告書の作成や官への報告資料作成など技術者にとっては付帯業務とも言える業務に充てられており、このあたりの業務負荷を減らして、電力システム改革などの本来業務に充てる時間を捻出していきたいという事の表れではないかと思います。

また、まとまったIT投資が行われていない分、業務担当者ご自身でマイクロソフト社のExcelを用いて身の周りの業務の効率化を長年図られてきましたが、団塊の世代が定年を迎えられる時代となり、膨大なExcelシステムを開発し、使用されてきた方々が会社を去られて、それを引き継いだご担当者がそのメンテナンスや新たな業務の統合化を行うのに非常に苦労され、何とかしたいという例も多くなっています。小職もExcelを否定するものではないものの、個人が自分の業務をExcel化して個人の業務効率を向上するには申し分のないシステムですが、広範囲の業務を一元化したり、膨大な複雑な式で書かれたシステムを開発者以外の人に引継ぐには限界があるツールと思っています。

EMASはExcelの良さを活かし、電力系統図を介してデータベースの定義や検索、参照を可能としており、ご担当が直感的に理解・操作し易く、言わば処理の見える化を実現したツールとなっています(図2)。全工場の積算計のデータをSCADAやタブレット検針システムから取込み、比例配分など計算により使用量を算出する仮想的な積算計の値も含めて決定し、原価計算部門や環境活動グループなどの部門別に配布するという実績処理については、どの企業においても変わるものではなく、現在Excelなどに積算計の名称など既に有る場合にはEMASを使えば1日か2日で稼働が可能です。

また、EMASは電力だけでなく、トリー(樹枝)状の構成のシステムであれば適用可能であり、先般、受注した大手化学企業殿では蒸気、圧縮空気、用水など他のユーティリティーも併せて現状のシステムからEMASに置換えられました。即ちEMASはエネルギー管理支援システムとしての性格も併せ持ちますので、顧客でのご要望も柔軟に反映させて行くことが可能です。

図2.EMASの系統図とデータベース連携画面例